-----ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
「・・・」
-----ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
「・・・」
-----ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
「ゴメンよ、」
君をこんな風にした、私を・・・許してくれ
反響してくる私の口から零れる君の名前
どうしてだろう・・・こんなにも君の名前が美しいなんて・・・改めておもった。
「え?・・・出かけるって・・・アンナ」
「たまの気晴らしにいいじゃない・・・。」
「で、でもぉ・・・」
グラハムと一緒に暮らし始めて1年が経った。
突然の養家であり、養家の実子であるアンナが
出かけようと話しを持ち込んできた。
「グラハムが・・・許してくれるか・・・」
「大丈夫だって、エーカーさんも許してくれるよ〜外出くらい」
「だ、だけど・・・いいのかな」
「じゃあ私も一緒に頼んでみるから・・・」
『ただいま』
「お、丁度帰ってきたことだし・・・ね、・・・いこーよー」
「ん〜・・・頼んではみるよ・・・とりあえず」
アンナの申し出に、は断りきれず
タイミングよく帰宅してきたグラハムに、は渋々先ほどの話しをしてみるのだった。
「え?・・・い、いいの!」
「当たり前じゃないか・・・たまの気晴らし、行っておいで。」
ダメだという拒否の言葉が帰ってくるかと思いきや
グラハムはケロッとした表情で、に言った。
そして、グラハムはの頭を優しく撫でる。
「ホントに、いいの?」
「私が何処にも連れて行ってあげれないからな・・・楽しんでおいで」
「ありがとう、グラハム・・・大好き!!」
「っと・・・おやおや。」
あまりの嬉しさに、はアンナが其処に居るにも関わらず
グラハムに抱きついた。
だが、はそれに気付いていないようで
グラハムはそんな彼女を見て笑みを浮かべながら、頭を優しく撫でた。
「アンナさん・・・・のことお願いします」
「もちろんですよ。悪い虫が近づいたときは、いい脅し口調がありますからおまかせください」
「アハハハ・・・頼みます。」
の頼みなら、何でも聞いてあげたい
彼女の喜ぶことなら、何でもしてあげたい
それを想って・・・
「じゃあ、行ってくるね!グラハム」
「あぁ、行っておいで。」
「お土産何がいい?お菓子?洋服?時計?うーん、何がいいかな?」
「いいよ、そんな事気にせず・・・楽しんでおいで。」
「うん!」
「遅くなるようだったら電話してくれ、迎えに行くから」
「分かった・・・じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
そう、別れ際に交わした会話
彼女は、親友と出かけ
私は、軍へと出勤した。
だが、この時の会話が・・・まさか、絶望の淵に叩き落される前触れで
しばらく交わすことの出来ない・・・最後の会話だったなんて
誰も知らなかった
きっと、知っていたのは・・・
--------昼過ぎ
「グラハム・・・今日の演習よかったよ・・・いいデータが取れた」
「本当か・・・フラッグも量産化されることが決まって、私としても光栄さ。」
「ところで、どうしたんだい・・・なんだか今日は浮かれているようだけど」
午前は、ユニオンフラッグの演習をしていた。
軍事力を上げる為、私はフラッグの性能をカタギリとともに研究をしていた。
そして、丁度時計が12時の時間を表示していた頃だった。
私はパイロットスーツに身を纏い、着替えに向かう途中カタギリに止められた。
「そう、見えるか?」
「もうオーラが出てる出てる。・・・彼女と何か良い事でもあったのかな?」
「いや・・・まぁ・・・」
照れ隠しをするように、私は言葉を押え込み
惚気が出ないよう、慎重に言葉を放つ。
「実は・・・彼女が外出したいと言ってな・・・」
「へぇ・・・それで」
「だが、私は今こうやって忙しいだろ?・・・だから、彼女の養家の実子が
彼女をショッピングに誘ったんだ。でも、彼女・・・私が外出をしてはいけないと
言うんじゃないかと思って心配したらしい」
「フフフ・・・可愛いね。」
「あぁ。・・・本当に、可愛らしい子さ・・・」
『行ってきていいよ』と答えた時の驚いた表情。
嬉しさのあまり、私に抱き付いてくる仕草。
そして、私の事を考えてお土産をあれやこれやという愛らしさ。
「たまらなく・・・幸せだ」
「口元緩んでるよ、グラハム。」
「緩まずにいられるかコレが。・・・着替えてくる、その後昼食でも取ろう」
「あぁ。」
そう言って、私はパイロットスーツから軍服に着替えに行くのだった。
-------5分後
「カタギリ・・・すまない、待たせたな。」
「あぁ、いいよ。・・・それより、何か騒がしいみたいだよ・・・」
「ん?」
着替えを終え、カタギリの待つ研究室に戻ると
彼はテレビをつけていた。
そして、テレビの画面に見入る
『只今・・・テキサス州のショッピング街にて、途轍もない爆音が聞こえ
周辺に居た買い物客を襲いました。現場は一時騒然として・・・重軽傷を負った人もおり
一部では意識不明の重体者も続出しております・・・』
「何だ、コレ?」
「分かんない・・・でも、何かテロの可能性が高いかも」
「制裁は我々軍が加えるが、それが分かるまではFBIの仕事だ・・・しばらく出る幕は無いよ」
「まぁ、そうだね。」
そう言って私達は、遅い昼食に向かおうとしていた。
--------PRRRRR・・・・!!!!
すると、突然研究室の電話が鳴り響き
主であるカタギリが電話を取る。
「はい。・・・え?・・・あぁ、ちょっと待って・・・グラハム」
「ん?私か?」
すると、どうやら私の電話のようだ。
カタギリから受話器を受け取り、耳に当てる。
「私だ・・・グラハムだ。何用かな?」
『あ、外線から急ぎの電話で・・・すぐお繋ぎします』
通信部から、外からの電話が繋がってるという連絡らしい。
まさか、か?・・・確かに事故現場は此処から少し離れた場所にあるからな。
『・・ッ・・・エーカーさん!!エーカーさんですよね!!』
「っ、・・・どうしたんですか?」
かと思っていたが、繋がったのはどうやらアンナさんのようだ。
しかも、かなり息が切れている。
『あの・・・ゴメンなさい、私が付いていながら・・・こんなことにッ・・・』
「落ち着いてください・・・あの、何があったんですか?」
『が・・・が・・・!!』
「・・・彼女がどうかしたんですか・・・?」
『-----瓦礫の下敷きになって・・・意識不明の重体で・・・病院に・・・ッ・・・・----』
なん、だと
「・・・そ、そんな・・・」
『ごめんなさい・・・ごめんなさい、私が・・・私がもっと早く・・・あの子の元に戻っていれば・・・ゴメンなさい・・・っ』
私は受話器を力なく、落とした。
あぁ、どうして・・・神様はこんなにも酷いことをするのだろうか
「・・・・・・・・・・」
テレビからは、今だ騒がしい光景が・・・映っていた。
コンニチワ、絶望。サヨナラ、幸せ。
(これを誰か・・・夢だと言ってくれ)