『ついに、あの薬が完成したらしい』
『おぉ!さすが、名誉ある薬学博士だ。・・・では、早速実験に移ろう』
『サンプル対象はどうする?』
『彼はどうだろう?若返れば、体を気にせず乗れるだろう』
『うむ。記憶などには、障害はないと言っていたからな・・・大丈夫だ』
『では、今すぐにでも・・・彼の家に赴いて、飲ませてしまえ』
君には、悪いが実験の対象になってもらうよ―――グラハム・エーカー中尉。
―――ピンポーン・・・!
「何かしら?」
とある日、グラハムの家のインターホンが鳴る。
居候であり、彼の恋人でもあるはいそいそと玄関へ行く。
「はい、どちら様でしょう?」
「こちらはグラハム・エーカーさんのお宅だとお伺いしておりますが?」
すると、何とも怪しげな黒いスーツに身を包んだ男が居た。
は怪訝そうな顔でその男を見ていた。
「え・・・えぇ、そうですが。・・・すいません、今グラハムは仕事に行ってて、戻ってくるのは夜になるんです」
「そうですか。・・・でしたら、コチラの品をお嬢さんにプレゼントいたします」
「えっ!?」
突然、男は綺麗に包装された如何にも高級そうな
手のひらサイズの小さな箱をに渡した。
あまりの事では戸惑う。
「そっ・・・そんな、見ず知らずの方からこんな物・・・頂けません」
「大丈夫ですよ、中はそこいらじゃ滅多に手に入らない高級チョコなんです」
「あの、ですけど・・・」
「貰ってください。私とお嬢さんが此処であったのも何かの縁です。一期一会と言う言葉をご存知で?」
「・・・い、いいえ」
すると、男はなにやら博識的なことを話し始める。
「一期一会というのは、日本のことわざで”生涯で一度会うこと“で。その出会いを大切にすると言う言葉があるんです」
「は、はぁ」
「ですから、その言葉を大事にするため・・・ですから、受け取ってください」
そこまで説明され、言われてしまうとも無理には追い返せなくなる。
「ゎ、分かりました。ありがとうございます」
「よかった。・・・あ、でも1つだけ」
「はい?」
すると、男はの耳元で囁く。
「コレは私と貴女の秘密です。絶対にグラハムさんに見つからないように召し上がってくださいね」
「え?あ、はい・・・わ、分かりました」
そう言うと、男は一礼をしてその場から去っていった。
は、男が見えなくなるまで見送ると手に持った小さな箱を見る。
「何で、内緒で食べなきゃいけないんだろう?ま、いいか・・・高級そうだし、グラハムが帰ってこないうちに食べよ!」
ふと疑問に思うも、はそんなことを放っておいて
浮かれ気分で家の中に再び入るのだった。
『こちら、コードネーム・1032・・・対象者不在のため、サンプル対象者の変更を行った』
『了解。名前などは分かるか?』
『名前は分からないが・・・年からして20歳前後の女。とりあえず、対象者の急遽変更を上層部に伝えろ』
『分かった』
男は少女に、禁断の箱を渡し
少女はその箱に手を掛け、箱を開き―――禁断の果実を口にするのだった。
PANDORA
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禁断の箱
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(その中には、禁断の果実が入っていたのだった)