私の理性は、本当に使い物にならないと
この時ヒシヒシと痛感した。
「・・・・」
「」
「・・・・・・んふ〜・・・グラハムゥ〜〜〜!」
「(あー・・・誰でもいい、助けてくれ)」
さて、私は今凄くオイシイ・・・もとい
最悪な状況に陥っている。
私の体はソファーに倒され、そしてその上に乗りかかり
抱きついているのは、何を隠そう恋人のだ。
だが、普段彼女がこんなことしないのは
皆、承知のことだろうと思う。
何故・・・私がこんな状況に陥っているのかというと・・・―――――。
「グラハムゥ〜・・・ヒック・・・好きぃ〜〜だぁあい、好き!!」
「私も好きだよ、」
口から放たれる、甘ったるいまでの吐息。
そして、床に転がっている・・・色とりどりの味をした、チューハイの空き缶。
つまり、彼女は酔っ払っているということがこの光景からして一発で理解できる。
私はまだ一缶しか飲み干していないのに・・・全然平気だ。
しかしは一缶を飲み干す前・・・というか半分で、アルコールが体全体を侵食し
ベロベロに酔っ払ってしまった。
最終的には、何処に隠してあったのかチューハイの缶をたくさん出して飲みだす始末。
酔いが完璧に体を支配し、現在は酔っ払って私に絡んできた。
まさか彼女が絡み酒とは思いもせず
普段とは違うの姿に私自身理性を保たせるのだけでも精一杯だった。
「んぅう〜グラハムゥ〜」
「ど、どうした?」
すると、突然私の体から離れ、ソファーに座り込む。
ようやく寝ている体勢から私は起き上がることができ、を見る。
あんなに目が潤んで
唇も採れたての果実のように水々しくなっている。
顔なんてほのかに赤いどころか・・・もう熟れた林檎みたいで
今すぐにでも食べてしまいたいくらいに・・・・・・。
い、いかん・・・・何を私は、ムラムラしているんだ。
グラハム・エーカーよ。いいか、よく考えろ。
此処で理性をふっ飛ばせば・・・確実に目の前のウサギ
もとい、を食い潰すつもりだ・・・抑えろ、抑えるんだ。
自分の心にそう言い聞かせ、私は目の前で酔っ払っているを見る。
「・・・あちゅい」
「は?」
「あーちゅーいーの!!」
「あ・・・暑いのか?」
いきなり何を言い出すかと思ったら、暑いと言い始めた。
暑いのか?と問いかけると、はコクンと頷く。
私は、ため息を零しクーラーのボタンをOFFからONに切り替え、涼しい風を送らせた。
だが、此処で暴走が終わるはずもない。
「脱ぐ」
「へ?」
「ぬーぐーの・・・あちゅいから、脱ぐ。」
「ちょっ!?」
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て・・・・!!!!!
眼前の彼女は、服のボタンを外すのに取りかかろうとする
私はすぐさま静止を試みる。
「ま、待つんだ!」
「むぅ・・・にゃによ?」
「(呂律が上手くいってない)今さっき私はクーラーを付けただろ、それでいいじゃないか」
「あちゅいの!脱ぐの!!邪魔しないで!!」
邪魔しないで!・・・じゃない!私の理性と言う問題があるんだ。
私の静止を振り切り、はボタンを外そうとする。
だがしかし、その動きも止まる。
「・・・んぅ・・・ん・・・・むぅ〜〜〜!!」
「?」
「取れにゃい」
「と、れない・・・のか?」
「あーちゅいー!!あちゅい!!あちゅいのー!!グラハムのバァアアカ〜〜!!」
どうやら、服のボタンが取れないせいか遂には
手足をバタつかせ、暴れだし
私の名前を呼びながらバカと叫ぶ。
何故?
私は何もしてない・・・いや、むしろしそうな勢いだ。
此処で手を出さない自分をできるなら褒めて欲しい所だ。
いつもの私なら容赦なく襲い掛かる所だが
そうしないのは、が正常ではない・・・という事だ。
出来るならこのまま大人しくしていて欲しいことを願いたい。
「・・・・・・・」
「、どうした?」
すると、突然手足を止めて
まるで人形が座るように、は鎮まった。
ようやく落ち着いたか?と思っていた矢先―――――。
「そっかぁ!」
「な、何がだ?」
鎮まったかと思えば、今度は何かを思い立った模様。
一分一秒とも気が抜けない。
戦場でその気持ちはいつも味わっているのだが
まさか日常生活でこうなる場面に出くわすとは夢にも思っていなかった。
「下を脱げばいいんだ!」
「は?!」
の思いがけない発言で私は素っ頓狂な声を出し、目が点になる。
「下だったらボタンじゃないし・・・すぐ脱げる・・・よし、ぬーごう」
「!、それだけはやめなさい!!」
「うるちゃい。あたしは、あちゅいの・・・邪魔しないで」
そう言って、は履いていたスカート脱ぎ始めた。
ホックの取れる音がして・・・更には、ファスナーが下がっていく音が聞こえる。
取れたことが分かると、はスカートを意図も簡単に脱ぎ捨てた。
一種のストリップショーだ。
もう止めようにも止められない。
「じゃーん、脱げた〜!」
「・・・・・・っつっ!!」
脱げたことが終わると、私はその姿ですら直視できず
目を覆い隠す。
しかし、チラッと・・・下着は見えた。
薄いピンクのレースのついた・・・私好みの・・・下着。
つまり、ブラもそれに合ってる物・・・・って!!
何を私は想像してるんだ!!!
思わず想像してしまった自分が非常に情けなく感じた。
しかし、私も男だ。
あんなストリップショーを見せられて想像しないほうがおかしい。
だが、開き直ってしまう時点で更に自分は何て
欲望に対して従順なんだ、と思ってしまった。
「ねぇ・・・グラハムゥ」
「な、何だ?」
「顔隠してないで、見てよ〜」
「・・・・・・はぃ」
私は、の声に従うように
彼女の顔を見た。
あまり顔を隠していると、更に暴走を続けるに違いない。
今だって十分に暴走しているだろうけれど。
こうなれば、自らの理性を保たせなくては。
私は息を大きく吐き出し、顔を覆い隠していた手を退け彼女を見た。
「ねぇ、外して」
「は?」
「だってぇ〜・・・指狂って、ボタン外れないんだもん・・・外して」
「はず・・・外せと?私に?」
「うん。ねぇ・・・外してよグラハムゥ」
よつんばで、私に迫ってきた。
理性を保たせなくては、と意気込んだものの
本気でムラムラしてきた・・・。
唇はまるでグロスをつけたような美しさ。
ボタンが外れないという割には、1個だけ外せて、其処から覗かれる胸の谷間。
スカートを脱いだ、下着一枚の下肢。
「ねぇ、グラハムゥ・・・お・願・い」
耳元で、囁かれる・・・甘い色気たっぷりの声。
あぁ、もう・・・・・・ムリだ。
---------プツン!
そして、私の中で理性の最後の1本が切れる音がし
目の前の彼女に襲い掛かるのだった。
Pinky Heaven−暴走姫君−
(理性が使い物にならない、君が狂ってしまえば)