『アメリカ合衆国、最新MSフラッグ完成披露パーティに
お越しくださって真にありがとうございます・・・』









今日は、アイリス社が造り上げた最新MS(モビルスーツ)ユニオンフラッグの
完成披露パーティというので私は軍服に、カタギリはスーツに身を包んでいた。




「何故、私まで参加しなくてはならないんだ」

「グラハム不機嫌そうな顔はしないで。君の実演があったからフラッグも無事に完成したんだし
それを見てくれたっていいじゃないか。それにそんなに不服かい?」
























さんを連れてきたことが」

「当たり前だ!私に黙って連れてくるなんて」

「まぁたまにはいいじゃない」

「何処がだ」







軍の上の命令で確かに私はこのパーティに参加しなければなかった。

それで不機嫌というわけではない。
カタギリがこっそり裏で手を回して、私と同棲している恋人のを連れてきていたのだった。







「ところで肝心のは何処だ?」

「まだ、メイクしてると思うけど」

「エーカー中尉!カタギリ技術顧問!」

「ジャックか。どうした?」





すると、私の部下であるジャック・ワトソン少尉が走ってきた。





「カタギリ技術顧問に頼まれてて、お嬢さん、お化粧が終わりました」

「さすがはジャック。部隊一の手先の器用な男だね」

「カタギリ・・・ジャックに頼んでいたのか。もう少しまともなのが居なかったのか?
それかちゃんとした美容室に頼むとか・・・」

「そんなぁ〜中尉、酷いですよ〜。僕コレでも変装とかメイクのことに関しては部内ピカイチなんですから!」

「それよりもは何処だ?」

「あ、今連れてきますね、此処でお待ちください」







そう言ってジャックはまた、人ごみを掻き分け何処かへと消えていった。

私とカタギリは彼の言うとおり、その場にて彼と
来るのを待っていた。






『何か歩きにくいです』

『大丈夫ですか?多分中尉好みと思ってカタギリ技術顧問がお買い上げになったと思います』

『ですけど、何だかコレ・・・グラハムに怒られそうで』

『大丈夫ですよ。カタギリ技術顧問が何とかフォローしてくださいますから』

『は・・・はぁ』







すると、人ごみの中からジャックと、聞き慣れた声が聞こえてきた。

もしかしてと思い、そわそわして待っていると
ようやく最後の人をすり抜けて・・・ジャックと、彼女は私の目の前に現れた。






彼女の、の姿を見た瞬間、時間が止まった気がした。





は、真紅のマーメイドドレスに身を包み
髪の毛を結われ、程よく上がった睫毛に、大きく開いた漆黒の瞳。

唇は熟した桃のように、艶のあるピンク色をしていて
白くて細い首にはシルバーネックレス。



あまりの美しさに息を呑んでしまった。







さん、綺麗ですよ。やっぱり僕のセンスは間違ってなかった」

「カタギリさん、すいません。私なんかのためにドレスを買っていただいて」

「気にしなくていいんだよ。どうだいグラハム、彼女は?・・・グラハム?」

「え?あ・・・すまない。ちょっと、ボーっとしていた」





カタギリに声をかけられようやく我に返る。
普段とは違う彼女を見て、私の思考回路が一瞬停止したらしい。





「中尉、お嬢さんがあまりにも綺麗だから見惚れてたんでしょう?」

「なっ!?」




ジャックの言葉に思わず図星。

私は目を泳がせながらを見る。
しかし、あまりの美しさになかなか直視できない。






「グラハム・・・私あんまりこういうの着ないから、よく分からないけど・・・もしかして嫌だった?」




の言葉にようやく彼女の方を見る。

私があまりにも曖昧な受け答えをするものだから、目の前の彼女は
何だか少し悲し気な表情を浮かべていた。


私は一旦目を閉じて、再度を見た。




「嫌じゃない。むしろ、私好みだ・・・綺麗だよ

「よかった。そう言ってくれて」



そういうと、彼女は満面の笑みを浮かべた。




「グラハム、アレは反則だよ」

「中尉」

「ああ・・・すまない」



彼女の笑顔に、私はおろかカタギリやジャックまでも
照れてしまい3人とも口を手で覆い隠した。


















『では、皆様。ごゆるりと、パーティをお楽しみください』










乾杯の儀も終わり、それぞれが別々の行動を始める。

そして、私は隣に居るを見た。






、此処は人が多いからな。くれぐれも私の側から離れないように」

「分かった」


「今日は何時にもましてさんはグラハムに忠実だね」



カタギリの言葉では苦笑を浮かべた。





「忠実というか、私こういう所初めてだから怖いんです。だから、グラハムの側に居ないと」






は、目を上下に動かし私を見ていた。


やはり、今日は何だかおかしな気分だ・・・彼女が化粧しているせいか
いつも抑えている理性が今日は一段と保つのも大変に思えてきた。





「カタギリ技術顧問、グラハム・エーカー中尉。二、三、お伺いしたい事があるのですが」

「最新鋭のMSについてですが」

「こちらのインタビューにもお願いします」




