「ジョシュアせんぱ〜い!」


「あ?ジャックか」




ある日年齢的には下で
ハイスクールでは後輩だったのだが、軍内部階級的には
上司であるジャックに俺は声をかけられ、足を止めた。






「んだ?」


「じ、実はコレなんですけどぉ」


「あ?書類?」



ジャックに止められ、目の前に出されたのは一通の封筒だ
奴の顔はニヤニヤと笑みを浮かべていた。






「どうしたんだ、コレが」


「いやね、実はこれエーカー大尉に渡すはずの書類だったんですが」


「は?」


「今日、大尉非番でいらしてないんですよ。ですから・・・うにゃぁあ!?!?」







俺は思いっきり、ジャックの両頬を抓りあげた。

ああ怒りを込めておもいっきり。






「おめぇは、この書類をアイツに届けろって言うのか?
あぁ?!


「いひゃい、いひゃいでふよ、ひぇんはい(痛い、痛いですよ、先輩)」


「俺がアイツのこと嫌いだって分かってんだろ!おめぇが行けばいいだろ!」





俺はようやく、ジャックの頬から手を離した
奴は手で頬を撫でて痛みを和らげていた。





「だ、だってぇ〜僕だって、今日予定があるんですよぉ〜これから大尉に頼まれた報告書作らなきゃいけないし」


「うっ?!」


「それから、カタギリ技術顧問とプロフェッサーから
カスタムフラッグの演習に付き合わなきゃいけないですし」


「なら、カタギリ技術顧問に渡せばいいだろ」


「コレ、今日中に大尉にお渡ししなきゃいけないんです。長官に言われたので」


「ダリルやハワードは?」


「2人とも見つかりません。ったく、僕よりも少し暇かと思ったのに、何処にもいないし」








口が悪いぞ。

まぁ俺も人のこと言えた義理じゃないがな。







「分かった、分かったよ。行けばいいんだろ!」


「ありがとうございます、先輩!!持つべきものは先輩ですね!!」


「ホラ寄越せ。ったく、この見返りは大きいからな」


「はーい!よろしくお願いします!!」






俺に封筒を渡して、そそくさとジャックは何処かへと走り去っていった。



一方の俺はというと、封筒を見てため息をつくのだった。


何で昼からの非番に、あのグラハムの顔を見なきゃいけないと思うと
俺は嫌でならなかった。













と、言うので俺はアイツの住んでいるマンションの、部屋の前に居る。

ジャックから渡された封筒を持って。







「何で、こうなるんだよ」







元はと言えばジャックが行くはずだったのに何故俺!?

しかも嫌いなグラハムに?!あー考えただけで嫌だ。


いいか渡して帰ればいいんだよ。そうだ!そうだよな!



そう思いながら俺は、インターフォンを押した。









――――ピンポーン・・・・・!














「はい、どちら様ですか?」


「!?・・・・・・あ、あのっ」







すると、其処にはこの間の・・・女。


出てきたのは、システム室でグラハムとイチャついてた女だった。

あまりの突然のことで俺は慌てる。








「あのぅ、何か?」

「あ、えっと・・・エーカー大尉はご在宅でしょうか?」

「すいません、今ちょっと買い物に出かけてるんですよ。
でも、もう少ししたら帰ってくるんで中に入ってお待ちください」

「ぃ、いや・・・・・・でもっ」







『今日中に大尉にお渡ししなきゃいけないんです。長官に言われたので』








渡さなきゃいけないよな、とりあえずは。

頼まれたものとは言え、流石に軍の重要秘密な書類なわけだし
一般人に渡す訳にはいかない。







「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」


「はい、どうぞ」






そう言って、女は優しく俺を中へと招き入れるのだった。











「コーヒーです」


「あ、お構いなく」


「いいんですよ、お客様なんですから」






女は俺にコーヒーを出して振舞った。



あの時はそんなに分からなかったが、今ならはっきり分かる。



何ていうか、綺麗な子だな。









「?」


「あ、いや・・・別に」






俺がジッと女を見ていると、不思議そうな顔をして見返したので
俺はあまりの事で目を逸らした。









「それにしても、遅いなぁグラハム。何処まで行ってるのかしら?」








女がグラハムと呼ぶくらいだから、歳が近いのだろうか?

