――――コンコン・・・!
「、食事を持ってきたけど」
「ごめんなさい。今食欲ないから」
「君はもう3日、何も口にしてないだろう?
さぁ、食べやすいものを作ってきたからお食べ」
「ドリューさん」
3日も食事が喉を通らない、そして既に、6日も家に戻ってない。
ずっと、ドリューさんのお家に居て
彼の亡くなった奥さんが居た部屋にカイルと篭りっきりだった。
そして、食事もまともに摂ってない。
「、何か口にしなきゃ体が持たないよ」
「でも何も食べる気がないの」
「どうしたんだい?・・・また、中尉さんとケンカでもしたのかい?」
ドリューさんに言われ、私は黙り込んだ。
前は確かに、ケンカらしいケンカをした。
でも、今回は違う。
「ケンカじゃないんです。私が一方的に、出てきたんです」
「もしかして、家を留守にしてるのかい?」
「はい」
「それじゃあ、中尉さんは?」
「家に帰ってないと思います。ガンダムの基地襲撃があったからきっと軍に篭ってると思うんです。
だから、マンションには帰ってないと思います」
「、一体どうしたと言うんだい?私にも話せないことなのか?」
そう言われ、私は蹲った。
何も言えない。
何も話せない。
どう伝えていいのか分からない。
あんな彼に、私は一体どんな言葉を投げかければよかったの?
「ごめんなさい・・・ごめんなさい」
「。無理はしなくていい。話せる時が来たら話していいんだよ」
「ドリューさん」
ドリューさんは何も聞かず少し屈んで
ただ、私の頭を優しく撫でてくれた。
その優しさに触れるだけで、涙が溢れて止まらない。
――――ピンポーン!!
すると、インターフォンが鳴る。
ドリューさんは立ち上がり、カイルも音に反応して吠える。
「おや、こんな日に誰だろう?、少しでもいいから食べるんだよ。ちょっと下に行ってくるね」
「はい」
「カイル、お前は此処に居なさい」
「ワン!」
すると、ドリューさんは部屋から出て、1階に降り
エントランスへ駆け、閉めていた鍵を開ける。
『はい、どなたでしょう?』
『すいません、突然』
『本当に突然の訪問すいません』
『おや、エーカー中尉さんとカタギリさんじゃないですか』
グラハムとカタギリさんの声に私の心臓は
激しく動き始め、私は動揺を隠せない。
どうして?
どうして、この場所が分かったのだろう?
突然の彼の訪問に
私の頭は上手く、事の事態を処理できない。
『中尉はついこの前までで、今は上級大尉になりました』
『そうでしたか、昇進おめでとうございます』
『ありがとうございます。あの、それでは此方に来てませんか?』
『えぇ、居ますよ。もう4日も妻の部屋に篭りっぱなしで、まともに食事すら食べてくれません』
『そうでしたか。あの、部屋のほうに』
『ご案内します。貴方が来たら、多分出てくると思いますよ』
『さぁ、どうでしょう』
『心配ですね、それが』
『どういうことでしょうか?とにかくどうぞ、こちらです』
ドリューさんは戸惑いながらもグラハム達を家に上げた。
一歩一歩と、グラハムが私のところに近づいてくる。
今、顔を見る訳にはいかない。
今、彼と話をするなんてできない。
でも、この状況を如何に潜り抜けるかと悩んだ末
開けっ放しにされていた部屋の扉を閉め、鍵をかけた。
そして、自分の心にも鍵を掛けた。
「クゥ〜ン」
すると、カイルが私の足元に顔を擦り寄せて来た。
その眼差しは悲しげ。
カイルはきっとグラハムに会いたいのだろう。
この子は彼が大好きだから。
「カイル・・・ごめんね。今、私グラハムに逢うわけには行かないの」
私はドアから離れ、カイルを抱きしめる。
「ごめんね、ごめんねカイル」
私の悲しい気持ちがカイルに伝わっているのか
カイルは小さく鳴きながら、私の側に居てくれるのだった。
今、私は彼の側に居れない。
今、彼の元には戻れない。
戻ってしまえば、きっと――――彼の傷を深めてしまいそうで怖いからだ。
傷の深さ
(側には居れない。貴方の傷を深めてしまいそうで)