-------次の日
「ただいま、帰りました」
「イリア、何処に行ってたんだ・・・心配したじゃないかっ」
私は昨日一日、お兄様のご実家に泊まった
お兄様は部屋に戻ると、心配そうな顔をして私に言い寄ってきた
「お、兄様」
「何の連絡もないから、心配したぞ。何処に居たんだ?」
「お兄様の・・・ご実家です」
私は力なく答えると、お兄様はため息をついた
怒られる・・・呆れられる、嫌われる・・そう思った瞬間
頭に優しく手が置かれた
「え?」
「無事でよかった。何の連絡もないから、どうしようかと思ったよ。今度から、一言言ってから行きなさい」
「・・・はぃ」
どうして、こんなにも優しいの?
貴方には、好きな人が居るのに・・・
私がパパの娘だから?
親族だから?
私は一度も、そんなこと思ってないのに
「お兄様・・・、さんは?」
「か?・・・あの子なら、ちょっと用事に出てすぐ戻ってくる、・・・が帰ってきたら
謝るんだぞ・・・お前が心配で、ずっと起きてたんだからな」
そう言って、お兄様はまた優しく頭を撫でた。
私も、もっと大人になりたい・・・大人になって、お兄様に・・・あんな風に愛されたい
「お兄様!」
「どうした?」
私はお兄様の服の裾を掴んで、動きを止めた
「私を・・・抱いてください!!」
「はぁ?!」
私の発言にお兄様は驚いた声をあげ、失笑した
「ちょっ・・・ちょっと待て。私はお前を抱く趣味はないし、ましてやお前は・・・」
「さんは抱けて、私は抱けないって言うんですの?」
「・・・・・・」
すると、お兄様は黙り込んだ
正論を言ってやった・・・さんは抱けて、私が抱けない理由なんて
あり得ないと思っている
「・・・分かった」
「え?・・・きゃぁっ!?」
私の視界が一気にがらりと変わった
そして、私は床に押し倒され、お兄様が覆いかぶさっていた。
「抱けばいいんだな、お前を」
「え?え?」
「抱いてほしいって言ったのはお前だぞ。なら、お望みどおりにしようか」
お兄様の目つきが変わり、私の心臓が早く鳴り響く
コレが・・・グラハムお兄様?
コレが・・・大人の人
どうしよう
コ ワ イ
心臓が張り裂けんばかりに、動く
怖くて・・・逃げたいのに、体が動かない
「・・・ひゃっ!?」
服の中に、お兄様の手が入ってくる・・・コレが大人の男の人
「・・・イリア・・・」
怖い・・・怖いよ・・・誰か、誰かっ・・・
-----ガチャッ
「ただいま〜・・・あのね、グラハム・・・って」
「ぁ、」
すると、タイミングがいい所に
さんが帰って来た。
突如彼女は、肩を震わせ・・・
「何やってんのよ、バカ!!」
------パシンッ!!
お兄様の頬を思いっきり引っ叩き
床に押し倒されていた私を抱きしめた。
「・・・いっ(痛い)」
「貴方、子供に何て事をしようとしてるのよ!!」
「ち、違う。イリアが抱けって言うから・・・ちょっとからかって」
「からかわないで!!もう、こんなに泣いてるのに・・・グラハム!!!」
「・・・すいませんでした・・・」
さんはお兄様を叱りつけ
すぐさま私の心配をした。
「大丈夫?」
「えっ・・・あ、・・・はぃ」
「でもね、イリアちゃんも悪いわ。・・・軽はずみな気持ちで抱いてなんか言っちゃダメよ」
「軽はずみな気持ちなんかじゃ・・・!」
「でも、自分の初めてはね・・・本当に好きな人とじゃないと、一生悔いることになるわ。」
さんは優しく私に語りかけるように言う
「確かに、イリアちゃんはグラハムのこと好きかもしれない。でも、今ので分かったでしょ?
好きが・・・違うって」
「・・・さん」
「イリアちゃんは、グラハムの事をお兄ちゃんとして好きなんだって事。大丈夫よ・・・
今焦らなくても、ちゃんと、自分の本気で好きになれる相手がきっと、イリアちゃんの目の前に現れるから。
焦らなくてもいいの・・・・ね。」
「・・・はぃ」
私はそう言って、さんに抱きついた。
さんは優しく私を受け止めて、頭を撫でてくれた。
心臓がゆっくりと動いて、・・・この人に抱きしめられただけで・・・安心する
お兄様のときのドキドキとは違う
ゆっくり、ゆっくり、心臓が・・・脈打っている
もしかして・・・コレが・・・
「貴方も反省しなさいよ、グラハム」
「さっきの一発で反省はするが・・・私はイリアを抱く趣味はない」
「嘘ばっかり・・・目が本気だったみたいじゃない」
「まさか。・・・私はいつもに本気だぞ!」
「はいはい。」
「それに・・・私がイリアを抱くなんて有り得ないからな」
「くどいわよ。」
「敢えて言わせてもらうがな・・・」
「イリアは男だぞ」
「へ?」
お兄様の一言で、さんはゆっくり私を体から離した
表情は鳩が豆鉄砲を食らったような・・・本当に驚いた顔だった
「イ、イリア・・・ちゃん?」
さんに、名前を呼ばれ・・・立ち上がり・・・
--------バサッ!!・・プチッ!
私・・・コホン、もとい俺はロングヘアーのウィッグと
制服のボタンを3つほど開けて、胸板を見せる
「改めて初めまして、イリア・エーカー・・・生物学上男ってことになってます」
「なってます。じゃなくて、なってるんだよ」
「ええぇぇえ?!?!・・・う、そぉ〜」
「あぁあ、!?」
「さん!?」
俺の本当の正体を知ったのか、さんはそのまま気を失った
やっぱり、最初に全部言っておくべきだった・・・かな?
嵐は、ただの風に過ぎなかった
(見事に化けたもんだ!・・・さて、アナタは分かっていましたか?それとも騙されましたか?)