「ほら、ちゃんと挨拶するんだ」
「はーい。」






グラハムに着替えを準備され
イリアは渋々、男物の服に着替え

いまだに目を丸くしてイリアを見ている
の前に立った







「驚きでしょう、さん。・・・初めまして、イリア・エーカーです」
「驚くも何も・・・グラハムは知ってたの?」
「当たり前だろ、なにせ従弟だからな。」
「でも、イリアちゃん・・・じゃなくて、イリアくんは、女の子の格好なんか・・・」








が疑問を投げかけると、グラハムは頭を掻く
どうやら、彼の口からは喋りたくないことらしい。


その様子を見たのか、イリアは大きく深呼吸をして、に答えを出す









「さっきも言いました。お兄様は俺の憧れだって・・・だから、俺が女の格好をすれば
きっと振り向いてくれる・・・そう思って、口調も、格好も、女になりきろうとしてたんです。」

「だから。」

「えぇ。でも、さっきのでもう懲りました・・・憧れと、好きは違うんだって・・・さん、貴女のお陰で
俺・・・目が覚めました。」

「そう。でも、もう2度あんなこと言っちゃダメよ・・・グラハムのことだから男にも見境なく
襲い掛かるのかと思っちゃったじゃない」

「頼む、・・・そんな誤解だけは断じてしないでくれ・・・私は君一筋だから」

「はいはい。」









はニコニコしながらグラハムの言葉をスルーした。
グラハムは凹む中、は微笑みながらイリアを見ていた。










「あの・・・何か?」

「ん?・・・いやね、さっきまで女の子だった貴方が、本当は男の子だっていうのに驚いたけど
私としては、どっちもイリアくんはイリアくんだし・・・ありのままでいいんじゃないかしら。」

・・・さん」

「大丈夫よ。イリアくん、何たってエーカー家の血を継いでるんでしょ?カッコイイ人になるわよ!
うん、グラハムも(中身は変人だけど)カッコいいことには変わりはないから」

「ちょっと待ってくれ、・・・何かボソボソっとなにやら至らないことが聞こえたんだが!?」

「ん?気のせい・・・気にしちゃダメよ、グラハム。子供じゃないんだから」

「(絶対何か言った)・・・と、言うことだ・・・イリア、もうすぐ君の父上が迎えに来るから準備しなさい」

「じゃあ、もう着替えますね・・・ズボンよりもやっぱりスカートがいいです」









そう言って、イリアはいそいそと・・・女の子の格好へと戻るべく
荷物を置いた部屋へと着替えに走るのだった。











・・・ゴメン」
「どうしたの、急に?」






イリアが居なくなったリビングで
グラハムとは2人っきりになる
すると、突然グラハムがに謝罪をした。









「始めから、君にイリアの・・・」
「男の子だって事?」
「あぁ・・・話しておけばよかったのに、なんか・・・すまない。」









グラハムは少しシュンとした顔で
に謝った。
すると、はそんなグラハムの頬に優しく触れた。








「別に怒ったりしてないじゃない、どうして貴方が悲しそうな顔をするのよ」

「でも・・・君を騙したようで・・・」

「怒ったりなんかしてないわよ。・・・ちょっと驚いたけど、びっくり箱を開けた感じで楽しかったわ」



「ね。・・・ホラ、笑って・・・もうすぐ貴方の従弟が帰っちゃうんだから、笑顔で見送りましょう」

「あぁ。」






の言葉に、グラハムは笑顔になり
彼女を抱きしめた。

そんなグラハムの背中にも腕を回し、抱き返した























「お2人とも、イチャつくのでしたら私が居なくなってからにしていただきませんか?」




「イリア!?」
「もう着替えたの!?」



「はい、もちろんですわ。」






いいムードに水を差すように
イリアがスカート姿の女の子の姿でやってきた

あまりに突然のことで、気が緩んだのか
グラハムとはイリアの存在に気づかずにいたのだった











「まったく、私が帰るからと言っても・・・まだ私がこのお家に居ることを忘れられては困りますわ。」
「ご、ゴメンね・・・イリアちゃん」
「あー悪かったよ。」






2人が謝ると、イリアはため息をつき




「ま、いいですわ・・・お姉様に免じて許してあげますわ」

「え?・・・お、お姉様?」

「!?・・・イ、イリア・・・おまっ・・・」














-----ピンポーン!!












すると、タイミングがいいところに
チャイムが鳴る。





「あ!お父様ですわ!!・・・私開けてきますわね!!」

「あ、あぁ・・・頼む」






イリアの父だと分かり、イリアはすぐさま玄関へと走る

だが、グラハムとは唖然とした顔で、いまだ抱き合った状態だった












「グラハム・・・私、今さっき・・・お姉様って呼ばれたんだけど・・・」
「多分・・・気にすることはないと・・・思うが・・・」
「何か悪いことでもあるの?」
「気のせいではないと思うことだからな・・・あぁ、多分・・・大丈夫、だろ」








だが、彼の脳内では
もしかして・・・と思い当たる節がある









そして、リビングにイリアが戻ってくる











「伯父さんは?」
「お父様なら玄関で待っててくださってます。・・・最後にご挨拶に参りました」








最後の挨拶に、イリアが嬉しそうにやってきた。

しかし、イリアの目線はグラハムではなく・・・











お姉様!」

「え?・・・ぁ、はい」







のほうへと向けられていた

突然の呼び方に、は思わず敬語で返事をした








「私、きっと立派な大人になって戻ってまいります!・・・ですから、その時まで待っててくださいね!!」

「え?・・・え?え?」

「グラハム兄さんに負けないよう・・・頑張ってまいります!!」

「イリア・・・やっぱり、お前・・・っ」





グラハムの言葉に
イリアは、ニヤリと笑みを浮かべ彼を見た









「と、言うことですから・・・グラハム兄さん、私・・・今度はお姉様のために戻ってまりますので」

「わ、私!?」

「いい度胸だな、クソガキ」

「MSWADのエースだか、なんだか知りませんが・・・私、負けませんわ。・・・では、お姉様失礼いたします」

「あ、・・・はぁ・・・。」










深々とお辞儀をして、イリアは去っていった。










「グラハム・・・ゴメン、意味が分からない」

「・・・・・・どーやら、いい置き土産をしていったらしいなアイツ」

「え?どういうこと?」





はグラハムに問いかけるも・・・





・・・今度、イリアが私の家に来ても安易に上げるんじゃないぞ」
「へ?何で?」
「何ででも。・・・イリアを上げちゃダメだからな」
「・・・ぅん?」
「よし、イイ子だな」





は疑問を残しながらも、グラハムから抱きしめられるのだった


だが、一方のグラハムはというと・・・










「(あんの、クソガキ・・・私に宣戦布告するとは、いい度胸だな。・・・を奪うだぁ?
ほほぉ、この私にケンカを売るとは・・・いいだろ、今度来た時は・・・本気で1発殴ってやろうかな)」






と、心の中でそんなことを呟いた。
更に・・・










「(しかし、には絶対教えられないな。・・・アイツが〜様っていう呼び方は相手に好意を
抱いているときの呼び方なんだよな・・・イリアがに好意を抱いたということで・・・私も注意しないくては)」









イリアの一言一句に、グラハムは彼がに好意を抱いていると一発で気づいたらしい。



そんなことを思いながら、どうやってを守っていこうと
考えるグラハムだった。








こうして、大型で強い台風は
大きな置き土産とともに、小さな風に変わり・・・去って行ったとさ







嵐は去った!平和が訪れた?
(平和になったと思いきや、嵐は再びこの地にやって来ることを宣言したのだった)


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