「カタギリ、復旧作業は続いてるか?」


「グラハム。あぁもちろん、でももう少しかかるみたい」


「そうか」










ソレスタルビーイング新型ガンダム3機による
MSWAD基地襲撃事件の爪跡は未だに色濃く残っていた。

破壊された、滑走路や管制塔、専用ドック数棟。
おかげで国は計り知れない予算を復旧に注ぎ込む羽目になった。










「君の具合も良いのか?」


「おかげさまで」


「何よりだ」


「それよりも、君のほうを僕は心配してるんだけど」












カタギリに言われ、私は少し俯いた。














さん、もう居なくなって6日も経ったけど連絡あった?」


「いや、何もない。携帯も、置いていったから連絡の仕様がない」


「おかげで君はこのところ家に帰っていないそうじゃないか」


が居ない家なんて、帰っても意味がない」










気のない声を出しながら私はポケットから
に買ってあげた携帯を取り出す。

主人の居なくなった電話は、着信音すら奏でてくれない。







さんの携帯?」


「ああ。私が買い与えたんだ。すぐに私と連絡が取れるようにと思って。
でも、コレを置いて飛び出して戻ってこないんじゃ・・・意味が無いし、探しようがない」


「そっか」


「昨日マンションに帰ったらから置き手紙されてた・・・心配するなって」


「本人がそう書いておいたなら、一安心だね」


「・・・ああ」












だが、私は安心はしなかった。

なぜなら
内容に、言葉も出なかったからだ。










グラハムへ。

ごめんなさい、勝手に出て行ったりしてごめんなさい。
でもこれ以上、貴方の辛い顔なんて見たくない。

それに、私も貴方が辛いときになんて声を
かけて良いのか分からないの。

だから、しばらく私は貴方の知らないところに
居ることにしました。

私も心を落ち着かせなきゃいけないと思って
これ以上貴方の迷惑にはなりたくないの。

しばらくの間、探さないで下さい。
整理がついたら戻ってきます、だから心配しないで。

本当に自分勝手でごめんなさい。

より。










その文面を読んで、私は言葉を失った。


手紙の横には今、自分が握り締めている彼女の携帯が置かれてあり
しばらくは連絡もとりたくない、という意思表示の現れでもあったからだ。








「あの子は、私の知らないところで傷ついたんだ」


「グラハム」








あんな風に言わなければ、が傷つかずに済んだはずなのに。

















『うるさい、黙っててくれ!大丈夫だと言っているだろ!!』













冷静になれなかった。

仲間を、力添えしてくれた人を助けられなかったばかりに。



に、怒りをぶつけてしまった。







「どうして、私は・・・っ」






涙が溢れてきた。



自分の勝手なエゴだ。

それを彼女にまで当ててしまった。



私は何て事をしたんだ。


ケンカしたり、お互いを避けたりするのを
一番にあの子が嫌っていたことなのに。










「あの子は、は・・・っ」







携帯を握り締めても、音は出ない。

主人の、の温もりすら感じられない。



声を聴きたいのに、何処に居るのか分からない。


抱きしめてあげたいのに、何処に居るのか分からない。


謝りたいのに、君は何処に居るんだ?





















地に涙が一滴落ちた。

溢れる気持ちが、今までの気持ちが・・・一気に流れ落ちた。













「本当はね、黙っておこうと思ったんだけど。これ以上、苦しんでる君見てられないな」


「カタギリ?」






すると、カタギリが苦笑を浮かべながら私を見ていた。





「実はね、あの時さん、此処に居たんだ」


「何だと!?」


「ゴメンね、勝手に。でも、僕も部屋の整理が手に負えなくて彼女に手伝ってもらってたんだ」







初めて聞かされる事実だ。

私が家に居る時は、彼女は居たのに。










「教授も、前々から可愛がってたみたいでね。ご自分のお孫さんみたいに」


「そうか」


「それで、あの時―――――」



























ドカァーン!!!






『カ、カタギリさん!?一体何が?!』


『もしかしたら、外が襲撃されてるかもしれない。様子を見てくるから、さんは此処に残って』


『で、でもっ!』


『旧友の恋人を危険な目に遭わせたら、僕がグラハムに殺されちゃう』


『カタギリさっ』


『大丈夫、必ずグラハム達が助けに来てくれるから。此処に避難しておくんだよ、いいね?』


『はぃ』











「そう言って、僕は彼女を研究室に残して外に出たらあのガンダム3機が
基地を襲撃してるじゃないか。君たちオーバーフラッグスはすぐに駆けつけて攻撃したけど」



「私達は歯が立たなかった。そして、ハワードを亡くした」








ああ、今でも脳裏に焼き付いて離れない。


彼の機体が堕ちていく瞬間が。









「教授と基地諸共、奴らは破壊して行った。幸い、さんの居る僕の研究室は大丈夫だったけどね。
僕や、周りに居た部隊員達は攻撃の爆風で負傷した。すると、其処に―――」












『カタギリさん!!』


、さん出てきちゃ・・・駄目だ』


『でも、もうガンダム居なくなったんだし、平気です。それより!それよりも!!』


『?』




















『グラハムは・・・・・・無事ですか?』





















「え?」


「真っ先に心配されちゃった。怪我人が目の前に居るのにね」







が、私を心配して?


初めて聞かされる話に、頭は混乱していくばかり。








「彼女、目にいっぱい涙溜めて僕に言ってきたんだ。多分副管制塔で
フラッグの1機が墜落したっていうアナウンスを聞いて君じゃないかと思って心配したんじゃない。
それで、君が無事だと伝えるたら・・・・・・」











『そう、ですか。・・・よ、よかった・・・っ』












「凄い、ホッとした表情で泣いたんだ。相当君の安否が心配だったらしい」


が、そんなこと」


「その後、僕含め周囲の部隊員達に応急処置して、僕が家に帰したんだ。君が多分帰る前に」


「成る程な」









その話を聞いて、私は更にに逢いたくなった。

そして謝りたかった・・・感謝したかった。







「君がどんな言葉でさんを傷つけたか知らないけど
彼女は精一杯君のこと心配してたんだ。それだけは、分かってあげて」


「あぁ」






そんなことがあったなんて、知らなかった。
なのに、どうして・・・・・・私は。





手に握りしめた携帯を眺め、無言になる。









「・・・・・・」


「いつまでも落ち込んでないで、居場所くらい捜したら?きっと彼女も会いたがってるんじゃない?」


「だが、養家には帰ってない。連絡もしたし、あの子が行くところなんて、もう何処も」










ふと、ある人物が頭を過ぎった。


養家に帰っていないのであれば、彼女の居場所は分からない。

だが、1つだけ手がかりがある。










「カタギリ、怪我をしているところ悪いんだが調べて欲しい住所がある」


「心当たりあるみたいだね、彼女の居場所に」


「あぁ、多分いや、絶対あそこには居る」


「分かった。で、誰の住所を調べるんだい?」








そう言って、私はある人物の住所を彼に
調べてもらい向かうのだった。





悲しみに暮れた、愛しい君を迎えに。










哀姫
(神よ、もうどうか彼女に涙を流させないで下さい) inserted by FC2 system

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