数週間後、ようやくはICUから
一般病棟に場所を移された。

意識は戻らないものの、至って身体には
何の影響もないとの理由だそうだ。

私としては内心ICUから抜けたのはよかったものの
未だ戻らない意識に、私はまだ絶望の淵に立っている。











「エーカー中尉」
「やあ、グラハム」







すると、突然背後から聞き慣れた声が聞こえ、私は振り返る。

其処には・・・・・・。







「ジャック・・・それに、カタギリ」






大きな花束を持ってやってきたジャックと
その隣にはカタギリが立っていた。







さん、ICUから出れたそうじゃない」

「あぁ。・・・まだ、意識は戻っていないがな」

「あの・・・中尉、コレ・・・お嬢さんの病室に。・・・僕やハワードさん、ダリルさんからです」

「ジャック。・・・カタギリ、喋ったな」

「君の落ち込みように、彼らが心配してたんだ・・・喋らずには居られないよ」

「僕たちも心配してるんです。中尉、このところ元気ないし・・・それに、カタギリ技術顧問から
お話を聞いて・・・中尉にとってお嬢さんは、とても大切な人なんだと」

「ジャック」





私は、そっと花束を受け取った。





「中尉?」

「ありがとう・・・病室に飾らせてもらうよ。目を覚ましたら、きっとはびっくりするだろうな」

「・・・・・・はい!」







鮮やかな花束を見て、私はまた涙が溢れそうになった。


去年の事、私とは彼女の養子先の花屋で出会った。



其処から・・・私は彼女に一目ぼれをし、恋に落ちた。




そういえば、私は初めてから貰った花束も・・・こんなに大きなものだったな。
抱えきれないほどの、大きなおおきな・・・花束だった。





















「こんにちわ」
「あら、中尉さん」
「お久しぶりです・・・ご無沙汰してます」




とある日。
私は、の養家にやって来た。

アンナさんは生憎との入院している病院に行き
店に居たのは、を引き取った養母だった。





「あの、何か?」
「今日は・・・謝りに、来ました」
「え?・・・あ、・・・と、とにかく中へどうぞ」





私の発言に、養母は慌てて
店を閉め、私を店の置く・・・自宅のほうへと案内した。










「それで、あの・・・謝りに来たと言うのは・・・」





椅子に座り、目の前にブラックコーヒーが
カップの中ユラユラと揺れていた。

私の目の前に、の養父と養母・・・二人が並んで
心配そうな面持ちで私を見ていた。






の、事です」

「・・・・・・災難、としか言えないです。仕方のないことなんですよ中尉さん」
「自爆テロと報道されたとき、私たち夫婦も・・・やりきれない思いでした」




やはり、この2人も私と同じ思いだった。




「全て、私の責任です。・・・あの子を行かせてしまった・・・全て、私がいけないんです」

「違います!中尉さんは、何も・・・っ」

「アンナさんも、きっとご自分を酷く責めたでしょう?でも、それを止めれなかった私がいけないんです」

「中尉さん!貴方は・・・・・・悪くない。それだというのに、何故其処までしてご自分を責めになるんですか?」






養父の言葉に、私は揺れるコーヒーを見た。




「今、世界の現状は悪化していくばかりです・・・人々は争う事をやめようとしない。
争いで悲しみや苦しみ、憎しみが生まれ・・・・・結局、このような事態が起こってしまいました。
未然に防げる方法なんて、いくらでもあったはずなのに・・・防ぎきれず、私は・・・を・・・」


















「 眠 り に 就 か せ て し ま い ま し た 」













自分でも歯がゆいと思っている。

いくらでもこの時代、何らかの方法を使えば
自爆テロだろうが、なんだろうが、防げてはずだ。

それだというのに、見てみぬ振りをして
愛しい人をこのような形にしてしまったのだ。





「去年・・・私は彼女に、に約束しました。・・・ずっと側に居ると、守ってあげる・・・そう、誓いました。
それだというのに・・・私ときたら・・・あの子を、こんな風にしてしまい・・・・・・っ」

「中尉さん・・・もう、謝らないでください」

「いいえ、謝らなければ・・・私の気が済まないんです。・・・今まで彼女を慈しみ、育ててきた
アナタ方2人は・・・の親同然・・・本当なら、私の顔すら・・・見たくないはずでしょう。でも・・・でも・・・」













































は・・・私にとって・・・とても、大切な子なんです。
だから、どうか・・・私から、あの子を・・・引き離さないでほしいんです」

「中尉さん」







きっと、此処を訪れた瞬間
酷いまでの罵声を浴びせられ、此処を追い出され
を返してくれと・・・私から引き離されるのではないかと
内心、怯えていた。

私がに出逢うまで
彼女を育て、愛してきたのは彼らなのだから。





「私を非難するのであれば、してもらっても構いません。だけど、私からを・・・引き離さないでほしいんです。
何を言われても構わないと私自身その覚悟で此処に来ました。しかし、私にとって
はとても大切な人であり、かけがえのない存在です。」




