「ん〜・・・スタイルがいいから何でも似合っちゃうちゃんが羨ましい」
「あぁ、エーカー先輩が選ぶのも分かるわ」
「そ、そうですか?」
服選びの最中、エミリさんやディビットさ・・・もといハナエさんが
持って来てくれた服を数点と着てみる。
コーディネートしてる2人の頭を悩ませるほど、どうやら型にはまっている様だった。
「こうもスタイルがいいと・・・着せ替えがやめられないって言うのが服好きの悲しい性ね」
「え?!ま、まだ着るんですか?!」
「ま、この辺にしておきましょうか・・・エーカーさん待たせちゃ悪いですし」
「そ、そうですね!」
『あ、あの・・・お、お一人ですか?』
『いや、連れを待ってるんで』
『お連れさん・・・来るまでちょっといいですか?』
すると、外からなにやらグラハムの声が聞こえてきた。
私は試着室のカーテンをそっと開けて、其処を見ると
女の人3人がグラハムに声をかけていた。
その光景を見ているだけで凄くムカムカする。
やめて。
ダメよ。
グラハムに、馴れ馴れしく・・・・・・。
「ちゃん?」
「ふぇ!?・・・あ、はぃ?」
グラハムの方向を見ていると、エミリさんが声をかけてきた。
そして、私の目線の先に気付いたのか・・・――――。
「ハナエちゃん」
「ん?」
「エーカーさんに害虫が付いてる・・・追っ払っておいで」
「何ですって!?・・・させないわよ!!」
エミリさんがハナエさんにそう言うと
ハナエさんはまるで、チーターの速さの如くグラハムの元へと向かった。
『ちょっとー、私のボーイフレンドに近づかないでくれる?』
『え!?・・・あ・・・す、すいません』
『・・・勘違いはしないでくれ、コイツは連れじゃない・・・ただの友人だ』
『まぁ!エーカー先輩ったらそんな隠さなくてもいいじゃないですかぁ〜』
『表に出ろ。とりあえず殴られたいか?』
「これでいい?」
「え!?」
エミリさんは、にこやかに私にそう言った。
自分の態度や表情が顔に出ていたのだろうと思い
思わず自分の頬に手を当てた。
「好きな人だもんね、誰にも取られたくないもんね」
「あ、あの・・・えっと・・・」
「エーカーさん、顔良し、スタイル良し、頭良し、オマケにトップクラスの軍人。
まさにインテリジェンス・アンド・ビューティー(才色兼備)の言葉どおりな人だし・・・ナンパされてもおかしくないわ」
好きだからこそ、背伸びして
あの人の隣、自信満々に歩きたい。
だけど、私にはどうしても拭い去れない不安がある。
「でも、私・・・彼の隣歩くの・・・今でも不安で」
「どうして?ちゃん、凄く可愛いのに」
「お世辞でも、嬉しいです」
「お世辞じゃ無いんだけど。
だって、あのエーカーさんがこのお店に女の子連れてくるなんて初めてなんだから」
「え?」
エミリさんの言葉に、私は思わず驚きの声をあげた。
「だって、今まで女の人連れてくるけど
お店の前で止まって結局入ってこないっていうパターンは数知れず」
「か、数知れず・・・。」
「その数知れずな記録が・・・今まさに止まったの。貴女を連れてきた、それが何よりの証拠」
「私・・・を連れてきた」
「貴女はあの人に愛されてるって証拠。嫉妬するのも、それは恋人の証・・・イイコトなのよ」
「エミリさん」
「多分、エーカーさん・・・マダムに教えたかったのね、貴女のことを。
今までマダムもエーカーさんがお店の前に居て入って来なかったことをずっと心配してたし」
私はまた、そっと私を待ち続けるグラハムの姿を見た。
突然、ショッピングするって言ったときはビックリしたけど
もしかして、胸張って・・マダムさんに私を紹介するために連れてきたのだとしたら?
