俺は、今かなり困った状況に陥っている。








「んぅ・・・ふっ・・・グラ、ハムッ・・・はぅ・・・ン」

「甘い唇だな。食べてしまいたいくらいだよ」

「んン・・・も・・・ふぅ・・・ン・・・やぁ、んぅ」

「まだだ」






俺が敵対視している、軍のトップフラッグファイターグラハム・エーカーが
システム室で女とイチャついていた。

多分数分とキスだけを延々と続けているだろうと思われる
ねっとりとした甘い空気が流れていた。





「(何でこんな場面見なきゃいけねぇんだよ)」




俺は中に入るにも入れない状況になり
外で、奴らの行為が終わるまで待つしかなかった。


ていうか、何でこんなことになってんだ・・・・・?








それは、ジョシュアも知らない数時間前に遡る。













――――PRRRR・・・・!!





「もしもし?」


、私だ』


「あぁ、グラハム。どうしたの?」






突如、の携帯が鳴る。

は着信ボタンを押し、電話に出ると
相手は彼女の恋人であるグラハムからだった。






『実は、忘れ物をしてな。リビングの机の上に茶色の大きめの封筒があるだろう?』


「封筒?」






携帯を片手に、はリビングの机の上を捜す。
すると、新聞の下敷きになっていたA4サイズの封筒を見つけた。








「大きめってほどじゃないけど・・・A4サイズの封筒のこと?」


『あぁ、それだ。すまないが、基地まで持ってきてくれるか?私は今手が離せなくてな』


「え!?でも、行っていいの?私部外者だよ?」







はおそるおそるグラハムに言う。

だが、グラハムは笑いを含みながらに言った。







『私が受付に”今から妻が来るので通してくれ“とでも言っておくから安心しろ』


「誰が妻よ!恋人だけど妻じゃないわよ」


『そうなのか?私は妻だと思っているがな』


「あのね、持って行かないわよ書類。重要なんでしょ?」


『別に大して重要ではないんだが、必要なのは確かだ』





じゃあ重要なんじゃない、とは電話元のグラハムに言った。







「分かったわよ、持って行くから。その代わり受付には連絡しなくていいです」


『何故だ?』


「行ってからグラハムに繋いでもらうからいいよ。後10分したら出るから、出る時にまた連絡する」


『そうか、分かった。受付には”妻が来る“と伝えて』


「バカ!」








そう言って、は電話を切り
いそいそとグラハムが居る軍基地に向かうべく
準備を始めるのだった。







「うわぁ〜さすがユニオン中心のアメリカ軍基地ね。規模が大きい〜」







タクシーを拾って、は軍基地に着いた。

家を出る際にグラハムにメールをすると『分かった、待っている』と返信されてきた。


恋人がこんなところに居るのだから、
改めて自分は凄い人に引き取られたのだなぁと実感した。



門から軍施設の入り口までに数分かかるが、ようやく入り口に着き、受付を見つける。








「あの、すいません」


「ようこそ、アメリカ合衆国軍施設へ。どういったご用件でしょうか?」




受付にはと年があまり変わらないような女の子が2人
並ぶように座っていた。


用件を尋ねられ、は答えた。







「えっと・・・MS部隊MSWAD所属のグラハム・エーカー上級大尉に電話を繋いでもらえますか?」


「かしこまりました。ご親族か何かの方ですか?」






親族といわれ、は考え込んだ。


親族と言うか何と言うか恋人で、同棲している。
ましてや、は彼に引き取られた身。

しかも、グラハムは容姿などからして軍に居る女性達が放っておくわけがない。
此処で恋人と答えれば、絶対に白い目か何かで見られてしまう。



これをどう説明していいのやら、は困惑しつつも。








「えっと・・・と、とりあえず繋いでもらえますか?・・・本人から呼び出されたもので」


「はい、少々お待ちください」






受付嬢はにこやかにグラハムが居る場所に繋いだ。









「エーカー上級大尉、お客様です。えぇ、女性の方ですが・・・はい、分かりました」







すると、笑顔で受付嬢がに受話器を渡す。







「どうぞ、大尉がお話になりたいそうです」


「あ・・・ど、どうも。もしもし?」





受付嬢から受話器を受け取り、は自分の耳に当てる。





『ありがとう、わざわざすまないな』


「いや、別にいいけどね」


『だが、取りに行きたいんだがシステムの具合が少し悪くてな、部屋から動けそうにない』






グラハムの言葉で、は少し嫌な予感がした。





「つまり、来いと?」


『察しがいいな、。さすが、私の妻だ』


「違うって言ってるでしょ。いいけど、私道分からないし」


