色々と波乱を終えた夜。


私は自室に戻り、目を閉じて眠りに就こうとしていた。





目を閉じて数秒。

暗闇に一閃走った。








「・・・・母さん?」







その一閃に閉じていた目を開け、ベットから体を起こす。







、起きたのか』




「アーチャー。私の声、聞えるの?」







呟いた言葉が別室に身を置かせたアーチャーに聞かれ、私は声を出す。

距離的にはそう離れていないが
私の声が届く範囲にはない。しかし、何故彼に私の呟いた声が聞こえたのだろうかと疑問に思う。







『ああ。コレは魔力を通して喋っているんだ。君にしか私の声は聞こえない』



「へぇ、便利だね」



『そんな事より、気づいたか?何か巨大な魔力の働きを』



「うん。そういうのは分かる」



『ほぉ。魔力感知は出来るみたいだな。それが出来るのであれば他が出来なくても十分だ』








褒められたのか、貶されたのか。

多分褒められたのだろうと解釈してもいいと思い、ベッドから出る。







『さて、ではマスターに問題だ。この魔力はどこから出ていると思う?』



「分かってるのに言わないの?」



『君の魔力感知を試しているんだ。感知が出来るのなら場所まで把握は出来るはずだ』







アーチャーは何やら楽しそうな声を出し私に問題と称して
魔力の発生源を答えるよう言い始めた。

魔術の会得を諦めている私には何も出来ないと思っていたアーチャーだったが
私が「魔力の感知は出来る」と分かったのか、彼はそれがちゃんと働くのかと思い
試しているのだろう。


使い魔に試される主とか、何処の物語にそんな事があるんだろうかと思うも
今現在私はそういう状況なんだ、とため息が零れた。







『ため息が零れたぞ。言っておくが、私は君を馬鹿にしているつもりはない』



「試してるんでしょ。分かってる」



『それが理解出来ているのなら、魔力の場所は何処だと思うか答えてみたまえ』



「貴方を呼び出した地下室」



『正解だ。君は寝室(そこ)に居ろ、私が見てくる』



「いいよ。私も行く」



『発生源が分かっているのなら十分だ。危険だぞ』



「危険の元に自分の母親が居ると思うと行かないわけにはいかないでしょ」






アーチャーの「危険だ」という声を振り切り、私は部屋を出て
地下室へ続く階段の所へと向かう。

すると、階段を降りる手前。
アーチャーが目を閉じて腕を組んで壁に寄りかかっていた。どうやらこの男
先に感知して此処に姿を置いていたようだ。


私が其処に現れたら彼は目を開けて、壁から体を離し私を見る。






「此処に来たということは言っても聞かない訳だな」



「母さんが居るから」



「そうか。君がそういうなら私も止はしない」



「無理強いはしないんだ」



「ああ。魔力は好きに使わせてもらう事以前に、君は私のマスターだ。
主が魔術師以下であったとしても、主の言葉に従うのがサーヴァントだからな。
君の意思で来たのであれば止めはしないさ」



「貴方も不思議な人ね」



「君こそ、私からすれば十分に不思議な人物だよ






互いに「不思議」と言い合った後。
二人で地下室へと続く階段を降り始める。


別段長くもなく、そして深くもない場所に地下室は存在する。

ただ湿気が多く少しジメついている。
当たり前だ、日の当たる場所に無いのだからその場所がこういう状態なのは無理もない。


階段を少しずつ降りると、灯りが付いてるのが目に入ってくる。


明らかに「誰かいる」証拠だった。


段々と感じる見知った魔力。最後の数段を降り終えたところで――――。








「母さん、こんな夜に何やってん」



「ん?誰だ貴様?」



「は?」





地下室へと入り、開口一番に母に何をやっているんだと言葉を
浴びせようとした矢先だった。

魔法陣の上。
黄金の鎧を身に纏った、逆立った金髪の男の姿に先に声をかけられ
私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


誰だ、と言われても私も誰だ、と問いかけたくなるレベルだ。







「なっ!?貴様ッ、英雄王か!?」



「ん?・・・そういうお前、贋作者(フェイカー)ではないか。久しいなぁ。
何時ぶりだ?貴様とまた相まみえるとはな」






すると私の背後に居たアーチャーが金髪の男と顔見知りらしい。

アーチャーの顔を見ると、彼は至極嫌そうな顔をしている。
しかし、目の前の金髪の男は逆に至極楽しそうな顔をしている。






「知り合い?」


、そういう分類に区切るのはやめてくれ。アレとはあまり知り合いと名乗りたくはない」


「フンッ。我(オレ)も貴様のような雑種、知り合いとは名乗りたくはないな」







同じ言葉を使っている段階で「知り合いじゃないか」と言いたくなったが
お互いが「そうじゃない」と言い張っているのだから、其処は尊重してあげようと思い
それ以上のツッコミを入れるのをやめた。





