「網膜剥離(もうまくはくり)?」





目が覚めたの変化に私はすぐさま主治医の元へと赴き
診察をさせた結果、彼の口からこぼれたのを拾った。







「はい。多分、事故の衝撃で・・・網膜が引っ張られ、裂け目が出来て
硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分から水が出て、網膜が剥がれてしまったのではないかと」


「じゃあなぜ彼女は目が見えないんですか?」


「もしかしたら、剥がれた部分が網膜の中心部まで及んで視力が急激に低下したのだと思われます。
最悪これは、失明にまでいたる大変危険な状態ではあります」


「手術さえすれば治せますよね?」





いや、してもらはなくては困る。

そんな危険な状態のまま、放っておくわけがない。
何としてでも、の目に・・・光を、私の姿を映してあげなければ・・・・・・。









「はい。ですが」


「何か問題でも?」





すると、医師の表情が曇ってきた。












「医療技術ならアメリカは何処へ行っても、引けを劣りません。ですが・・・早々に、手術は出来ないんです」


「ま、待ってください!そんな危険な状態のまま彼女を放置しろというんですか?!」


「そうではありません。少し待っていただかないとこちらとしても困るんです。
順番待ちをしている患者さんはたくさんいらっしゃるんですから」


「・・・っ!」





確かにそうだ。

今にも死にそうな患者だっている。
今すぐにでも手術をしなければいけない患者もいる。

そんな人たちは何ヶ月、何年と待ってようやくその順番が回ってきているのだ。
その人たちを押しのけて・・・・・を助けてもらおうなんて。









「最善を尽くします。2ヶ月で、どうですか」


「2ヶ月・・・ですか」


「これでも早いほうです。本来ならもっと待っていただかなければならないのですが・・・失明ともなると
手術は網膜剥離の手術よりも厄介になってしまうので・・・2ヶ月、入院などで調節して行こうと考えてます」


「・・・そう、ですか。すいません」





私は自分の言ったことを医師に謝罪した。


のほかにも、病院は多くの患者を抱えている。
彼女だけじゃない・・・医師は多くの命を救っているのだ。







「余程、さんを大切になされているのですね」


「え?・・・はい」


「私たちも、なるべく失明にまで行かせないよう努力をします。ご安心ください」


「ありがとうございます」






そう言って私は医師との会話を終え、彼女が居る病室へと向かった。






























「グ、グラハム?・・・ど、何処?」

「此処だ」




病室に行くと、はアンナさんと話をしていたが
私が姿を現すとアンナさんは気を遣って、病室を出て行った。


相変わらずは私が何処に居るのか分からず
手探りで私を求める。

私は彼女の手を握り、そっとその手を頬へと付けた。






「此処に居る。分かるか?」


「うん。・・・これ、グラハムのほっぺ?」


「あぁ」





すると、ゆっくりとの手が動き髪の毛へと触れ
そっと撫でた。






「あっ、グラハムの髪の毛だ。柔らかくて気持ちいい」





「どうしたの、グラハム?・・・何だか、元気がないよ」







は私の声色で、瞬時に気づいた。



せっかく目が覚めたというのに、どうして君の目に私は映ってないんだ?

いや、映ってるはずなのに・・・此処に居るのに・・・どうして分からないんだ?




分かってる・・・何もかも・・・・・・――――。











「グラハム」

「ん?」



























「泣いてるの?」


「えっ」





が私の頬にそっと手を添える。

頬を零れる、涙のしずく。
それを弱々しく、震える手で拭ってくれるの手。






「泣かないで・・・・・・泣かないで、グラハム」


「泣いてないさ。君が目を覚まして嬉しいだけだ」


「嘘ばっかり。声が悲しそう」






私の声で、彼女は表情の一つが分かるようだった。

目が、視力が急激に落ちて私の姿が分からないはずなのに
は視覚以外の感覚で私のことを感じ取っていた。










「ごめんなさい。私がこんなふうになっちゃったから・・・グラハムに迷惑かけちゃって」


「そんなことないさ。君が目を覚ましてくれただけで、私は嬉しいよ」


「うん。私、早く良くなるから・・・だから、泣かないで」


「ああ」






そっと私はを抱きしめる。


少しの間だけ、君の目には私が映らないだろう。

きっとそれは何者にも分からない恐怖なのだろう。


だから、私が―――――。











「ん?」


「私が君の目になる。だから怖がらなくてもいい」


「グラハム」








私がこの子の光になって、目となろう。


必ず見える日が来るまで・・・この子の手を握り、離さず。










「大丈夫だよ。私が、私が側に居るから」



「グラハム・・・ありがとう」







君の世界に再び光が戻るまで、私は君の世界を守ろう。



君はひとりぼっちじゃない。

これはもう、2人だけの世界なんだ。





2人ぼっちの世界へ
(暗闇に取り残された君の側に私は向かう) inserted by FC2 system

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