「え?誕生日!?」



「そうですよ、エーカーさん。今日、の誕生日ですよ」






の養子先の娘さんであるアンナさんと道端でばったりと会い
彼女の発言に私は大いに驚いた。





7月7日、私はこの世で一番大事な日を忘れていた。





そう、同棲中の恋人・・・、彼女の誕生日だというのをすっかり忘れていた。








「あ、エーカーさんその様子だと・・・もしかして・・・?」


「え?・・・あ、いや・・・その」


「忘れてたんですね」


「すいません。此処のところ身の回りが忙しくて、すっかり」









最近、いろんな事が頻繁に起こりすぎての誕生日の事をすっかり忘れていた。



だからと言って、今からプレゼントを買いに行くのはNGだろう。
何せ私は勤務時間内。

街でアンナさんと偶然出会ったのも
私が昼食を取りに行く途中で、彼女が配達をしている所だったのだから。









「まぁ、謝ってもは許してはくれると思いますけど」


「どうだろうかな。もしそんなことを言ってしまえば・・・」















『え?忘れてたの!!・・・酷い・・・グラハムなんか大嫌い!!』














「なんて言われそうで怖いです」


「いやいや。さすがにはそんな心の狭い子じゃないんで」









アンナさんは手を振りながら、そう言った。

私は空を見上げながら頭を掻いた。







去年の、この時期私はにプレゼントを渡していた。


でも、忙しさにかまけて忘れていたとは私も情けない。










「まぁ、正直に話してあげればあの子のことです。笑って許してくれると思いますよ」


「だと、いいんですけど」


「あ、私コッチなんで失礼します。・・・に誕生日おめでとうと伝えてください」


「えぇ。また」






そう言って、アンナさんは私とは別の方向へと歩いていった。




しかし、本当に困ったことになったし、仕事なんてしてる場合じゃない。



帰ったらきっとは嬉しそうに私を待っているに違いない。

どうすればいんだろうと、思いながら私は軍の研究室へと戻ったのだった。













「だから、どうすればいいと思う?」



「いきなり何なのグラハム?・・・何をどうすればいいとか、主語を言ってくれないと僕も分からないよ」




軍に篭って、事務処理に手間取っている最中
私はカタギリに問いかけた。


何時間考えても答えが見つからず、私は言葉を漏らした。






「今日はの誕生日だ」


「おぉ、そうなんだね。おめでとうって伝えてあげて」


「それは伝えるが・・・私の問題が」


「何?」


「誕生日プレゼントを忘れた」


「あーあ、グラハム大失敗〜」



「うるさい」






カタギリはケラケラと笑いながら私を見ていた。

私はムスッとした顔で彼を睨みつけ、すぐさま書類に目を通していく。








「そう言うからには・・・もしかして、何も買ってないの?」


「・・・・・・・」





カタギリの言葉に肩が動き、書類を動かしていた手も止まる。




「図星なんだ」



「最近忙しくて。買いに行くも・・・その誕生日自体を」



「そっからなんだ。・・・・君それ、ちょっと最悪だよね」


「・・・だよな」







最悪。

そうだな、最悪だな。



何と言ったって、この世で一番愛しいとしている人物。


の誕生日を忘れていたのだから、何と言う失態だろうか・・・!!








「あー!!どうしようカタギリ!!!私はどうすればいいんだろうか!!!
このままではに嫌われてしまいそうで怖いぞ!!」


「大袈裟すぎるよグラハム。別にさ、君とさんは織姫と彦星じゃないんだから」


「こんなときに訳のわからない日本語を言わないでくれ。でも、気になるぞその名前」


「其処は気に留めるところなんだ」






すると、またもやカタギリが日本の話を始める。

の誕生日のことを考えている最中なのだが、どうしても興味深い話題になると
考えてることがそっちのけになってしまう。






「君知らない?ミルキーロードって」


「それくらい知っている!日本語で”アマノガワ“と言うんだろ!だが、そのオ、オ」


「織姫と彦星」


「そうだ!それだ!!その2人と私達、何の関係があるっていうんだ?」











私がカタギリに問いかけると、カタギリはパソコンを動かしながら・・・―――。











「7月7日。1年に1回この日だけ、ミルキーロードに橋がかかって2人が逢えることになってるんだよ。
織姫と彦星は夫婦なんだけど、仕事もせずにお喋りばっかりしてるから
見かねた織姫のお父さんが2人を引き離して、年に1度1回この日に出逢わせるようにしたんだよ」


