「しかし、君も凄いと思うよ。医師たちビックリしてた」


「ほぼ完治して、リハビリ2ヶ月で歩けるまでになった、誰が予想しただろうな」






あれから更に2ヶ月が経った。


手と腕は前の1ヶ月で大抵動ける範囲まで持ってきた。


そして、今現在少しずつではあるが歩けるまでになった。
本来なら、1年と時間を費やすはずなのに・・・・本当に自分の回復力にこの時感謝した。





「あと3ヶ月で完璧に治す。年内には復帰するつもりだ」


「急がば回れっていう言葉知ってる?無茶しなくてもいいんだよ・・・・皆戦争の事後処理で慌しいんだから」


「しかし、色々方針などが変わるだろ。それにいい加減、病床生活にも飽きてきた」


「それくらい、大口叩けるんだったらいい加減さんに逢ったら?」


「・・・・・・・・」







何かと、の話題を出されると、言い返せない自分が未だに居る。

2ヶ月前の花束以来、からの連絡も何もない。

カタギリも私に気を遣ってのことか、のことは教えはしなかった。







「病床生活飽きたって言う前に、どうしてさんと逢ってあげないの?」


「そ、それは・・・・っ」


「もういいじゃない、グラハム・・・・我慢弱い君が、彼女に逢いたくないなんて本当は思ってないでしょ?」


「カタギリ」






もう、何年も付き合いの長い彼だからこそ
私の思っていることは分かるのだろうな。










――――コンコン!






「はい、どなた?」




『・・・・・・・』





すると、扉の叩く音がした。
カタギリが応えるが返答がない。


姉さんや、軍の同僚ならすぐさま入ってくるはずなのに。







まさか、いや・・・・そんなはず・・・・。







か?」



『ぅん』






扉の外には1年半振りに聞くの声だった。


あぁ、ようやく君の声が聞けた。もう、それだけで幸せだった。







『もう、耐えれないよ』



「え?」







すると、は多分・・・・泣きながら、私に訴えてきた。






『どうして、私だけ入れてくれないの?カタギリさんや、お姉さん・・・・他の人とか入れてるのに
ねぇ、何で?何で、私は入れてくれないの?・・・・そんなに、顔見られたくないの?』


・・・・それは・・・・」


『知ってるよ、元に戻らないことくらい。・・・・でも、それでも貴方は貴方じゃない。
私、どんな貴方になったって・・・・平気よ、だからお願い』




















『・・・・ 顔 を 見 せ て ・・・・』













1年半前は、涙を必死に堪えてその場を去った



でも、今は懸命に私に向き合おうとしている、恐れもせず。
それは彼女が私を愛してくれている証拠だということ。




1年半って、口で言えば短いけど・・・・過ごせば長い月日だ。




私は、そんな月日を過ごしていた・・・・隣に、の居ない日をずっと過ごしていた。


これからもずっと、こんな日を過ごしていかなければならないのか?








もう、耐えられない。










「カタギリ」


「何?」


を中に入れてくれ。彼女と話がしたい」


「分かった」










カタギリに扉を開けさせ、を中へと入れた
そして、カタギリがその場を去った。



ようやく、2年ぶりにを顔を合わせる。

マスク越しの彼女がゆっくりとこちらに近づいてくる。









「・・・・ッ、グラ・・・ハム・・・」


「失望したか?私の顔に」


「・・・・バカッ」


「え?」









すると、は泣きながら私に抱きついてきた。
あまりのことで私は戸惑いを隠せない。







・・・・どうして?」


「グラハムの顔見て、私が失望するとでも思った?・・・・バカね、するわけないじゃない」


「・・・・嘘だ、嘘だ。だって、私は・・・・もう、このマスクがないと」


「だからなんだって言うのよ。それでも、貴方は貴方じゃない。私は、貴方が生きていてくれればそれでいいの」


「・・・・





はそっと、私の顔についたマスクをそっと撫でる。








「ステキじゃない、そのマスク姿も。頑張って、戦ってきた証。誰も恐れたりしないわよ。
私も、怖くないわ。だってグラハム一生懸命、頑張ってきたんだもの。皆の分まで戦ってきたじゃない」









撫でているときの彼女の表情は2年前の時から変わらない。
あの、優しくて柔らかい表情だった。







「怖くない、大丈夫。皆が貴方を恐れても、私が貴方の側に居てあげる。だから、もういいんだよ・・・・グラハム」


「私は・・・・わ、私は・・・・っ、・・・・くっ・・・・ぅ・・・・・・・・ッ・・・・」


「もう少し、早く貴方の痛みに気づいてあげればよかったね。・・・・ゴメンねグラハム」


「違う、違うんだ。私が、私が君をっ・・・・拒絶してしまったばかりにっ・・・・ゴメンッ」


「・・・・グラハム」






















「おかえりなさい・・・・生きて帰ってきてくれて、ありがとう」


「・・・・ッ」









私は力いっぱい、を抱きしめた。


でも、2年前よりも力は劣っているがそれでも今ある精一杯の力で彼女を抱きしめた。






「もう、泣かないの・・・・来年で貴方、30歳でしょ?いい大人なんだから」


「君に逢うと、毎回のように涙腺が緩むからな・・・・仕方ないだろ、君にも否がある」


「そうね、ごめんなさい」








私はの涙を指で拭い去った。
すると、は私の仮面をまじまじと見ていた。







「でも、何かマスクしたグラハムもカッコイイかも」


「そうか?」


「うん。なんかミステリアスな感じがする」


「ありがとう」







の言葉一つ一つが、失っていた時間を取り戻すように
私の心を満たしていった。







「ようやく、君にも逢えた。明日から、リハビリ頑張らなくてはな」


「あんまりムリしないでよ。早く元気になってほしいけど・・・・ムリだけはダメだからね」


「分かっているが・・・・君を見た途端早く帰って、君を感じたいという衝動に駆られる」


「ばっ!?・・・・もぅ、不謹慎極まりない」


「私もそろそろいい歳だし・・・・この辺で子供でもほしいな」


「も・・・・もう、なら早く元気になって帰ってくれば」


「そうだな。早く帰って、子作りに励むか・・・・理想は3人で」


「3人も!?・・・・もう、グラハムったら」














空白の時間を少しずつ、少しずつ、埋めていこう。

あの幸せだった日々をもう一度
この手に戻すために。












「とりあえず・・・・するか、此処で」


「は?!ちょっ、何考えてるのよ、病人!!」


「2年間も君に体に触れてないから、体の隅々までチェックしてやる・・・・誰も触れてないか」


「も〜〜だめ〜〜!!」











これから先もずっと、君と共に。







手を繋いで歩もう
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