いや、でもアイツよりかは若いはず・・・24?いやそれより下かもしれない。

しかし、何よりも気になるのは・・・・・・。








「あの」


「はい?」


「大尉とは、どういったご関係で?」








そう、関係だ。



アイツは「妻」って言ってたが、指輪が何処の指にも見当たらない。


なら、何なんだ一体?







「関係?恋人ですかね」


「じゃあ、奥様じゃ」


「え?誰が言ったんですか?」


「大尉・・・ご本人が」






俺がそう口走ると、女は驚いた顔になった。





「ちょっ、妻じゃないって何度言ったら分かるんだろ。もう、グラハムったら。
すいません、ヘンに誤解とかして」


「い、いえ・・・いいんですよ、別に。お気になさらないで」










妻じゃねぇんじゃん!!!








あのヤロー・・・ココまで俺を騙すとは。

いや、でも間違ってないのか?

妻ではないが、恋人ではあるということだよな。







「あの・・・いつから、同居を?」


「あーそれは、2年前から」


「へ、へぇ」






そんなに前から!?







軽く答えたけど、アイツ2年前からこの女と同棲してたのかよ!?

よく飽きない・・・というか、よく隠し通してきたな。







「あの、ご両親は心配なさらなかったのですか?」


「私、両親は14年前に他界しました」


「あ・・・す、すいません。軽率な発言でした」


「いえ、いいんですよ全然。もう、大分前のことなんで」








女は笑顔で答えた。


逞しく生きてきたんだな。
その逞しさに惹かれたのか、それとも優しさに惹かれたのか。
どちらにせよ、多分グラハムがこの女を引き取ったのは確実だな。










「あのぅ、それで」


「はい?」


「その、大尉と生活する前はどちらに?」


「ココから程なく離れたダウンタウンの花屋に」


「そこで」


「えぇ、グラハムに会いましたよ。彼はお客さんでしたけどね」


「まさかと思いますけど、毎日大尉は貴女のお店に」


「よく分かりますね、来てましたよ毎日」









ストーカーか!?






軍人が著名人等を付けるのは分かるが
一般人の店に毎日訪れるなんて、もうストーカーと呼ぶしかないだろう!!!







「一緒に居て、嫌になったりしませんか?」


「いえ、全然」






俺なら死んでもいい。
あんなヘンな奴と居るくらいなら、死んだほうがマシだ。






「嫌になるどころか、居て安心するんですよ」


「そう、なんですか?」


「えぇ、とても。いつも一人だったんですけど、彼と居るだけで安心するんですよ」






女の顔を見ると、何だか俺の心が和らいでいく。
あぁ、グラハムの奴、羨ましいことこの上ないぞ。

この女が軍に来た時は男共は、多分釘付けだったんだろうな。







「あの、お名前は?」


です。ごめんなさい、お名前お伺いするの忘れてました」


「いえ、いいんです。ぉ、私は、ジョシュアです」


「そう、ジョシュアさんですね。もぅ、遅いなぁ〜ちょっと電話して」

























「すまない、帰ったぞ」












すると、彼女が電話をかけようとした瞬間玄関先から、奴の・・・グラハムの声がした。
ようやく帰ってきたか。





「も〜遅い!!何処まで行ってたの!!」




彼女は少し怒りながら、玄関先へ走っていく
俺はチラッと玄関を覗き込んだ。











「すまない。ちょっと、遠くまで行っててな」


「何で?」


「君がいつも使っている香辛料がなかったから、わざわざ遠くの店まで行ってきた」


「そう、なんだ。わざわざありがとうね」


「行ってきたんだから、見返りくらいは欲しいな」


「え?・・・ちょっ、ンッ!?」















奴は何をしてる?



えぇ、玄関先でアイツは彼女にキスをしてるんだよ!!
この間のアレで、また見なきゃいけねぇんだよ!!



誰か、誰か教えてくれ!!











「ンッ、・・・ちょっ、グラハム!・・・お客さん、居るんだから!!」

「客?誰だ?」

「ジョ、ジョシュアさんって言う人」

「ジョシュア?まったく・・・こんな日に」







あぁ、まったくだよ。

俺も「こんな日に」だよ!!





別にお前らのイチャつきを見に来たわけじゃねぇさ!!