「ほぉ。・・・で、それと私と何の関係が?」



「だから、君達は1年中365日一緒にいるけど、織姫と彦星は夫婦なんだけど1年1回しか逢えないんだよ。
毎日と、1年1回はすごい差だと思わない?」



「・・・思う」



「でしょ。だからさ、もしさんがこの日、この世に生まれてなかったら君と彼女は
出逢えてなかったんだよ。最悪の場合、さんは別の男性を選んでいたのかもしれないだろ?」



「はい」



さんにとって、この日は大切な日なんだよ。生まれた日もそうかもしれないけど君とまた
同じ時間を過ごせる喜びが彼女にはあるんだから離さないようにしてあげなきゃ」



「カタギリ」







カタギリの名前を呼ぶと彼はにっこりと微笑んだ。






「離さないいい方法として、一番いい方法はアレしかないんじゃない?」


「アレ?」


「ほーら、アレ。君が彼女に一番してほしいもの」


「・・・・・・!!」






思いつくと、私は思わず部屋の時計を見る。

午後9時を回っていた。







「間に合うか?」


「どーだろうね?でも開いてる所は開いてるんじゃない?」


「いや、間に合わせてみせるさ。何たって、を離さないためにすることだからな」


「頑張ってね、彦星さん」


「じゃあ、お先に!」







私は急いで、部屋を出て駆け出した。




頼む、間に合ってくれよ。



天の川の橋が消える前に、・・・君に伝えたい思いがたくさんあるから。





























――――PM11:45








「遅いなぁグラハム。仕方ないか忙しいもんね」









―――――ガチャンッ!!





「グラハム?」

「・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・た・・・ただ、ぃま」

「ちょっ・・・貴方ッ」







何とか、間に合った。

私はスーツの上着を脱ぎ、片手に持っていた。



もうすぐ7日が後15分で終わりを告げようとしている。

そんな中で帰ってきた私にが驚いた顔で出迎えに来てくれた。







「どうしたの、汗びっしょりじゃない・・・!」


「エレベーター・・・中々来ないから、階段を・・・使ってきた」


「階段って・・・此処まで何階あると思ってるのよ。ちょっと待っててタオル持ってくるから」


「待ってくれ、!」






タオルを取りに行くの腕を掴んで彼女の動きを止めた。


私は徐々に呼吸を整える。







「何?」

「その、コレ」

「え?」

「誕生日、プレゼント」







私は手のひらサイズに包装された、小箱を彼女の前に差し出す。


はそれを受け取り―――――。











「開けても、いい?」








そう言うと、私は返事が出来ず、こくんと頷く。

目の前の彼女は丁寧にリボンを解いて、箱を開けた。









「!!・・・グラハム、こ、これ・・・っ」



「・・・受け取ってほしいんだ。その・・・婚約指輪として」










小箱に入っていたのは、小さな星型の埋まったリング。

私はようやく呼吸が元に戻り、を見た。











「本当はもっとちゃんとした指輪を買ってくるはずだったんだが・・・すまない、コレしかもう残ってなくて」



「でも、婚約・・・指輪って」



「結婚は、君がまだしたくないって言ってるから・・・形だけでも、婚約って言う」



「グラ、ハム」



「本当は、側を離れないでほしいって言う私のワガママだ。でも、近い将来結婚してほしいとは望んでいる」



「・・・・・・」







すると、は顔を伏せて黙り込んだ。







?」






私は彼女の顔を覗き込むように見ると―――――。







「ぁ・・・・・・ありがとう」









は涙を流しながら、私に笑って見せた。








「嵌めてみて、いい?」


「私が嵌めてあげよう。貸してごらん」


「ぅん」







そう言って、私は小箱に入った指輪を取り出し
の左手の薬指に指輪を通す。



サイズがぴったりで、難なく指輪は薬指に収まった。



そして、私はそのまま彼女の手を握り
指輪にキスをし、おでこをつけた。








「いつか、私と結婚してくれ」



「ぅん」



「それまで、私の側を離れないで欲しい」



「ぅん」



「君を必ず守る。だから君も、私をずっと愛していてほしい」




「ぅん。グラハム、ありがとう。指輪大事にするね」




「あぁ」








気づいたら、0時を過ぎて
彼女の誕生日は終わりを告げ、彦星と織姫も離れ離れになったのかもしれない。


でも、私はそうならないように
永遠に、彼女を愛しぬくことを・・・遠く、離れた星に誓ったのだった。






大丈夫、私の織姫は此処に居る。

君が輝くのならば、私は君を見失ったりしない。
見失ったときは、その指輪が私を君のところまで導いてくれるから。













「ん?」



「時間も日付も過ぎてしまったが・・・誕生日、おめでとう」








私の言葉に、彼女は――――――。











「 
あ り が と う 」






満面の輝いた笑顔を見せ、そう言ったのだった。








My Sweet Lover〜君生まれしこの日に〜
(天の川を跨いで、逢いに行こう。永久への誓いを込めた指輪を持って) inserted by FC2 system

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