すると、大勢のマスコミが一気に私とカタギリは囲まれてしまった。
あまりに突然のことで、少し戸惑ったが隣に何か違和感を感じた。









が居ない。









もしかしてと思い、私は辺りを見渡すも何処にも彼女は居なかった。


マスコミの突然の殺到により、が私からはぐれてしまったのだ。










ッ!?」


「あ、中尉!?ど、どちらへ!?」
「あー・・・質問なら、僕が全てお受けします。グラハムは急ぎの用が出来たみたいで」






私が、マスコミの人ごみを潜り抜けるのを、一瞬止められそうになったが
カタギリが壁になり、人ごみをせき止めた。


彼を見ると、彼は片目でウィンクをしてくれた。
その姿を見届け、私は会場内に迷い込んでしまった子猫を探しにと向かうのだった。

























「しまった」



突然押し寄せてきたマスコミの人波に私は蚊帳の外に。
気づいたときには場所が分からなくなっていた。




「・・・ど、どーしよ・・・グラハムから、はぐれちゃダメって言われてたのに」




もし、見つかったら・・・相当怒られるに違いないと思っていた。
ですが、此処で一つ問題!








この人ごみの中で、私は彼に見つけてもらえるのでしょうか?








「ヤバイ・・・それが一番、不安になってきた」






怒られる前提で、まず見つけてもらえるかが問題になってきた。

いくら大人の中に入っているからといっても、グラハムやカタギリさんよりも年上がたくさん居る。
ましてや、私よりも近い年上の人とか。

しかも、男の人も女の人も何だか同じ衣装を着ている人たちが多くて
何処にグラハムが居るのかも分からない。





「でも、下手して動いて・・・また迷子になったらイヤだし」




今でも十分迷子。

しかも私は一般市民、後は皆様合衆国の偉い人ばかり。
もちろん軍人だって居るでしょう(グラハムが居るくらいだし)。






「ど・・・どうしよ・・・困ったなぁ〜・・・こういう時携帯持ってないと不便だ」




携帯は充電が切れ掛かっていたため、部屋に置いて来てしまった。
それもグラハムにバレたら絶対怒るとかの問題じゃなくなってる。






私は完璧に彼にお仕置きという名義で、ベッドに強制連行確定。



それだけは避けたい道だったけれど
こういう状況になってしまった以上、どうする事もできない。


何か良い案は思いつかないか、と脳内をフル回転させている。









「お嬢さん、どうかなさいましたか?」
「え?」





そんな中。
悩んでいる私に一人の青年、多分私も2個くらい上の人が声をかけてきた。

軍服着てるところを見たら、その人が軍の人ということが伺える。






「あの・・・どこか気分でも優れませんか?」

「え?・・・あぁ、その・・・知り合いと、はぐれてしまって・・・私、こういうパーティとか初めてだから」

「そうでしたか。私も実は知り合いとはぐれてしまい。あ、そうだ・・・如何です、カクテルは?」






すると、彼は右手に持っていたカクテルを私に差し出した。






「え!?・・・あ、いや・・・でもそれ・・・お知り合いの方に
差し上げるものでしょう?私なんかが貰えません」

「でもこのまま私が2つも持っていたら変でしょう?
だったらコレは私から貴女にプレゼントとして受け取ってください。そうすればいいでしょ?」






確かに、2つも持って歩いてたら不自然だ。

プレゼントとかどうとかの問題ではないし・・・私は少し迷いながら・・・。





「じゃ・・・じゃあ、頂きます」

「えぇ、召し上がってください」






私が少しおどおどしながらも、グラスを受け取ろうとした
その瞬間―――――。






肩を持たれ、体を思いっきり後ろに引かれた。
そして横からは・・・。












「ありがたく頂くよ・・・私がね」

「グ、グラハムッ!?」

「こ、これは・・・グラハム・エーカー中尉!?」






グラハムが来た。





「すまない、私の知り合いが世話になったようだな」

「ぃ・・・ぃえ・・・そ、そんなことは・・・」

「このカクテルは私が頂こう、まだこの子は未成年でね。お酒は飲ませないようにしてるんだよ」

「あ、そ・・・そうでしたか。これは大変失礼いたしました」





嘘ばっかり、と叫びたかった。
私はもう成人してお酒だって飲める年齢に達している。

それだというのに、彼はグラスを奪い自分の手の中へ。



グラハムは笑いながら、グラスに入ったカクテルを一気に飲み干し
近くのテーブルに置いた。





「いい酒だな。・・・行くぞ、

「ちょっ・・・グ、グラハム?!」







そう言って、彼は私の手を引いて何処かへと走るのだった。






そのときの彼の手から、熱を感じ
今から自分の置かれる状況を・・・私はあまり考えたくなかった。







狂い始めた理性
(君の一つ一つが私を狂わせていく)




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