「・・・・ふぅ」
「、どうした?」
「あ、グラハム」
20分もトイレに篭っていたが出てきた。
あまりにも長い時間だったことから
私は、心配し彼女に近づいた。
「トイレに入ってから、20分。いくら経っても出てこないから心配したぞ」
「ぅ、ぅん・・・・ご、ごめん」
「どうした、体調でも優れないのか?」
「そのね、あのぅ」
の顔は少し青白く
とても元気というほどの表情ではなかった。
そんな表情を見て、私の不安はますます増えるばかり。
「本当に大丈夫なのか?顔が真っ青だぞ」
「だ、大丈夫よ・・・・心配しないで」
私がそう言うとはニッコリと笑って私に見せた。
心配しないで、とそんな言葉を掛けられても
血の通っていないような青白い顔じゃ説得力に欠ける。
ふと、の右手がお腹の部分を押さえていたのに気付く。
その瞬間、自分の中で一つの確信が生まれ
私は思わず彼女の両肩を掴んだ。
「!」
「な、何!?」
「できたのか、子供が!!」
「は!?」
私の中の一つの確信。
それはつまり、彼女が「妊娠した」という事だった。
「ち、違う!!何勘違いしてるの!!」
「君の態度があからさまにおかしいだろ!!
さぁ、未来の旦那様に包み隠さず」
「だから違うって言ってるでしょ!!何が未来の旦那様よ!!」
「君が私の妻になるのも、私が君の夫になるのも近い未来そうなるんだよ。
さぁ、話してごらん。怒ったりしないから、むしろ大いに喜ぶから」
この態度。
きっと私を驚かせるためのお芝居か何かだろうと思っている。
尚更、のお腹の中には私たちの愛の結晶が居るに違いない。
男の子か女の子か、なんて分かる段階ではないけれど
今からでも子育てのことや何やらを考えなければならない。
未来設計は重要だ。
しかし、まずは
目の前のの言葉に耳を傾けるのが重要だろうと思い
私は目を輝かせながら、の返答を待った。
「その・・・・えっーと・・・・つまり女の子には、男の子には言えない・・・・大事な事が1ヶ月に1回あって」
「1ヶ月に1回大事な事?・・・・何だそれは?」
「グラハムには言えないことなの!」
「私には言えないこと、だと?、何なんだそれは?」
何のことだかさっぱりすぎて、頭が働かない。
すると、が目を泳がせながら・・・・―――――。
「だからね、私その、しばらく貴方と・・・・で、出来ない」
「は?」
で、きない?
その言葉に私の中で雷が落ちたような衝撃が走った。
つまり、彼女が言うには「夜の営みが出来ない」と言うことだ。
あまりに突然のの発言で私は焦る。
ああ大いに焦るところがコレは。
「ちょっと待ってくれ、できないって。そんなに、その日は・・・・私と愛しあうことよりも、大事なのか?」
「うん」
「2日に1回でも」
「ダメ」
目の前のは私の戸惑いながらの質問に即答で切り返してきた。
私に我慢しろと?
に対して我慢弱い私に敢えて、夜の営みを我慢しろと?
大いに無理な事だ。
断言してもいい。
彼女とできないなんて、私に死ねと言うのと一緒だ。
だが、しかし考えた。
私だって大人だ。
むしろ、よりも7つも歳を取っている。
数日で済む事を前提に考えたらそれくらいは、我慢出来る範囲だ。
私は自分の焦る気持ちを押し殺して
目の前のに話しかける。
「仕方ない。いつまで続くんだソレは?」
「多分1週間くらい。でも、もしかしたら2週間・・・・になるかも」
「2週間も!?」
焦る気持ちを押し殺していたはずだが
の思いがけない返答に、気持ちが全部オモテに出てきた。
3日くらいなら私だって我慢しきれる範囲。
そう、私の中での限界領域は「3日」だった。
しかし、目の前の彼女の口から出てきた言葉に
大いに焦る。
2週間。
普通に考えれば14日。
其処まで我慢する事を強いられて、もう私の精神的ダメージは計り知れない。
しかし、の体のことを考えると
私の気持ちだけで彼女に無理をさせてはいけない。
此処はもう、腹をくくるしか手段はない。
「・・・・分かった」
「え?」
「私も自粛しよう。君のためだ、体が一番大事だからな」
「グラハム・・・・ごめんね」
「いいさ。立ち話もなんだ・・・・コーヒーでも飲もうか」
「うん」
そう言いながら私はの肩を抱いて、リビングへと戻った。
考えれば、たったの2週間。
営みが出来ないにせよ
寝る時はを抱きしめて眠ればそれでいい。
キスだって許される範囲だろう。
愛しあう方法なんて、探せばいくらでも見つかる。
肌を重ねなければいい問題なのだから。
此処は耐えて、彼女にいいところを見せるチャンスでもある。
グラハム・エーカーよ。
己を律して、初心に帰り
仲睦まじくしばらくの間と過ごすのだ。
そう、心に言い聞かせながら自らを奮い立たせていた。
だが、私の決心とは裏腹に
次の日途轍もない事実を突きつけられた。
「・・・?」
起きたら、が居なかったのだ。
ベッドの横にも居ないし
ましてや、リビングにも彼女の姿がなかった。
いつもなら、早くに起きて
朝食の準備をして、笑顔で私を出迎えてくれるはずなのに。
ふと、リビングの机に1枚の置手紙を発見。
私はそれを拾い上げる。
-グラハムへ-
やっぱり、貴方の近くに居ると不安だし
貴方の辛い表情を見なきゃいけないので
しばらく家に戻ることにしました。
治まったら、必ず帰ってきますので心配しないで下さい。
勝手にしてゴメンね。 -より-
「・・・・はぁ〜」
私は思わず大きなため息をつき
ソファーに座り込んだ。
どうやら、は私が我慢している姿を見ていたくないらしい。
そして、そんな私を見たくないがため
彼女は養家へと行ってしまったのだ。
我慢するつもりだった。
我慢して、に良い所を見せるつもりだった。
それだというのに、彼女は私から敢えて離れていった。
離れてしまえば、私の抑制など意味を成さないというのに。
これから、私の彼女の居ない我慢な生活が始まる。
我慢出来るだろうか私に?
の側に居ない、このもどかしさや辛さに
私は彼女が戻ってくるまで耐えぬくことができるのだろうか?
「あー・・・・ダメだ」
初っ端から挫折寸前。
ノット・コントロール・ライフ
(私に我慢しろと?・・・・無理な事だ)