「分かったなら、早く行く。もう大分前からお待ちしてるんだから」

「はいはい」





唯一なのだろう、グラハムがこのように振舞うのは
軍ではコイツに頭を下げる者が多い。

なのに、家では一方的に彼女に勝てないアイツがいる。








、君は寝室に居るんだ」

「え?・・・ああ、うん」

「やましい事はするなよ」

「しないわよ、バカ!」







グラハムは耳打ちで彼女に別室に行くよう促した。

彼女はグラハムが買ってきた買い物袋を持って別室へと入っていくのだった。



そしてようやく、俺の目の前にグラハムが座る。
俺は預かった書類を渡す。








「ホラ」

「何だ、コレは?」

「長官からの書類だとよ。本来ならジャックが届けるはずだったらしいがアイツも忙しいから俺が代理で来た」









すると、グラハムは封筒に入った書類にゆっくりと目を通す。

数秒足らずで、見終え封筒に戻す。








「すまないな、ジョシュア。手間を掛けさせて」


「ケッ。別に好きでお前の所に来たわけじゃねぇよ。それよりも、よくも騙したな」


「何がだ?」


「彼女だ。妻じゃねぇって、お前」


だな、言ったのは。
まったくそのまま突き通すつもりだったのに










いい迷惑だよな!!




お前が突き通しても、彼女にとってはいい迷惑でしかならねぇよ!!!








「それに、お前彼女を拾ってきたらしいな」


「拾ってきた?フッ・・・言い方を変えてもらおうかジョシュア。引き取ってきたと」


「何だ、母親でも居るのか?両親は他界したって聞いたぞ」


「まったく赤の他人にベラベラと・・・養母がいるんだ」


「住み込みで働いていた店が養家なのか。成る程なぁ」


「ジョシュア、何処まで聞いたんだから」





すると、グラハムは少し警戒心むき出しの顔で俺を見ていた。

何だ?いきなり・・・空気が変わった?
冷気が・・・漂ってるぞ。







「ど、何処までって・・・別に深いところまで聞いてねぇよ」


「そうか、ならいい」







俺の返答に、グラハムは一気に漂わせた冷気をしまいこんだ。







「ったく、おめぇが気にすることか?」


「当たり前だ。他の男に取られたくないからな」


「へぇへぇ。じゃあ俺は帰る。午後は非番でお前の家で暇を潰すほど余裕じゃないんで」


「そうか。書類を届けてくれて感謝する。だから、さっさと出て行け」





多分、最後のが本心だ。
アイツは突然の俺を快くは迎えてない、そう最初っから!!


俺はソファーから立ち上がり、玄関へ向かう。








「ちょっと、グラハムコレ!って、あ・・・ジョシュアさん、もうお帰りになるんですか?」






すると、別室に居た彼女が出てきた。
突然の俺の退室に驚く。





「えぇ、用も済んだので」


「もう少しゆっくりしていってもいいのに」

!」
「うるさいわよ、バカハム」




彼女がそういうと、リビングに居るグラハムが彼女の名前を呼ぶ。
だが、彼女はそんなグラハムの言葉を一蹴した。







「いや、私もこの後用事があるので」


「そうですか、残念です。でもいつでもいらして下さいね」


「ぇ・・・えぇ」

「来なくていい」
「グラハム!」







お前に会いに来ねぇよ




そうだな、グラハムが居ないときに行けばこの子に会えるんだからな。






「分かったなら、帰れ」


「グラハムッ!?」






すると、怒った顔をしてグラハムが彼女を引き寄せ俺を追い出す。





「ケッ、お前なんかに誰が会いにくるか。、また今度な」


「え?・・・あ、はい」


「ジョシュア、軽々しくの名前を呼ぶな」


「俺の勝手だろ、じゃあな」





そう言ってドアを閉めた。


だが、閉めたあとこんな会話が聞こえてきた。








、あの男を二度と家の中には入れるんじゃない』

『どーしてよ、優しい人よジョシュアさんは』

『お前は何か見る目を間違えてるんじゃないか?』

『あら?貴方よりか・・・・・・ってそれよりも、グラハム、この野菜違うわよ』

『なっ!?だって、君はコレが良いとこの間』

『コレは代用品に使ったの。本物が欲しいの!もう大人なのに一人で買い物も出来ないの?』

『・・・・・・』

『いいです、私買ってくるから』

『いや、私も行く。外にはまだジョシュアが居るかもしれないからな』

『またそうやって』






俺はどうやら、本気で殺されるかもしれない。
アイツの彼女に惹かれてしまったばっかりに。






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(今後は背後に注意して行動したほうが良いのか?) inserted by FC2 system

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