此処しか知らないって言ってたのはたぶん本当だと思うけど
もう一つの理由は・・・きっとマダムさんを安心させるために・・・連れてきたんだ。
それは私を愛している証拠。
私が自分の愛する人だということを、教えるために。
「ちゃん、顔真っ赤」
「え?あっ、ご、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいのよ。それでこそ、女の子なんだし。
こういう時は可愛く着飾って、男を振り回しちゃえ」
「え?・・えぇえ!?」
「あのねエーカーさんは貴女に甘えて欲しいのよ。だから存分に甘えちゃえばいいの。
甘えられないのは勿体無いことだと私は思うんだけどな」
「エミリさん・・・・・・はい!」
たまに、甘えても
神様はきっと・・・罰を与えないはず。
だから、思いっきり・・・高い服を選んでみたのだった。
「グラハム、ゴメンね待たせて」
「あぁ、お帰り・・・選んできたか?」
そして、ようやく私は服を選んでグラハムの元に戻ってきた。
「お嬢さん、いいお洋服は見つかりましたか?」
「あ、マダムさん・・・はい、全部素敵で。どれがいいか迷いました」
「それで、どれだ?」
早く見せてといわんばかりに、グラハムは私の選んだ服を見せるよう要求してきた。
「うん、コレと・・・コレの2着でいい。
あ、この1着のトップがねハナエさんが選んでくれたんだよ・・・可愛いでしょ?」
「・・・・・・」
「グラハム?」
突然、グラハムが服を見て無言になる。
一瞬自分の選んできた何かが間違えだったのか?と思い
何だか背筋に冷や汗が走る。
「、それだけ?」
「え?・・・そ、そうだけど」
「本当にそれだけなのか?」
「何度も同じ事言わせないで・・・コレだけだよ」
同じ事を何度も問いかけてきたので、私は半分呆れながら彼に答えた。
すると、突然グラハムは目を光らせ・・・――――。
「マダム!」
「ん?何かしら?」
マダムさんを呼んで、彼は・・・店を一周見渡す。
そして突然その動きを止め。
「此処から其処まで・・・服と、置いてある靴全部くれ」
「ちょっ!?」
「アラ、大胆」
「異例の展開」
「さすがエーカー先輩!」
”此処から、其処まで“って言うのは
本当に大人買いもイイトコレベルの範囲。
つまり、お店の半分の洋服を買い占めるつもりな勢い。
お店の端から端までって感じで、置いてある小物や靴ですら
彼はそれも買い占めるつもりでの言葉だった、
「や、やめてよ!!こんな洋服の数どうすんのよ!!」
「2着で足りるか。いっそ半分くらい此処の服買い占めてやってもいい」
「バカな事言わないで!!こんなに、いらないわよ、私!」
「はーい、痴話ゲンカもいいけど・・・坊や、支払いはどうするのよ?」
すると、私とグラハムのケンカ?を静止するかのように
マダムさんが、支払方法を問いかけてきた。
こんなのキャッシュで買ったら大事。
カードなのは分かるけど・・・フツーのクレジットで買えるかどうかの問題だ。
「カードで頼む・・・全部一括の方が楽だ、分割は面倒でならん」
「ちょっ!!!貴方それ!!!」
「何だ?」
「何で・・・何で貴方、ブラックカード持ってるのよ!」
グラハムのポケットから出された財布。
その財布の中から出てきた・・・一際目立つ、漆黒のカード。
世に言うクレジットカードの王様・・・ブラックカード。
高級な方々が普通持つようなカードを何故彼が持っているのかが疑問でならなかった。
「このカードで、頼む・・・マダム」
「はい、かしこまり」
「ちょっと待って!!」
ブラックカードをグラハムがマダムさんに渡そうとした瞬間
私はその動きを止めるかのように、彼の目の前に立つ。
「どうした?」
「どうした?・・・じゃないわよ!!あんなにいらない、洋服・・・いらないよ、グラハム」
