「じゃあ、ちょっと出かけてくる」


「ぅん」




私は、昨日博士の電話どおり、ラフな姿で彼の居る研究所に行くことにした。

頭に帽子、服装は白いジャージとジーンズ。
靴は黒いスニーカーといった、至ってラフな格好。

こんな格好さえしていけば、確実に私だとは分かるまい。








「何時くらいに帰ってくるの?」






すると、が私のシャツを着たまま、玄関に見送りに居た。





「分からないが、なるべく早く帰ってくるさ」





私は微笑みながら、の頭を撫でた。
そして、そっと彼女に耳打ちする。







「お留守番はいいが、1人でするなよ?」


「なっ!?・・・し、しないわよ!」


「まぁ、した時はお仕置きだからな・・・覚悟しとくんだぞ」


「もうしないって!!早く行きなさいよ!!」


「はいはい」








そう言って、私は彼女を1人家に残し出て行った。




そして私は車を走らせ、この間訪れた薬学研究所にやってきた。








「また此処に来ようとはな・・・ま、仕方ないか」







車を降りて、入口に向かう。

すると、其処にはこの前まで居なかった軍の監視員達が居た。
私は帽子を深く被り、入口の研究員に話しかける。









「あの・・・先日、博士からお電話を頂いた者なんですが」







そう、言うと研究員は何かに気づいたような顔になり。







「お待ちしてました、どうぞ」







言われるがまま私は研究員に先導され博士の部屋まで行く。
部屋に着いたが、其処にも監視員が2人、扉の両脇に付いていた。











―――コンコン!








