「DVD、借りてきたんだけど観ていい?」
とある休日の午後。
は借りてきたDVDを観たいと言い出した。
ちょうど私も、仕事が全て片付いたところで
暇を持て余していたところだった。
「何を借りてきたんだ?」
「分かんない。前、お店に来てくれたお姉さんがコレがいいって言ってたから」
私は彼女が借りてきたDVDのパッケージを見せてもらった。
「ホラー映画じゃないか。しかも、この当時話題になったのだ・・・軍でも何人か観た奴が居たな」
「そうなんだ」
「怖くないのか?」
「全然。怖いの別に嫌いじゃないし。グラハムはいいの?」
「私は平気だ。気にせず観ていいぞ・・・その代わり、寝るなよ」
「平気平気、大丈夫!」
私の承諾を得たのか、は嬉しそうに
パッケージからDVDを取り出し、デッキにセットし
クッションを抱え、私の隣に座る。
「部屋を暗くして、雰囲気出すか?」
「あ!いいねぇ〜」
はいそいそと、部屋中のカーテンを閉め再びソファーに腰掛ける。
私はというと、リビングの全ての電気を操作するリモコンを持っていた。
「消すぞ?」
「OK!」
----Pi!
『OFF』のボタンを私が押すと
部屋中の電気が消え
一気に其処が映画館さながらの雰囲気に変わった。
もちろん、観客は私と。
長いソファーに二人で、寄り添う。
二人っきりの映画館が完成した。
「寝るなよ」
「寝ないもん」
そして、ようやく新作映画の紹介が終わり・・・本編へと入る。
-------30分後
始まって多分30分経ったと思う。
私は映画に少し見入っていた。
一方のはというと・・・。
「、寝るなよ」
「っ・・・寝て、ない。ちょっとウトウトしてただけ」
まだ、始まって間もないというのに
すでに彼女に、ちょっと睡魔が襲ってきたらしい。
は首をカクカクと首振り人形のように
上下に動かし、目も徐々に閉じかけている。
「此処で寝たら、展開が分からなくなるぞ?」
「・・・観るもん」
目を擦りながらそれでも「見る」と言い張る。
もう少し、様子を見ようと思い私は再び画面に目を移した。
だが、もう少しも時間は経たずにそれは訪れた。
-------10分後
「ZzzzZzz」
「、言った側から・・・・寝てるし」
10分後と書いてるけど、正直10分もかかってない。
多分5分でこの子は眠ったんだろう。
ある意味スゴい技だ、そんな技を私が教えほしいものだ。
「・・・熟睡か」
映画はまだまだ怖いのが続くシーン。
その後にも多分もっと怖いのが待っているに違いない。
それだというのに借りてきて観ようと言った肝心の本人が既に夢の世界に入ってしまった。
「しかし・・・この状況は・・・如何なものかと思うぞ。」
私の体に持たれこむようには眠っていた。
いつもはベッドで抱きしめるように寝るから、あまりこのような
場面は想像していなかった。
しかも、目線を落とせばの無防備すぎるほどの寝顔。
これで理性を保ってる自分が少し成長したのかと思うが・・・この抑制も何処まで持つか。
「・・・んぅ」
「(起きるか?)」
「んぅう〜・・・」
--パタン
・・・・硬直・・・・
私が硬直した理由を述べよう。
ひざの上に、が寝転がってきた。
しかも、あからさまに「襲ってください」と言わんばかりの
可愛らしい顔で・・・私を、誘惑している。
「・・・ど、どうしたらいいのだろうかこの状況」
どうもできないだろう。
だったらいっそ誰か、私を殺してくれ。
危険な行為に及ぶ前に。
下は見てはいけない、下を見たら誘惑に負ける。
と、言いつつやはり見てしまう。
長い睫毛、茶色のサラサラとした長い髪。
潤んだ薄いピンクの唇、白い肌。
ふと、その頬に触れると―――――。
「んぅ〜やめてよ、グラハム」
見通してるかのように、寝ぼける。
あー・・・神が居るなら、許してくれ。
私がこれから、寝ている彼女にすることを。
誘惑する彼女が理性を落とす
(君は気付いていないようだが・・・そういうことは私の理性を破壊するんだよ)