「で、金ピカさん。お名前は?」



「ハッ!我の名前を聞いて驚くな。我は古代最古の王、英雄王ギルガメッシュだ」



「え?こんな金ピカが古代最古の王なの?
古代最古の王がこんな金ピカの鎧纏ってていいの?え?あの人大丈夫かなアーチャー」



「此処で私に話を振るか君は」



「小娘・・・ッ、王たる我を侮辱する気か!?」



「侮辱はしてないけど、想像してたより何て言うか・・・・・変」



「おのれ小娘風情が、二度もこの我を侮辱するとは許すまじ行為!!二度とその口が喋らぬよう閉じ」



「閉じるのはアンタの口だってーの!!」






ギルガメッシュが私の言葉(のどの辺りか)が
癪に障ったのか何やら襲いかかろうとした瞬間だった。

一気に彼の頭が地面に叩きつけられ、思いっきり魔法陣に押し付けられている。


それをしたのは何を隠そう、私の母だった。








「なんで?なんで騎士王じゃなくて英雄王が来るのよ!?何処で間違えたらアンタなんかが来るのよ!!
王様は王様でも、こんな王様私は望んでないってーの!今すぐ返却よ、ほらさっさと英霊の座に戻りなさい・・・ッ」



「人間風情が・・・何を!!痛いであろう、止めぬか!!」



「黙れ金ピカ!!さっさと英霊の座に戻れって言ってんの!!お呼びじゃないのよアンタは・・・!!」



「頭が割れる!!やめろと言っておろうが!!あと王たる我の頭を地面に擦り付けるなど侮辱行為も甚だしいぞ!!」



「いいから黙って帰れ!!」



「痛いぞ!!痛い!!やめろやめぬか!!!頭が割れるほど痛いではないか!!」



「いっそ脳天潰すくらいやってやるわよ。それで英霊の座に戻るんならアンタの頭割るくらい安いもんだわ」



「き、貴様人間ではないな!?まさか、悪魔か・・・悪魔の類か・・・ッ!!」



「お黙り金ピカ!!」






やりとりを察するに母はどうやらサーヴァント召喚に失敗したらしい。
どういった理由で母までもサーヴァントを呼びだそうとしたのかとかは今はおいておくことにした。

だが、召喚したまでは良かったが相変わらず自分が望んでいた騎士王とやらが出てこなかった模様。
そしてその王の代わりと言って出てきたのが「王」は「王」でも、古代最古の王ギルガメッシュだった。


母の憤りを見たところ、明らかに彼は「お呼びではない」王だったらしい。






・・・ミコトを止めてやれ。私は別段どうでもいいが、英雄王が可哀想に思えてきた」


「そうだね。ギルガメッシュの脳天潰される前に止めようかね」






私の背後に立つアーチャーが少し哀れんだ目でギルガメッシュを見ていた。


無理もないだろう。
自分から呼んだくせに、お呼びでないと言われた挙句
頭を割られるくらい掴まれて、それを地面に擦りつけているのだから。


むしろ母に逆らったら大概こうなると思ってもいいだろう。


本来なら母の気が済むまでさせた方がいいのだが
流石にギルガメッシュの脳天を潰されて、此処が血の海になるのは避けたい。
そんな血生臭い光景になるのかどうか分からないけれど。






「母さん、その辺にしといたら」



「大丈夫よちゃん。この金ピカを英霊の座に戻して、ちゃんとした騎士王を呼び出すから」



「いや、もういいって。その辺にしときなよ。ギルガメッシュ、痛がってるし。
母さんのアイアンクローは英霊も痛がるほどだって分かったんだからもう十分だよ」



「うー・・・ちゃんがそういうなら」







何とか私の説得が通じたのか、母はギルガメッシュの頭から手を離した。
そして手が頭から離れたと当時にギルガメッシュはその場に倒れた。

多分軽い脳震盪(のうしんとう)でも起こしたのだろう。





「死んだか?死んだのなら私は清々するんだが」



「アーチャー、勝手に殺さないでよ。軽い脳震盪を起こしてるだけ。すぐ目が覚めるわ」



「英霊も、このミコト様に逆らったらどうなるか身を持って知るべきね」



「というわけだからアーチャー。これだから母さんには逆らわないほうがいいの」



「成る程な。理解した」






母の魔力とは別の力に恐れをなしたのか、アーチャーは納得したとの声を出す。


数時間前も下手をすると庭に2体のサーヴァントの断末魔が聞こえてたに違いない。
母に頭を鷲掴みにされ地面に叩きつけられている、アーチャーとランサーの姿があっただろう。

ギルガメッシュの出現により、アーチャーは母の恐ろしさを垣間見たから
コレ以上の説明はいらないだろう。







「うっ・・・クソッ・・・まだ痛む」




「あ、起きた」






流石に英霊という存在なのか、それとも鍛えている賜物なのか。
どちらとも捉えられるが、軽い脳震盪を起こして気絶していたギルガメッシュが頭に手を当てながら目を覚ました。