『それくらい知ってる。すまないがもう一度、受付の子に変わってくれないか?』


「うん」








は受付嬢に受話器を渡す。
すると彼女は受話器に耳を当て、グラハムと会話をし始めた。







「もしもし?えぇ、はい・・・はい、分かりました。そちらにお連れすればよろしいのですね?
はい、はい分かりました」






受付嬢は電話を置いて、席を立つ。






「では、システム室までご案内します」
「あ、はい」

「え〜いいなぁ、大尉の所に行けて」





すると、席を立った受付嬢の隣にいたもう一人の受付嬢が羨ましがる。





「仕事中でも、嬉しいものよ。大尉に会えるのですから」


「いいなぁ〜私も行きたい〜大尉に一目会えるのであれば」


「貴女は残りなさい。何かあったら携帯によろしく」


「はーい」


「では、ご案内します」
「(よかった恋人なんて言わなくて)あ、はい」







やはり、グラハムあの容姿だ。惹かれないほうがおかしい。

恋人などと口を滑らせた時点で多分軍内部の
女性からどんな怖い思いをさせられるか、は想像しただけでゾッとした。









『おぃ、アレ誰だ?』

『さぁ?でも、綺麗だな』

『きっと誰かの知り合いじゃないのか?』

『誰だよ?俺、声かけようかな〜?』

『抜け駆けかよ!!』





が通るたびに、男達が小声で話を始める。
彼女が通れば皆が振り返り、話を始める。







「どうぞ、乗ってください」


「ぁ、ありがとうございます」






ちょっと見せる笑顔でも、男達は見惚れていた。

動かしていた足を止めて、に見入る。


すると、が男達の視線に気づき、柔らかい笑顔を見せ
会釈程度ですませる。と、同時に乗っているエレベーターの扉が閉まった。













「はぁ〜あんなのが彼女だったらなぁ〜」

「どれだけ癒されて、幸せだろうな」

「でも、もし誰かの彼女だったら?」

「たとえば?」

「エーカー大尉とか?」

「あーダメダメ。軍に居る女達全員敵に回すことになるぞ、あり得ないって!」

「だよなぁ〜」








男達はそんな会話をしていたが
は正真正銘、軍のエース グラハム・エーカーという男の恋人である。





















「こちらです、どうぞ」
「すいません」






ようやく、システム室の前に着いた。
入り口から案内してくれた受付嬢が、扉に付いている呼び出し音を押す。








『はい』

「エーカー大尉、お客様をお連れしました」

『わかった、すぐに開ける』




呼び出し口からグラハムの声がし
閉じていた扉を開けるよう、システムが作動する。






「此処は、中からロックされているので中に居る人じゃないと開けられない仕組みになっているんですよ」

「へぇ〜」

「ですが、その点。この部屋専用のカードキーさえ持っていれば出入りは簡単なんです」

「それじゃあ、カードキーがあれば入れるんですね!」

「誰しも持ってるとは限られない。必ず、システムを管理している人たちの承諾が必要になるがな」

「エ、エーカー大尉!?」







すると、いつの間にか扉が開き
そこにはグラハムが笑みを浮かべながら立っていた。






「一般市民に軍の秘密をバラすものじゃないぞ」

「も、申し訳ありません」

「いくら私の知り合いだからといって、油断はするな。敵は何処に潜んでいるか分からないからな」

「は、はぃ」

「(骨抜きにされてる)」





グラハムは受付嬢に注意を促す。

受付嬢は突然のグラハムの登場と注意に対し、すっかり骨抜きにされていた。
つまり、言い表すと目がハートになるのと同じだ。








「まぁ、彼女を案内してくれたから今回は大目に見よう。・・・案内、ありがとう」

「は、はい・・・失礼します」







受付嬢は頬を赤く染めながら、自分の持ち場へと戻って行った。
はそんな彼女を見ながら「お気の毒に」と心の中で呟いた。







、入ってきてくれ。扉を閉める」

「あ、うん」





グラハムに言われ、は外から突如
コンピュータの多い部屋の中に入る。
彼女が入ったことを確認すると、グラハムは扉を閉めロックをかけた。










「ん?あぁ、はいはい」






グラハムは回転式の椅子に座ったまま、手を差し出していた。
は思い出したかのように、すぐさまグラハムの元へ駆け寄る。







「はい、書類」

「ありがとう」






から書類を貰うなり、中身を確認する。
数枚と綴られた書類を真剣な面持ちでグラハムは見ていた。

ようやく最後の1枚を見終えて、ため息をつき顔を上げて、を見た。






「助かった、わざわざありがとう」

「いいえ、お役に立てて光栄だわ」

「それにしても、大丈夫だったか?」