「何を言ってるんだ?2着で満足してどうする?もっとたくさん買っていいんだぞ」
「だからって、お店の半分の服も買わなくていい。これだけでも充分高いんだから」
そんなにしてまで、買ってもらおうだなんて思っていない。
確かにブラックカードって凄いカードだって知ってるけれど
そんな、お店の端から端までっていう規模まで買わなくていい。
「わ、私・・・こんなに洋服いらない」
「、しかしだな」
「だって・・・私・・・わたし」
「貴方が、グラハムが・・・側に居てくれれば、それだけでいいの!」
「・・・」
高価なモノなんて私はいらない。
貴方が、ずっと、ずっと・・・私の側に居てくれれば・・・何にもいらない。
高価なお洋服も、宝石も
「貴方」という存在には敵わないんだから。
「スゴイ口説き文句だな・・・私としては嬉しい限りだ」
「え?・・・え??・・・・・あ」
目の前に居るグラハムは凄く嬉しそうな顔してる。
そして、私は我に返る・・・そうだ、此処はお店の中だった。
「いっ・・・いやぁああぁあああ!!!!」
「?!」
思わず自分が言ったことが恥ずかしくて
私は、お店の隅っこに駆け、丸くなった。
もう穴があったら潜りたい・・・凄く潜りたい、潜って一生出てきたくない!!!
「」
すると、グラハムの声が背後から聞こえる。
まともに顔が見れず彼に背を向けたまま。
「こっち向いて」
「や、やだ!・・・顔真っ赤だし・・・恥ずかしい」
「そうか、こっちを向かないというわけか」
なんだか、グラハムの声が・・・怪しい声が含まれていた。
「じゃあ、・・・アレもナシだな」
「ッ・・・!?」
瞬間、耳元に息が拭きかかる程、低いグラハムの声が私の体に伝わってきた。
「・・・、飲みたいって言ってたじゃないか」
「な、何を・・・っ」
「行きつけの店のプレミアムホットココア・・・飲みたいって」
「っ!?」
「甘い、甘いホットココア・・・君はあそこのココアが大好きじゃないか」
確かに、さっき車の中で
そんな事を囁いていたが・・・まさか、此処でそれを持ってくる?!
しかも、グラハムの唇が・・・今にも私の耳に当たりそうで
私の心臓も張り裂けんばかりに鳴っている。
「そうか。なら、お預けだな」
「や、やだ!!・・・ふえ、あっ」
私は自らの食欲?に負け・・・思わずグラハムのほうを向いて全否定をした。
だが、それが命取りになりどうやら私は彼の罠に引っかかったらしい。
その証拠は・・・彼の勝ち誇ったような表情。
「、顔が真っ赤だぞ」
「見ないでよ」
「そんな君の表情一つ一つが愛しくて・・・可愛いんだ」
「は、恥ずかしいこと言わないで」
「ねぇ、・・・さっきの言葉は本当か?・・・私が君の側にいればそれでいいのか?」
こんなとき、そうやって言う
グラハムが卑怯で・・・大人で狡賢くて・・・―――――。
「大好き」
「私も大好きだよ、」
もうこれ以上、顔が真っ赤になりそうだったので
私は彼に抱きついた。
こんな風に言われてしまえば敵わないよ・・・絶対。
「はーい、ラブラブするのはいいけど・・・イチャつくなら他行ってやるか、家でやって」
「私との愛の交し合いに水を差す様な・・・ムカつく声は」
「あっ」
すると、聞き慣れた声が聞こえそちらに顔を向ける。
「メアリィさん!!」
「ハロー、久しぶりちゃん・・・と、変態バカ弟」
いつの間にかマダムさんの隣にはグラハムのお姉さんであるメアリィさんが
呆れた表情を浮かべ立っていた。
一方のグラハムはというと、私を抱きしめたまま、嫌な目線を送っていた。
「ったく、久しぶりにマダムんトコ来てみたら・・・あんた達のラブラブパワー全開のシーンを見せつけられてさぁ」
「・・・す、すいません・・・わ、私がいけないんです」
「、謝らなくていいぞ・・・あんな奴なんかに」
