-------PRRRRR!
「もしもし?あ、アンナ!うん、私の携帯。グラハムに買ってもらったの。
コレでいつでもアンナとメールしたり、連絡取れるね。あ、お養母さんにも
私の携帯の番号とメールアドレス教えといて、後ねあとねー」
に携帯電話を持たせるようになった。
家にいる彼女のため、私との連絡を
取れるようにするために買って上げたのだ。
「ふぅ。コレでひと通り、完了かな」
「皆さんに番号とアドレスは教え終わったか?」
「えっ?・・・うん。皆から登録したよ、ってメールだったり電話だったり来るの」
「そうか。楽しいかい?」
「うん!ありがとう、グラハム。携帯大切にするね!」
彼女は満面の笑みを浮かべて見せた。
彼女としてはとても嬉しいことなんだが、買って上げた私としては
今更ながらだが気まずくて仕方ない。
最初は私との連絡手段として買ったはずなのに
次から次へと電話帳の登録者を増やしていく。
予定としてはの携帯には私の番号とアドレスだけ、と思っていたのに
自分の思っている事とは違うことが現実に起こったのでなんとも複雑ではある。
「・・・一つ確認していいか?」
「何?」
「私以外の男の番号とアドレスは入れてないよな?」
「え?う、うん。大体アンナとかお養母さんとか、身内のしか入れてないよ。
グラハム以外の男の人のアドレスと番号なんて、入ってるわけないじゃない」
「そうか」
のその言葉を聞いて安心した。
私以外の男(養父は別として)の番号とアドレスが入っていたら
どうしようか、等と考えていたが・・・いや、私の考え過ぎかと思い、ソファーに深く座った。
「それがどうかしたの?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
「変なグラハム」
-------PRRRRR!
すると再び、の携帯電話が鳴った。
「もしもし?・・・・・・あ」
着信に出たの表情が変わった。
彼女は私をチラッと見て、その場を立ち何処かへと行った。
瞬間的に、それが「怪しい」と私は睨んだ。
今し方「私以外の男の登録者は居ない」と彼女は言った。
しかし、明らかにの行動がおかしい。
私はソファーから少し立ち上がり、玄関先の廊下に立っているを覗いた。
『もしもし。あ、はい・・・・・・えぇ、元気です。はい』
今までの彼女の対応ではないことが一発で分かった。
私はそんな彼女が気になり様子を伺う。
『はい。あの・・・・カイルは元気ですか?』
カイル・・・・・・だと?
ちょっと待て。明らかに男の名前だろ!!
私は、彼女の口から放たれた言葉に少々焦る。
さっき確かに彼女は言ったはずだ・・・私以外の(以下略)。
が嘘を付くとは思えない、だが・・・・―――――。
『えぇ、そうですか。はい、はい・・・アハハ、そうなんですか?もう、カイルったら』
笑いながら、楽しげに、話している彼女を見ていると腹が立つ。
そして、今になってあの子に携帯なんか持たせるんじゃなかったと酷く後悔した。
『はい、えぇ、分かりました。うん・・・カイル、またね』
あんな優しい表情をするを見たのは初めてな気がする。
またね、と言葉を言い彼女は通話を切断した。
何だか安心しきったような表情を浮かべながらこちらに戻ってくる。
私は何事も無かったかのようにソファーに座り直した。
すると、は鼻歌を歌いながら再びリビングに現れた。
私は見上げるように彼女を見る。視線に気づいたのか、目をこちらに向ける。
「ん、何?」
「いや、何でもない」
「そう。あ、お茶淹れるね。カタギリさんから美味しいケーキ貰ったの、一緒に食べよ」
「あぁ」
は機嫌よくお茶を淹れにキッチンへと小走りする。
キッチンでも鼻歌が聞こえてくる。
私は立ち上がり、キッチンへ赴きの背後に立つ。
「何、どうしたの?」
私の苛立ちなど知らず、は無知な声を出す。
「やけに、楽しそうだな」
「え?」
「電話、誰からだ?」
「なっ、何でそんなこと言わなきゃいけないのよ。グラハムが気にするような相手じゃないわ」
そう言われると、尚更気になる。
気にするような相手じゃないからこそ、私は気になるんだ。
私は更にを問い詰めた。
「男か?男なんだな。だから、私に言えないんだろ。やはり君に携帯なんか持たせるんじゃなかった」
「ちょっと、横暴過ぎない?貴方、自分との連絡を取りやすいようにしたいからって理由で私にくれたのに。
登録者を増やしたことは悪いと思ってるわ、だけど・・・っ」
「私に口答えをするな」
「ンっ?!」
私はこれ以上モノを言うの口を自らの唇で塞いだ。
「んっ・・・ンぅ・・・ふ・・・っ」
舌を激しく絡め、の口腔内を暴れ回る。
徐々に彼女の力が弱まっていく。
私はそれを見逃さずゆっくりと服の中に手を侵入していく。
「んっ!?・・・ぃ・・・イヤッ!!」
瞬間、頬を酷い痛みが走った。
あまりの衝撃で私は一歩後退したが、打たれた勢いで
頭に血が上った。
だがしかし、その瞬間も虚しく一気に血の気が引いた。
「」
目の前の彼女は、服を掴んで潤んだ瞳で私を睨みつけていた。
「どうして、いつも私が言うことを聞かないとすぐこういうことをするのよ。
私、貴方のオモチャじゃないのよ。私にだってプライバシーっていうのがあるんだから」
「でもな・・・私は、君が心配で」
「心配してくれるのは嬉しいけど、やりすぎって言ってるのよ!限度ってモノがあるでしょ!!
何でそうやって貴方はいつも私の心にズカズカと入り込んでくるのよ!!
してほしくないことだってあるんだから!!」
逆鱗に触れる、とはこの事だ。
日頃の鬱憤と言わんばかりには私に対して牙を向けてきた。
あまりに突然のことで私は言葉を失うし、ましてや反論の余地もない。
違う。
「反論が出来ない」だ。
愛しい彼女から放たれるキツイ言葉に、ダメージが大きすぎて何も言えない。
「落ち着け。私が悪かった、もう何も言わない・・・だから」
とにかく怒りに身を任せているを落ち着かせようと、私は試みるも―――――。
「グラハムのバカー!!もう知らない!!!」
そう言って、彼女はその場を泣きながら去っていった。
私はと言うと、思っても見ない彼女の言葉に一気にその場で崩れた。
「(に”バカ“って言われたの・・・初めてな気がする)」
あまりにショッキングな一言に私は
飛び出していったを連れ戻すことができず
その場で硬直し、落ち込んだのだった。
私のほんの小さな嫉妬が
彼女に大きな誤解を招いてしまった。
事の発端はいつも些細な事
(小さな嫉妬が招いた大きな誤解)