「何が?」






すると、突然グラハムが意味の分からないことをに問いかけた。
あまりのことでも訳が分からず首を傾げる。





「誰かに声をかけられたりしなかったかって聞いてるんだ」


「さっきの人が一緒だったから、別に。あ、でも何か私が通る度にヒソヒソと男の人達の話し声が多かったよ。
軍の男の人ってそういう人多いの?」


「いや、そういうわけじゃないが・・・そうか、分かった」






グラハムが分かったと言うが、には何が何だがさっぱりだった。






「じゃあ、書類も届けたし私帰るね」


「待った」


「えっ?キャッ!?」






が踵を返そうとした瞬間、腕をつかまれ
引力で、グラハムの目の前に立たされた。

彼は、椅子に座ったままを見上げていた。









「もう、何?」


「このまま帰したくないなぁと思って」


「私のお仕事は終わったの」


「まだ終わってないぞ?私の充電をしてから帰ってくれ」


「充電?何それ?」






グラハムは不適な笑みを浮かべてを見ていた。
あまりにもその笑みには何か嫌な予感が含まれており、は内心焦る。









「朝からずっと此処に缶詰だ、おかげで君のとの連絡が唯一の安らぎで」






すると、グラハムはの腕を更に引き顔を近づける。
あまりの近さには顔を赤く染める。





「グ、グラハム・・・顔、近い」


「君が此処に来るのを、心待ちにしたものだ。、キスだけだ・・・それ以上はしない」


「それ以上って・・・。ていうか、此処でそんなことしない!キスもダメ!バレたらどうすんの!!」


「バレたときはそのときだ。なぁ、いいじゃないか?キスをしたら、大人しく帰してやるから」


「何よその言い方。あからさまに、キスしないと帰さないぞって感じよね?」


「そのつもりだが?」


「はぁ〜貴方って人は。もぅ、キスだけだからね・・・それ以上したら、許さないから」


「分かってるさ」








の承諾を得た瞬間、グラハムは勢いよく
彼女の唇を自分の唇と重ねた。



最初は優しく、啄ばむように・・・・時々唇を噛んだり、舐め上げたり。


だが、徐々に口腔内に舌を侵入させ暴れまわる。
互いの唾液を交え、吐息が漏れ始める。









「ンぅ・・・ンン・・・ふっ・・・ん・・・あ・・・ふぅ」









息が上手く出来ず、はグラハムの胸を叩く。

すると、彼は大人しくの唇から離れたが今度は頬にキスをする。






「も、もぅ息、できないじゃない」

「すまない。それにしても、いい匂いがするな。シャワーを浴びてきたのか?」






から香るほのかな匂いにグラハムは気づく。





「え?あぁ、うん。電話出たときに、ちょうどお風呂から上がって髪の毛乾かしてたの」


「だから、髪がこんなに柔らかい手触りがして、君の体中から甘い香りがするんだな」


「ちょっと、やだっ・・・・くすぐったい」







グラハムはの髪を手櫛で梳くよう、それでいて
首筋を優しく撫でる。

はくすぐられ、笑みを浮かべる。







「あぁ、キスするだけじゃ足りないなやはり」


「ちょっと、自分で言ったでしょ?キスだけって、それ以上はしないって約束も自分で言ったでしょ」


「分かってる。今はキスで我慢する。さぁ、続きをしようか?」


「まだするの!?もういいでしょ!!」






はグラハムから体を突き放すと、グラハムは少しムスッとした顔をする。







「ぇえ?!ちょっと、何よそれ?」


「君は私が嫌いなのか?」


「違うわよ!!もう十分にしたでしょ!!」


「私はまだ十分じゃない」


「そ、それってグラハム基準で考えてない!?」


「当たり前だろ、私基準だ。私が満足するという基準で、君は承諾しただろう」


「聞いてないし!!」


「言ってないからな、当然だ」


「卑怯じゃない!!!軍人がそんな卑怯な手・・・っ」


「使ってもいいんだよ。自分が満足して、それを私のモノに出来るのであれば」






グラハムは笑いながら、相変わらずのヘリクツを並べた。


軍人はそんなものなのかと、は思ったが
彼に勝てないことくらい十分承知だった。

これ以上自分が反論したら、家に帰ったときが怖い。






「ゎ、分かったわよ。お好きにしてください、ただし!」

「キスだけだろ?分かった・・・私の好きにする」




の答えを聞いた途端、グラハムは満面の笑みを浮かべ
再び、の唇と自分の唇を重ねるのだった。







2人が甘い唇の交わし合いを続けてる最中。

ジョシュアがシステム室にフラッグの整備などを確認するために
カードキーを管理者から借り、其処に入り込んだのだったが
先客のグラハムとのイチャつきを目撃したのだった。



