「おのれ、人間風情がこの我の頭を鷲掴みした挙句、地面に擦り付けるなど好き勝手やりおって。
この報いは命を持って償わせ」



「はいはい、分かったから。英雄王さん、立ち上がれますか?」



「・・・・・・・・」



「な、何」





起き上がりグズグズと文句を垂れるギルガメッシュに手を差し伸べた私。

そんな私を見て何やらギルガメッシュが黙り込んだ。
あまり見つめられると、対処に困る。






「娘、名は?」



・・・だけど」



、良(よ)い名だな!媚びることはおろか、臆する事無くこの我に手を差し伸べるとは雑種だが気に入った!
良かろう!この英雄王が今日から貴様を寵愛してやろう、喜ぶがいい!!フハハハハハ!!」



「え?やだ」



「拒むでないぞ!王たる我が貴様を愛でてやろうというのだ、早々に拒むものではない」



「嫌なモノは嫌なんだけど」



「嫌よ嫌よも好きのうち、と言うではないか。貴様もそうなのであろう、?」



「ちょっ・・・!?」






すると突然ギルガメッシュに腰を引かれ体が密着する距離にまで近づいた。

黄金の鎧に、金色の髪。
そしてこちらを見つめてくる赤い瞳。

ニヤリと浮かべられた悪戯な笑みに私はたじろぐ。






「本当は我に好かれて嬉しいのであろう?」



「ちょっ、耳元で・・・ッ」






彼は色っぽい声で私の耳元で囁く。

耳を擽(くすぐ)る声と、恥ずかしいのが入り混じり彼から離れる力が奪われる。
それ以前に男と女の力の差など歴然である。

子供で女の私の力で、成人であるギルガメッシュには到底敵わない。






「ほほぉ。これしきの事で頬を染めるとは愛(う)い奴め」



「離してギルガメッシュ」



「そうよ。私の可愛い娘を離しなさい金ピカ」


「英雄王。いい加減私のマスターを離さないと貴様の脳天を撃ち抜くぞ」







いつまでも私を抱きしめて離さないギルガメッシュに
母はドス黒いオーラを漂わせながら笑みを浮かべ、ギルガメッシュの頭に手を置いており。

一方のアーチャーは怒りを思わせるオーラを放ちながら
手にいつの間にか弓を持っていた。


2人のそんな姿に仕方ないと言わんばかりのため息を零しギルガメッシュは私を離した。





「チッ・・・雑種風情が」


「何か言ったぁ?」


「いいい、痛い!!それを止めよ!!頭から手を離さぬか!!」




「無事か


「うん、平気」






ギルガメッシュが私を離した途端、母は再び彼の頭を鷲掴み。ギリギリと何やら先程は
聞こえなかった音が聞こえてきた。
私はというとアーチャーが声を掛けてくれた。





「しかし、何故英雄王が呼ばれた?」



「さぁ。多分、アーチャーだけじゃ心配だと思ったからじゃないかな」



「心配?何が心配だと言うんだ?自分で言う事ではないが私一人でもランサーとは渡り合える。
君をこの戦争の勝者にだってするくらいの技量は持ち得ているつもりだ」



「この戦争?何の話?」



「は?何の話とは、私は聖杯戦争の事を言っているんだ。君はそれすら理解していないのか?」







アーチャーの言葉で気づく。
サーヴァントとは「そ-聖杯戦争-のため」の使い魔だと言うことに。


彼等、いや彼は「個人的な理由」で使役していいモノではない。






。君は聖杯に願いがあるから私を呼び出したのだろう?」



「聖杯なんて、此処にはないよ」



「は?・・・・聖杯が、ない、とは一体」







アーチャーは私の言葉が理解できない、という表情を浮かべていた。

無理もない。
サーヴァントとは聖杯戦争のために魔術師が使役する使い魔なのだから。
聖杯がない、なんて言ったら何のために彼やランサー、そしてギルガメッシュがこの地に呼ばれたのかが
不明瞭になっていく。





「説明を願いたいマスター」



「そのうち話す」



「今話してもらわないと困る」



「そのうち話すから。だから、お願い・・・私を守り続けて、アーチャー」






学んでいないことが多すぎて、今の私の口からでは説明するには材料が少なすぎる。

だから今は彼に「私の命を守ってもらうしかない」。


話せる時が来るまで、彼には私の命を少しでも長く守り続けてもらわなければ。





「・・・了解した」



「ごめんね、話せる時が来たらちゃんと話すから」



「・・・・・・ああ、そうしてくれ」





アーチャーは不服そうな表情を浮かべながらも、承諾の声を上げた。




今はまだ何もかもを語るには早すぎる。
アーチャーには申し訳ないと思っているが、語るにはまだ早い。

もう少し自分自身がサーヴァントの事についてや色々知るまでは
彼に私の背負う「運命(さだめ)」を話す訳にはいかないと踏み、口を閉ざした。


そして、全てを明かした時に彼に最初の絶対命令を下すつもりだ。



『私が死に絶える時まで、私を守り続けてほしい。例え、この命が1000年生きる命だとしても』という事を。




新たな伏兵。そして残された謎
(今はまだ総てを語るには早過ぎる) inserted by FC2 system

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