「終わったー!!」
「ですね、カタギリさん」
「うん、ありがとうさん!!」
「いいえ」
ある日カタギリの研究室の片づけがようやく終わったらしく
カタギリとは共に喜びを分かち合っていた。
私は椅子に座って、そんな2人を見ながら書類の整理をしていた。
「あぁ、これでしばらく綺麗な部屋で仕事が出来る」
「よかったです、お役に立てて」
「しかし、この綺麗になった場所・・・あと何日持つかな?まぁ、多分・・・1週間と持たないだろうがな」
「人が喜びに浸ってるときに水を差すような発言やめてくれないかな、グラハム」
「事実だろ」
私は笑みを浮かべカタギリを見た。
そんな私を見たのか、彼はため息をつき苦笑を浮かべていた
私は書類を机の端に綺麗に積み上げ、椅子から立ち上がる。
「さて、そろそろ帰ろうか・・・」
「え?あぁ、もうこんな時間なのね。帰って夕食の準備しなきゃ」
私が声をかけると、はいそいそと帰る準備を始める。
そんな彼女の姿を見ながら、私も鞄に必要な書類だけを入れ
軍帽を頭に被り、鞄を持ち上げた。
「、行くぞ」
「うん。・・・カタギリさん、お先失礼します」
「あぁ、ありがとうお疲れ様、さん」
「じゃあ、カタギリ・・・お疲れ」
「お疲れ〜」
そう彼に挨拶をして、と共に研究室を出た。
「じゃあ、後で」
「うん、待ってるね」
軍内部の人間にバレないように、私はを裏口から出し
私自身は正面玄関から出て、の待つ裏口に回った。
「!」
声をあげ、彼女の名前を呼ぶと
私の声に気づいたのか、は私の顔を見るなり微笑む。
私はすぐさま彼女の元に駆け寄る。
「待ったか?」
「うぅん・・・いつも通りだよ」
「そうか。・・・・今日はすまない、車じゃないんだ。少し歩けばバス停があるから今日はバスで帰ろう」
「うん」
そう言って、私とは肩を並べて施設から少し離れたバス停へと歩いた。
バス停まで歩いていると
雲行きが怪しくなっていくのが見えた。
すると、空から数滴の雨粒が落ちてきた。
そして数滴の小さな雨粒が突如として
降り注ぐ雨となって落ちてきた。
「きゃぁっ!?」
「仕方ない・・・走るぞ、」
「で、でもっ」
「大丈夫」
鞄を右手で持ち替え、左手での右手を掴んで
雨の中バス停まで走った。
私達は屋根つきのバス停に着いた頃には
降り始めた頃よりも、更に酷くなっていた。
「あー・・・濡れちゃったね」
「そうみたいだな」
私は軍帽を脱ぎ、バスの電子時刻表を見て、携帯で時間を確かめる。
すると、電子時刻表に・・・・――――。
「次のバスは・・・あぁ、雨で1時間くらい遅れるそうだ」
「えぇ!?・・・まぁ、しょうがないね。道路が混んじゃうもん」
そう伝え、私はを見る。
彼女は笑いながら、水滴の張り付いた前髪を払う。
だが・・・私はそんなを見て、内心驚き・・・急いで服の上着を脱ぎに羽織らせた。
「えっ?・・・な」
「着てなさい」
「でもっ・・・グラ、ハム」
「私は大丈夫だから・・・それに・・・」
「?」
私はさり気に、目線を空へと泳がせた。
咳払いをし・・・クスッと笑みを浮かべ―――――。
「見えてたぞ、ブラジャーが」
「え!?・・・ちょっ!!」
そう言うと、は顔を真っ赤にして
私の上着を強く握り締め羽織る。
「ば、バカグラハム!」
「可愛いな。今日はピンクで白のレースか」
「もっ・・・言わないでよ!!」
「私的に、この前君が買った白レースのついた白いブラでも良かったのだがな」
「公道でそんなこと言わなくてもいいでしょ!!」
私はそう言ってをからかいながら笑っていた。
彼女は、そんな私の発言に顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「ゴメン、」
「もぅ、恥ずかしいんだから」
「私が悪かったから、機嫌直し」
「ヘックション!」
「え?」
思わず、私はくしゃみをしてしまい顔から一気に血の気が引いた。
おそるおそるの顔を見ると・・・笑いを堪えている。
次の瞬間・・・――――。
「プッ・・・アハハハハハハ・・・!!」
かなり笑われた。
私はあまりの恥ずかしさに、顔を手で覆い隠す。
「アハハ・・・ハハ・・・ハ・・・あー・・・もう、面白い・・・グラハムそんなに恥ずかしい?」
「カッコ悪いうえ、恥ずかしいだろそれは」
「私のブラの色をバラした罰です。ホラ、こっち向いて」
「ダメだ・・・顔が赤い」
「髪の毛とか顔とか濡れてるからくしゃみが出ちゃうの。拭いてあげるから」
の優しい声に、私は手で鼻を覆い隠し、すすりながら
電子時刻表の土台部分に座り込む。
すぐさまは自分のポーチの中から
タオル状のハンカチを取り出し、私の髪の毛や顔を優しく拭く。
距離が近いせいか、の優しい匂いが鼻を霞める。
「グラハム、寒くない?」
「どうして?」
「だって、上着・・・私に貸してくれた、から」
下から見るの顔は、ちょっと困った表情をしていた。
私は笑みを浮かべ、彼女を引き寄せ抱きしめる。
水が染み渡った、の衣服。
抱きしめるだけで、その体の細さが余計感じれる。
でも、何だか柔らかい感触に心地よさを覚えていた。
「寒くないよ」
「でも、グラハム・・・体、冷たい」
「帰ったらお風呂に入るからいい」
「うん、すぐ沸かすね」
「いや、シャワーでいい。も入ろう」
「え!?・・・や、でもっ」
「君に風邪を引かせるわけにはいかない・・・だから、入ろう」
「もぅ、我がまま」
そう言って、は私の頭を撫でた。
手の感触が、髪に触れて・・・気持ちがいい。
私は体を離し、顔を上げ、を見た。
「」
「ん?」
「キス、しようか」
「え?!・・・あ、いや・・・でも・・・此処・・・っ」
私は立ち上がり、手袋越し彼女の頬に触れた。
「嫌か・・・此処でするのは?」
「あ、当たり前じゃない・・・誰か、来たら・・・っ」
「誰も来ないさ・・・こんな雨だ。それにな、」
名前を呼び、私はを抱きしめた。
「グ、グラハムッ!?」
「私の心臓の音、聞こえるか?」
「え?・・・う、うん・・・聞こえるよ」
「早く、動いてるだろ?」
「ぅ、うん」
「ドキドキしてるからだ・・・君の姿に」
「わ、私?」
雨に濡れた、君の姿。
愛らしいまでの、声。
頭を撫でる手なんか、優しくて
顔を見たら、言葉にならないくらい――――。
「キス、したくなった」
「グラハム」
「しても、いいか?」
「バレても知らないから」
「構わないさ。むしろ見せつければいい。私は君を愛してるんだと周囲に教えてやる」
「も、もう貴方って人は」
「するよ、キス」
「ご自由に」
そう彼女の声を聞いて私はと唇を重ねた。
雨が降り注ぐほど、何度も何度も・・・愛を確かめ合うように・・・唇を重ね続けたのだった。
It's gonna rain!
(突然の雨は、2人を近づけさせる愛の雨)