「(いつまでしてんだ、あいつ等は)」






俺がシステム室に到着して約10分は経とうとしている。

しかし中では未だに2人はイチャついてる。
ていうか、アイツに女がいたとは知らなかった。

俺がアラスカに行く前には居なかった、はず。








「も・・・もぅ、ぃ・・・だ、ダメッ」


「後5分」


「っん・・・・・んン!」





「(5分もかよ!?)」






女がなにやら、ギブアップらしいが
グラハムの奴は全然らしい・・・むしろ、5分伸ばしてもその後また時間延ばすだろう。

それよりも来たのが、たまたま俺だったからよかったものの
女共が来たらゼッテェ、多分あの女が帰り白い目で見られるに違いない。

今でも十分に誰か来そうで怖い。

頼むから、早くどうにかしてくれ・・・むしろ頼むから、早く終わってくれ!!










「ふっ・・・ん・・・はぁ・・・ぁ」


「この続きは、家での楽しみとしてとっておこうか」




ようやく、終わったらしいが、楽しみを後に取っておくこと自体気味が悪い。

グラハムは女を離すと、女は顔を真っ赤にしてグラハムに言う。





「も〜〜、グラハムのバカ!知らない!!ご飯作ってあげない!!家出してやる!!!」


「ハハハ、家出は出来ないからやめておけ」


「もぅバカ!!!」







そう言って、女は入り口に向かってくる。
俺は陰に隠れて、女がエレベーターに乗り込むのを見た。

扉が閉まり、エレベーターが動き出し上へと上がっていく。


部屋にはグラハムだけが残っていた。
しかも当の本人、まだ嬉しそうに笑ってやがる。




気持ち悪い・・・胸くそ悪い・・・何なんだ一体・・・!!









「いつまでも、隠れてないで出てきたらどうだ、ジョシュア?」


「(げっ!?気づいてたのか?!)」






すると、奴は俺が隠れていたことを気づいて声をかけてきた。

俺はどうにか平然を装い、中へと入る。






「フン!別に隠れてなんかいないさ。たまたま来ただけだ」


「ほぉ。君が途中から覗き見していたことくらい、私にはお見通しだったのだがね」


「なっ?!てめぇ、気づいてやがって、ワザと俺を中に入れないようにしたな!!」


「当たり前だ。至福の時間を邪魔されては私が嫌だからな。君も趣味の悪いことをする、覗き見だなんて」







奴は、相当俺を怒らせたいらしい。
というか、覗き見なんて、誰がするかよ!

むしろ、たまたま来ただけなのに、てめぇが女とキスなんかしてるのが悪いんだろ!!

何て、言ってもやりたいし、殴りたいのに殴れねぇ。






「ん?どうした?何か言いたそうだな、言いたいことがあるならはっきり言え」


「あの女、お前の何なんだ?」





とりあえず、聞いてみた。
どーせ、恋人だろ?あーあ、軍中の女が聞いたら泣くぞ。





「私の妻だ」


「は?・・・妻ぁ?!」


「喋るなよ、ジョシュア。もし、これを口外した時は私がお前を撃ち落してやる。
いや、そのまま背後からお前の頭をぶち抜いてやるぞ。頭に風穴が出来てスッキリするな」








笑顔だ。
しかも、本気だこの男。

多分、軍の何人か・・・いやカタギリ技術顧問は知ってるはずだ。

後は、俺の後輩にあたるのジャック・ワトソンくらいだろうな。
アイツはグラハムに対しては犬なみに忠誠心強いから。

知ってる人間が限られている辺り、そんなに知られちゃまずいことなんだろうな。


待て。

喋れば多分俺はすぐにあの世逝き決定か!?
2階級特進どころか、自殺扱いにして揉み消すつもりだコイツ!!!


ジャックもこんな風にして脅したのか?
いや、アイツの場合コイツに対して犬同然だからな、言うことは聞く。




此処は、素直に喋らないほうがいい。

むしろ寿命はソコソコ伸びて長生きできるはず。






「何だ?」


「分かったよ、喋らねぇよ。つーかお前のことなんか喋りたくも無い」


「そうだな。お前はそういう奴だな」





同僚を脅す時点でお前は危険すぎる!!!
いくら階級が上だからって、言って良い事と悪い事があるぞ!!









「惚れるなよ?」


「あ?」


「私の妻にだ」


「惚れるかよ」









俺はこの時、コイツの大変で途轍もない秘密を握ってしまったと同時に
自分の命のタイムリミットもコイツに握られてしまったのだった



あーアメリカになんか戻ってくるんじゃなかった。

さっさとアラスカに帰りてぇよ、こんな事ならな。




機密秘密
(命を握られた、途轍もない重大秘密を知ったばかりに) inserted by FC2 system

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