先輩刑事だった、勲警視の娘・を引き取ってから
しばらく経ったある日の夜のことだった。
物音が部屋の何処からか聞こえ
俺は寝ていた体を起こし、襖を開けて、物音のほうへとゆっくりと足を進める。
俺の家は少々古い家だ。
少しでも物音がすれば、木の軋んだ音がしてくる。
「・・・ひっく・・・ふっ・・・うぅ・・・」
居間のほうから、すすり泣く声が聞こえる。
この世のご時世、幽霊なんて笑える。
むしろ、ウチに出るというのが可笑しな話だ。
俺は、居間へと続く襖を開けた。
「誰だ!」
「っ!?」
「・・・・・・」
勢いよく襖を開けると
居間の机の近くで小さく座っているを見つけた。
幼いの目からは、大粒の涙が零れていた。
俺の姿を見るや否や、は目を必死で擦り涙を拭う。
「お前っ・・・何してんだ、こんな時間に」
「な、何でも・・・無いです。おトイレ、行こうとしたら・・・迷って」
「トイレなら逆方向だろうが。もう此処来て大分経つ・・・迷うはず無いないだろ」
「・・・・・・」
「何があった?」
俺がそう問いかけると、は・・・―――。
「な、何でもないですよ敢助さん。大丈夫です」
必死で何かを押し殺しているように見えた。
「何でもないわけあるか。お前さっき泣いてだろ」
「ホント、何でもないですよ。何でも・・・・・・」
すると、の目からポロポロと涙が零れ始めた。
それが分かったのか、は
零れる涙を、パジャマの袖で必死で拭い
俺に見られないようにする。
俺はため息を零し
ゆっくりに近づく。
「」
「違います。違うんです・・・コレは・・・っ」
「、聞け」
「大丈夫です。大丈夫ですから、敢助さ」
「泣くなら泣け。寂しいなら寂しいってそう言え」
「え?」
俺は目線を合わせるように、の目の前に座った。
「我慢するくらいなら、泣いてすっきりすればいい」
「敢、助さん」
「寂しいなら、寂しいってちゃんと言え」
「・・・・・・」
「それくらいで、誰も怒ったりしねぇよ」
そう言って、俺はの頭を2回ほど優しく叩いた。
「敢助さんっ!」
「っと」
は俺に抱きついて、大声で泣いた。
今まで多分、は我慢していたんだ。
泣きたくても、泣けなくて。
寂しくても、そう言えずにいた。
俺は、コイツの父親じゃねぇ。
だが、代わりならいくらでも出来る。
最大限・・・俺は、コイツを守っていこうと思った。
きっとそれは・・・俺にしか出来ないことだから。
我慢するくらいなら泣いちまえばいい
(押し殺して生きるよりか数万倍マシだと思う)