何も言わないで飛び出すよりも
何か残して、飛び出した方がいいかと思い
二日前、私はグラハムのマンションを出る際に手紙を置いてきた。
離れた途端、体が痛いほど悲鳴をあげていたのは言うまでもない。
「イタタタ」
「大丈夫?」
「アンナ。・・・ぅん、何とか」
養家に戻って2日が経った。
相変わらず、私は「アレ」のおかげでお腹を痛めており
以前自分が使っていた部屋から動けずに居た。
私を心配して、アンナが部屋へと様子を伺いに来た。
ベッドに横たわっている私の側にアンナは腰を下ろす。
「にしては珍しいわね、不順に来るの」
「2ヶ月も来てなかったんだもん。初めてだったし
心配してたら急に来ちゃうからさ・・・ホント、もう嫌になる。
トイレから20分出てこれなかったんだもん」
「それまで毎月来てたの?」
「うん。しかも全部3日で終わってたから何の心配もしてなかったんだけど」
「2日前が”2ヶ月の時を経てこんにちは“って感じか、薬持ってこようか?」
「うん、ありがとう」
じゃあ、持ってくるね、と言ってアンナは部屋を出て
鎮静剤を取りに行ってくれた。
一方の私は、ベッドに蹲る。
私は指を2本立て
ピースサインを作り目の前に出した。
「(グラハムに、逢わなくなって・・・2日)」
それは私がグラハムをマンションに残して
此処に戻ってきた日数をさしていた。
2日間。
グラハムの顔も見てないし、声も聞いていない。
今までこんなことなかったのだが
こうも距離が離れてしまうと、恋しいものなんて初めて知った。
「(お腹痛い)」
私は痛むお腹を押さえ込むように、ベッドの上で更に丸まる。
「(グラハムも、きっとこんな気持ちなのかな?)」
逢いたい気持ちが、募るばかり。
我慢弱く私の事になると余計落ち着きがなくなる人だ。
きっとストレスがたまってるに違いない。
逢いたいけれど
でも、今自分が彼に逢ってしまえばダメになりそうで怖い。
『』
逢ってしまえば、声を聞いてしまえば、触れてしまえば
何もかも取り払われて、求めてしまう。
彼に逢いたくてたまらない。
彼の声が聞きたくてたまらない。
彼に触れて欲しくてたまらない。
頭では分かっているけど、枷を外す訳にはいかない。
今はジッと耐えるしか方法が見つからない。
「(あー・・・早く終わらないかなぁ)」
早く終わって欲しい。
早くグラハムに逢いたいから終わって欲しい。
痛いのを我慢する代わりに、早く早く。
そう、心の中で体に伝えるのだった。
痛みよ、飛んでけ
(自分から離れたのに、逢いたくてたまらない)