「博士。お客様のオスカー様をお連れしました」


『通して』








知らない名前だ、と思ったが多分私だとバレないように偽名でも作ったのだろう。
研究員が扉を開け、すぐさま中へと通され、扉が閉まる。


閉まったことを確認すると、デスクワークで
座っていた椅子からラルフ博士が立ち上がり前に出てくる。










「お待ちしてましたよ中尉。どうぞ、お掛け下さい」


「どうも」








私は帽子を取り、ソファーに腰掛ける。
そして、向かい合うように博士も腰を下ろす。







「凄い監視の数ですね。余程、貴方に解毒剤を造らせたくないのですね、軍は」


「えぇ。動くたびに扉に居る監視員達が付いてくるから少し困ってるんです」


「私が余計な事を口走ったばかりに・・・申し訳ない」


「いいんですよ。私は全然構いませんから」








博士本人が人は良いのだが、やはり危険な薬を作り出した張本人。

どうしても、その部分だけは許したくない感情が私には少しあった。







「ところで、さんは?」


「あぁ、そうでしたね。前もお電話で話しましたが、あれから何ら変わりはありません。
むしろ、少し・・・媚薬の効力が強まってきたのかと思います」


「えっ!?・・・・・・つ、付かぬ事をお伺いしますが、もしかして」


「えぇ、してますよ。彼女と」








あっさりと答えた私に、博士は驚いた顔というか唖然としていた。







「あっ、ぁのっ・・・そのっ・・・つ、つまり・・・ちゅ、中尉は彼女を安全を守るために休暇を」



「取りましたよ。ですが、大切なをベッドに縛り付け、放置するなんて私には出来ません。
じゃあどうするかと考えた結果彼女との性行為に走ったんです」



「えぇえ!?つ、つまり・・・薬が発症・・・した、ら」



「所構わず、彼女とセッ」



「あー!!もういいです、分かりましたからその先は仰らなくて結構です!!」










その先を聞きたくなかったのか、博士は自ら謝罪した。

薬の話で、私はようやく自分の目的を思い出した。
こんなところにとの惚気話をしに来たわけじゃない。


私には私の目的があってやってきたのだから。






「博士、私からも1つ聞きたいことが」


「ああ、そうでしたね。どうぞ、私のお答えできる範囲であれば」


「薬の効力というものは風邪のように、他人にも感染するのでしょうか?」








私がこの質問をすると、博士は少し考え込んで口を開いた。







「そうですね。ラットで実験をした時はそのような例はなかったので。
それに中尉の体が退化してないのが、何よりの証拠ですが・・・また、どうして?」


「いえ、此処の所・・・回数が増えて」


「は?」








私の返答に、博士はそれはもう凄い声を上げ驚いた。
そして、顔が徐々に青くなり冷や汗も見られる。









「あっ、あああ・・・あのっ・・・大変失礼だとは思ってるんですが・・・1日、何回その・・・性行為を・・・?」


「最近は4回してようやく静まりますね。平均して、そうですね・・・3〜4回でしょうか」


「4回も!?」


「えぇ。4回も、って・・・たった4回ですよ。そんなに驚くことではないはずです」


「そそそそそ・・・そう、ですよねぇ〜・・・驚きすぎですよね、私。アハ、アハハハハハ」








あまりの事で、博士は慌てるがどうにか心を落ち着ける。









「まぁ、大元の薬自体にもそうですが、命には別状はないのでご安心下さい」


「そうですか。それを聞いて安心しました」


「何よりです。解毒剤のほうはもう少しお待ち下さい、今日は突然のお呼びたて感謝します」


「いえ、こちらこそ」






博士と握手を交わし、私は立ち上がり帽子を被る。







「この後はお帰りに?」


「いや、今から本部に寄ってから帰ります。何せ、部下達に仕事を押し付けているようなものですから」


「そうですか。お気をつけて」


「えぇ。博士も頑張って薬のほうをよろしくお願いします」


「はい」








そう言って、私は部屋を出て研究所を去った。

車を再び走らせ、私はイリノイ州にある軍の基地へと向かった。

















「カタギリ、久しいな」


「グラハム!?どうしたの、急に」







研究室には、相変わらずカタギリが居た。






「まぁ、ちょっと博士と話すことがあってな」


「それで、そんなラフな格好なのかい?」






カタギリはクスクスと笑いながら、私の格好を指差す。

私は帽子を取った。







「これは仕方ないんだ。ちょっと事情でな。私もこんな格好をしたのは久々だ」


「そうなんだ。・・・で、何しに来たの?
他の部下達には僕から色々指示してるから大丈夫だって、この前メールしただろ」


「分かっている」





カタギリは資料をチェックしながら私に問いかける。






「これと言った用で来たんじゃない」


「だったら何しに来たの?用がないなら、早く帰ればいいのに」




私は近くにあるソファーに寝転がる。






「仮眠を取りに来た」


「家で寝てないの?」


「寝てるんだが・・・寝てないに等しい」


「何それ?」


「理性が保てないんだ、家に居ると」


「成る程ね」





言葉の羅列でカタギリは把握したのか
それ以上の詮索の言葉を投げてくることはなかった。

私は帽子を顔に乗せ、眠りに就くのだった。






目を閉じて、暗いくらい闇の中に漂う。






その中で微かに聞こえてくる、の声。










『グラハム・・・グラハム、助けて・・・』









助けを求める、幼い彼女の声が聞こえてくる。

熱を帯びた声に心臓が酷く高鳴っていく。







『お願い・・・っ、もぅ・・・我慢、できないよぉ・・・っ』












「・・・・!!」



「どうしたの、グラハム?」





私は突然目を覚まし起き上がった。

あまりの事で、カタギリは驚く。






「私は何時間寝てた?」


「そうだね。ざっと、3時間くらいかな。急に起き上がるからビックリしたよ」


「帰る。・・・何だか嫌な予感がしてきた」


「まさか、さんの身に何か?」


「分からないが、嫌な予感がする。すまないな、仮眠に使って」


「いいよ。気をつけてね」


「あぁ」







そう言って、私は急いで帽子を被り
研究室を出てすぐさまの待つマンションに戻るのだった。






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