あの子が居なければ、私はきっと今頃・・・青々とした空の上。
天国と呼ばれる場所へ行っていたのかもしれない。

楽になれる、そう自分自身に言い聞かせていた。

無駄に命を粗末にし、棒に振ろうとしていた。


そんなことをしてはダメだと教えてくれたのは、だ。







「後ろ指差されても構いません。・・・だから、どうか・・・どうか・・・っ!」

「分かっていますよ、中尉さん」

「え?」







すると、本当に
分かりきったような表情を夫婦は浮かべていた。







「貴方は、の心の氷を溶かしてくれた人だ。そんな人から私たちの意見だけで
引き離してしまえば・・・貴方もそうですが、本人も貴方と同じように”引き離さないでほしい“と
私たちに懇願してきたに違いないでしょう」

「今回の一件については、私たちも貴方も予想だにしない事でした・・・もちろん、誘ったアンナもです。
ですから、貴方が全部背負い込まなくてもいいんです。止められなかったものは仕方ありません。
それも、受け入れなければいけない運命なのですから」





2人は、本当に優しい表情を浮かべ私に言った。

瞳から涙が溢れそうになる。








「ありがとうございます。中尉さんは、こんなにもの事・・・大切に想ってくださって」
「あの子の親代わりですが・・・私たちからお礼を言います。これからも、をどうか・・・大切にしてやってください」


「・・・・・・はぃ」





君は、こんなにも優しい家庭に育ててもらっていたんだね。

改めて、の優しさに触れたような気がした。


そう思っただけで、瞳から涙が溢れ思わず、その瞳を手で覆い隠した。




温かくて、優しい・・・の気持ちが、私に流れ込んでいく。











---------PRRRRR・・・・!!







突然、自宅の電話が鳴り響き
養母がそれを受ける。





「はい、もしもし?・・・アンナ、どうしたの?」





どうやら、電話の相手はアンナさんらしい。
だが、次の瞬間・・・・・・。







「え!?・・・・・そ、それは・・・ホントなの!?・・・うん、うん・・・丁度此処にいらっしゃるから
すぐ、すぐに向かわせるわね」



驚いたような表情と声だ。
一体、電話の向こうのアンナさんは何を話していたのだろう?

電話を切ると、養母は私に言う。



「中尉さん、すぐ・・・すぐ病院に・・・っ」

「え?」

が・・・が・・・・・・」













































「目を覚ましたので・・・すぐに、病院に向かってあげてください!!」







が・・・目を、覚ました・・・。

その言葉を聞いた瞬間、すぐさま花屋を出て彼女の居る病院へと
急いで向かった。








騒がしい1階の受付を走りぬけ、エレベーターに急いで乗り込む。

生憎と他の患者や看護士、そして見舞い客なども
乗っておらず、私だけだった。

私は焦る気持ちと、逢いたい気持ちをの入院している
階数の番号を連続的に押した。


エレベーターは動き、徐々に上へ上へと私を彼女の居る階へと運んでいく。







「(早く・・・早く・・・着いてくれ・・・)」





数週間と目を覚まさなかった彼女が
ようやく目を覚ましてくれた。

やっと、やっと・・・君は、私を・・・私の名前を呼んでくれる。






『 グ ラ ハ ム 』






優しくて可愛らしい、君の声が。








エレベーターが目的の階に到着し、扉がゆっくりと開く。
だが、そのゆっくりも私としては今は遅い。

開く扉をすり抜けるように、出て
私は急いで彼女の元へと走った。






そして、ようやく
の病室の前に立つ。


息も絶え絶え・・・着ていたスーツは少々皺が出来ていた。
ネクタイも少し歪んでいるし、髪の毛も風を切ってきたおかげで乱れていた。


こんなみっともない格好、君に見せたら情けない。


私はとりあえず、身なりを整え
深呼吸をし・・・ドアを開けた。







「誰?」






ようやく、数週間ぶりに・・・君の顔が・・・君の声が・・・。









、私だよ」

「・・・・・・グラ、ハム?」



ベッドで体半分起き上がっていた彼女は不思議そうな顔をしていた。
そして、手をさし伸ばし・・・・・・・・・。








































「何処に居るの?・・・ねぇ、グラハム・・・何処なの?」







「え?」






絶望の淵から這い上がってこれたかと思ったら
目覚めたの言葉に私は
また、絶望の底へと叩き落されたのだった。

そう、まるで
イカロスの、蝋で似せた翼が太陽の熱で解かされ
もがく事も出来ず、無常にも海に落ちていくように。





これも、受け入れなければならない・・・運命なのか?





光が奪われた、太陽
(まさか・・・君の目に、私は映っていないのか?)


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