12月25日。

テーブルに乗るくらいの小さなクリスマスツリー。

豪勢に盛り付けたオードブル。

こんがり焼いた七面鳥。

彼のことを考えて作った甘さ控えめのクリスマスケーキ。

後は・・・―――。






「グラハムが帰ってくるのを待つだけね」







すべての準備は整った。
後はこの部屋の主であるグラハムが帰ってくるのを待つだけ。

彼の事だ。
相変わらず、部屋を勢いよく開けて―――。











!メリークリスマス!!』










とか言って抱きついてくるだろう。
それでプレゼントを買ってきたから早く開けて欲しいとか言うに違いない。








「ウフフ、可愛いグラハム」







此処まで行動の読める人なんて早々いない。
でも彼の場合それがとても私にとっては愛おしく思えてしまう。














―――――ガチャッ!・・・バタン!!










「帰ってきた!」







すると、玄関から鍵の開ける音と
ドアの閉める音が聞こえた。

その二つが聞こえたと同時に、ズカズカと凄まじい足音が聞こえてきた。





そして勢い良くリビングに続く扉が開かれたと同時に――――――。















!出かけるぞ!!」


「はい!?」











予想とはまったく違う声に私は驚きの声が出てしまった。

彼のことだから絶対に「メリークリスマス!」という言葉が
飛んでくると思っていたのに自分の予想とは全く違う声が飛んできて驚いている。









「ホラ、出かけるぞ!」



「ど、何処に!?えっ、ちょっ」








あまりに突然のことで行動がまったく読めない。
いきなり「出かけるぞ」とか言われても、私は何の準備もしていない。

そんな私の焦る気持ちをよそに
グラハムは私の手を握り、ぐいぐいと引っ張っていく。









「ね、ねぇ・・・ど、何処行くのよグラハムッ」


「いいから。早く」


「早くって。ちょっと、私コートも何も」


「いいから」









コートも、マフラーも私に付ける時間すら与えず
グラハムは私の手を引っ張り
玄関を開け、寒い外へと連れ出した。

自分勝手だとは分かっていたけど
コートも何も着せないで外に出すなんて
彼は私に風邪を引かせるつもり?とか思ってしまう。




結局急かされ、私は彼に車に乗せられた。


車の中は外の寒さとは大違いなほど暖かく
無理やり連れ出され
外の寒い空気に触れた体が一気に温まる。



私が助手席に座り、グラハムは運転席に座る。








「ど、何処行くの?」



「まぁ黙って座ってなさい」



「何処行くくらい教えてくれたって」



「ダメだ」



「ケチ」







シートベルトをしっかり締め
彼は車を発進させた。






グラハムのマンションを出て
私を乗せた彼の車はしばらく夜の道を走っていた。

会話を交わすことなく、車は夜の道を走る。








「あっ」



「どうした?」



「え?・・・うぅん、なんでもない」








私は突然声を上げた。
グラハムに問いかけられたが何とか濁した。




私が声を上げたのは、テーブルに並べた豪華な夕食たちのことだった。



グラハムが帰ってくるや否や
外に連れ出されてしまい、ラップの何もしていない。

外気にされされたまま放置してきたので
せっかくの暖かい夕食が冷めてしまっただろう。


出来立てのこんがり焼けた七面鳥も、きっと冷たくなっている。








「ねぇ、いい加減教えてよ。何処行くの?」



「もうすぐだ。もうすぐ教えてあげるよ」








私が問いかけるとグラハムは笑みを浮かべながらそう答えた。


さっきからその言葉しか
返ってこないので私は盛大にため息を零し、目線を下に落とした。







「(せっかく頑張って作ったのに)」







早く帰らないとお料理が完全に冷めてしまう。



頑張ってグラハムが喜ぶと思って作ったのに。


プレゼントだってちゃんと用意したのに。。




肝心の彼はというと、何も教えてくれない。











・・・見てごらん」

「え?」










すると、運転をしながらグラハムが何か言ってきた。
私は目線を上げると、其処には・・・―――。








「うわぁ〜・・・綺麗」











私の目の前に広がっていたのは
煌びやかな街のイルミネーションだった。

まるで空に浮かぶ星が
そのまま地上に降り注いだかのように街を彩っていた。









「毎年此処は盛大にイルミネーションをするんだ。今年は去年ほど電飾は多くはないが
それに負けないほど今年もかなり豪華に彩ってあるな」


「すごい。すごい綺麗だよ、グラハム!」


「あぁ、綺麗だな」








私は助手席の窓から
通り過ぎていく街のイルミネーションを見ていた。

イルミネーションのおかげで
煌びやかな街がさらに、色鮮やかに輝いていた。










「此処よりもっと綺麗な場所があるんだ」



「え?」



「今日は特別にを連れて行ってあげる」



「う、うん」








そう言われ、彼はイルミネーションの街を
颯爽と車を走らせ郊外に出る。

郊外を出て、少し高い丘の上へと車を走らせた。


其処に着くと、彼は車を止めた。








「出てごらん」



「う、うん」







彼にそう促され、私はシートベルトを外し
ドアを開け冷たい外の世界へと身を出した。



車を離れ、少し前に出ると。










「凄い・・・綺麗」









目の前に広がったのは街の景色。

イルミネーションで彩られた街が
高い場所からの風景で、普通に見るときとは別の形に見えていた。

黄色だったり、青だったり、赤だったり
近くで見れば転々と輝いているただの電飾が
高い所かの風景では、それが
星の輝きのように光っていた。









「此処からだと街の風景が見えてな。普通に見るよりも一番綺麗に見えるんだ」



「へぇ」



「私のマンションからだと分かりにくくてな」



「だから、連れてきてくれたの?」



「あぁ。に見せてあげたくて」








私の隣に立ったグラハムが笑みを浮かべた。

明かりが街のイルミネーションだけなので
彼の表情が凄く色っぽく見えてしまう。










「へっくしゅっ!」



、寒いのか?」



「だって、グラハム何の準備もさせてくれないんだもん。コートもマフラーも着てきてないよ」









外の寒さに思わずくしゃみが出てしまった。

一応厚手の服を重ね着しているが
コートも着てきてないし、マフラーすら首に巻かず
そのまま連れられてきたので、寒さにくしゃみが出てしまったのだった。










「すまない。早くに見てほしくて、急かしたな。そうだ・・・じゃあ、こうしよう」



「?・・・えっ、ぁっ」






するとグラハムはコートを着たまま
私を自分のコートの中に招き入れた。

すっぽり私がコートの中に収まると
グラハムは抱きしめるように包み込んだ。








「ホラ、これであったかいだろ」



「・・・・・・ぅ、ぅん」









耳元で囁かれる彼の声。

優しく聞こえる彼の胸の鼓動。

寒さが急に暖かくなった。









「グラハム」



「ん?」



「メリークリスマス」



「メリークリスマス・・・私の可愛い








そう言われ、優しい彼の唇が私に落ちてきた。






艶やかなイルミネーションと愛の言葉は
大好きな彼から私へのクリスマスプレゼントだったのかもしれない。








ソリに乗ってさぁ行こう
(艶やかな街を君と一緒に駆け抜けよう) inserted by FC2 system

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