「おい。・・・っていうかグラハム・・・アンタ何人様のもの使おうとしてんのよ」
すると、突然メアリィさんがグラハムに言い放つ。
グラハムはその言葉に勘付いたのか、すましたような顔をした。
「別にいいだろ、減るものじゃなしに」
「ってめぇ!・・・一応姉弟、やっていい事と悪い事があるだろが!!」
「何のことだか?」
「誰が無断で人のカード使っていいって言った!?」
「え?あのブラックカード、もしかしてメアリィさんの?」
「ん、は気にしなくていいことだぞ。あいつの言葉は別に耳に入れなくていいからな」
「・・・ハァ、グラハムに言ってもムダだわ・・・」
よーするに、グラハムはメアリィさんのカードを無断で持ち出したと言うわけだ。
何ともまぁ、大胆なことをする人だろうか。
「まぁまぁ、メアリィちゃんも大目に見てあげて頂戴」
「でも、マダム・・・アイツ、私のカードで豪遊するつもりなんだから」
「誰がするか。ちょっとに服を買ってあげようと思ったんだ」
「自分のカードでしろ。アンタだって自分のカードぐらいあるでしょうが」
「私は基本カードは持たない主義だ」
「ヘリクツ言うなクソガキ!!!返せ、今すぐ返せ!!」
「じゃあ、に服を買わせろ。そしたら返してやる」
そこで私を土俵に持って来ないでほしいところだ。
「はぁ・・・ちゃん、洋服どれ?」
「え?・・・メ、メアリィさん・・・でも、悪いです」
「あぁ、いいの。・・・コレくらい、其処のバカ弟が貴女にしてあげたい気持ち分かるから」
「メアリィさん」
何か、凄く我がままかもしれないけど――――。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして。・・・ホラ、グラハムカード寄越しなさい・・・元は私のなんだから」
「・・・チッ」
グラハムは(舌打ちしながら)メアリィさんにブラックカードを渡した。
何とかお店の服を買い占めるのは阻止には成功したし
私の手には、選んでもらった洋服が紙袋の中に入っていた。
「本当に、それだけでいいのか?」
「これで、充分です」
「もっとたくさん買ってもいいんだぞ」
「誰のカードか良く考えろよ、クソガキ」
「これでいいの。・・・ありがとう、グラハム。ありがとうございます、メアリィさん」
「「!?」」
グラハムと、メアリィさんは目を見開きお互い
驚いた表情を見せた。
「やれやれ、私もちゃんには甘いってことか」
「フン、姉さんよりも私はにかなり甘いからな。・・・ここでも、そしてベッドでも」
「グラハム!!それ言わなくていい!!」
グラハムを叱り付けて、私はマダムさんたちを見た。
「ありがとうございました!・・・お騒がせして」
「いいのよ、メアリィお嬢とグラハム坊やが揃ったらここも賑やかになるからね」
『マダム!!』
そう言いながら、マダムさんは私に近づいて
耳元でそっと言ってくれた。
「これからも、坊やをよろしくね」
「マダムさん」
「坊や・・・たまに乙女心が分からない子だから、そこら辺は大目に見てあげて」
「・・・はい」
そう言って、私から離れた。
「またいつでもおいで」
「はい、ありがとうございました」
「マダム・・・ありがとう」
お店の人たちに別れを告げて、私とグラハムは車に戻った。
「さてと・・・何処に行こうかな」
「グラハム」
「ん?」
「い、行くって言ったじゃん」
「さぁ、何のことかな?」
「嘘つき!行くって・・・言った」
「冗談だ・・・もちろん行くさ」
「あ、じゃあ私・・・プレミアムホットココアがいい」
「知ってるよ・・・じゃあ行こうか」
「うん!!」
乙女座の彼は、時々乙女心が分かったり分からなかったり
でも、そんな彼が私は大好きだったりする。
SpicA&Girl's minD
(だけど乙女座の彼に果たして、乙女心が分かるのかな?)