イライラが積もりに積もって・・・本気でどうにかなりそうだった。
いや、もう私の思考回路はおかしくなっている。
が側に居ない。
ただ、それだけの理由で。
「駄目だ・・・イライラが治まらん」
「グ、グラハム。イライラするの分かるけど」
「ちゅ、中尉。落ち着きましょう、とりあえずコーヒーでも飲んで」
話しかけられるのだけでも鬱陶しい。
私は机を叩き、席を立ち――――――。
「もう我慢の限界だ!!!」
「ちょっ、声を抑えてグラハム!!」
「お、落ち着いてください中尉!!」
「これが落ち着けと言う態度か!!」
「まぁ君の態度見れば一目瞭然だよね」
「イライラ感マックス状態が嫌でも伝わってきます」
真昼の軍の食堂スペース。
私、カタギリ、ジャックの3人で其処にいたのだ。
だが、私はあまりにもストレスが溜まりに溜まりすぎて
苛立ちを周囲にまき散らしていた。
それが他の奴らにも分かるのか
私達の居る席には誰一人として近寄るものはいなかった。
私が苛立っているには理由がある。
がマンションを留守にして、既に6日が経った。
部屋に帰るのも自分に酷だと思い、フラフラして
気分をなんとか落ち着かせようと試みるも、のことを考えて苛立つ。
だから軍の施設に篭って仕事に没頭すれば、と考えたがやはり此処でも
私はのことを考えてしまい、余計苛立つ。
それを6日と繰り返して・・・今現在。
色々と苛立ちが限界領域を超え、そしての肌に触れたい衝動に駆られている。
そう、もう既に私自身の欲望が抑えきれなくなっていたのだ。
「ダメだ。考えれば考えるほどのことばかりだ。
気分が落ち着かない!!何故だ!?外をフラついても、此処に篭って仕事に明け暮れても
結局は何一つ変わらない。むしろ、の事ばっかり考える。
何をするにしても、の微笑みとか愛らしい顔とか、小鳥のような声とか。
あー、・・・何処に居るんだ。居る場所は分かっているけれど
私の、逢えないもどかしさと、滲み出てきそうな欲望をあの子は知っているのだろうか」
「エーカー中尉の”お嬢さん大好き“オーラは凄まじい一途さを感じます。
なんて言うか、目も塞ぎたくなるような」
「あれはね、ジャック。一途を通り越して、もはや執着の領域だよ。
ホント彼の友人やって大分経つけど、此処までさんに執着してるとは思ってなかった。
むしろ、目を塞いでいいと思う」
「駄目だ。とセッ、んぐっ!?」
「時間帯考えようねグラハム。皆いるし、お昼だよ」
「もう不謹慎極まりないですよ、中尉」
カタギリは私の口にホットドックを押しこみ、口を、言葉を塞いだ。
私はなんとか口に押し込まれたホットドックを食べきり
再び喋りだす。
「この溜まった思いを何処に吐き出せばいいって言うんだ!!」
「あのね、グラハム。まだ6日だよ・・・一週間も経ってないのに
1年も2年も逢わないような口振りしたら」
「バカモノ!いいかよく聞けカタギリ!私にとっては光だ、そして天使だ!
あの子に逢えないのは1年、2年の問題じゃない。10年、100年と数えても同じくらい辛いものなんだぞ!!
君には分からんだろうこの辛い気持ち。私にはがどれだけ重要なのかを君は知らないから
そんな事が言えるんだ」
「あのさ、これ以上君に暴走されても僕もジャックも困るし
むしろ、他の部下達にも支障が出るからさ・・・一旦落ち着い」
「早くが帰ってくればいいんだよ!なのに、ちっとも帰ってきやしない。
むしろそんな連絡一切私の携帯に入ってこない!!どうすればいい。あーどうしたらいいんだ!」
「グラハム、僕の話ガン無視だね」
「もう中尉、末期症状出すぎです」
カタギリの話は右から左に流して
もはや私は自分の、のことしか考えていなかった。
あの体に触れたい。
あの唇に触れたい。
あの声を聞きたい。
『グラハム、お帰りなさい』
あの体をめいっぱい抱きしめてあげたい。
あの甘い声を聞きたい。
『グラハム、あのね・・・大好き!』
早くあの体と・・・一つになりたい・・・。
『グラハム・・・愛してる』
考えれば、考えるほど本当に私の頭の中はのことばかり。
思わず足が小刻みに動いて、周囲に怒りを撒き散らす。
そうでもしなきゃ、もうやっていられない。
私はに逢いたくて、たまらないのだから。
「あー・・・・あー・・・・あー」
「あー、しか言わないのどうにかしてくれないかな、グラハム」
「もう何も考えたくないし、仕事が手につかん。むしろのことばっかり考えてしまう」
「君、職務怠慢だよ。さっきも言ったけど、落ち着こうよ」
「無理だ」
「即答ですか。やれやれ」
昼食後、私はカタギリの研究室に篭った。
私は、仕事が手に付かず其処のソファーに体を転ばせ
天井を見ていた。
天井をぼんやりと見ているも、の愛らしい笑顔が浮かび上がり
溜息がこぼれる。
「イライラするの勝手だけど、浮気しちゃ駄目からね」
「誰が浮気なんかするものか。以上の女性なんてこの世には居ない。
私にはが居ればいいんだ。それだけで私の世界は成り立つ」
「相変わらずの溺愛っぷりで。だけど、それ聞いて安心したよ。でもさ、グラハム」
「何だ?」
すると、カタギリがパソコンを
動かしていた手を止め、ソファーに寝転ぶ私を見た。
彼の視線を感じたのか、私は起き上がり彼と視線を合わせる。
「独り遊びに走るのだけはやめてくれよ。君もいい大人なんだから」
「独り遊び?・・・あぁ、アレの事か」
独り遊び。
遠回しに言ったようだが、つまり自慰行為のことを指している。
「あのな、私だって大人だ。それくらいの事は熟知している。
が居ないだけで、何故そんな地味で惨めな慰め方を私がしなきゃいけないんだ。
君は私をなんだと思っているんだ?そんな事、言われずともしないに決まっている」
「だといいんだけどね。君がさんとセックス出来ないとなって
これだけ周囲に苛立ちまき散らしてて、正直さんに対する欲望を何処で君が
吐き出すと言ったら大抵そっちに走ると思ったからね。僕はそれが心配だよ」
「ご心配なく、そんな惨めな慰め方は私のプライドに反する。はぁ、少し寝る。考えたら眠くなってきた」
「おや、珍しい。どーぞ、ご自由に」
「何かあったら起こしてくれ」
「はいはい」
のことばかり考えていると、イライラが募って
どうしてもモノや人に八つ当たりをしてしまう。
それを静めるにはやはり寝るに限る。
私は再びソファーに寝転がり、目を閉じた。
でも、やっぱり寝ても
夢の中でが私に微笑みかける姿を見ているのだった。
寝ても覚めても。
(大声で言っても構わない、私は君に逢いたいんだ!!)