「ごめんなさい、お待たせしました」


「いや、いいんだよ。それにしても、そちらの方々は?」





は私たちを引き連れて男の戻る。

男は不思議そうな顔をして、私たちを見ていた。








「この人たちは私からは紹介すると、おかしくなるからご自分達でしてください」






まだ少し言葉に棘がある。

私たちは一つ、ため息を付いた。








「アメリカ合衆国軍MS部隊MSWAD所属ジャック・ワトソンです。階級は少尉です」

「同じくMS部隊MSWAD所属ビリー・カタギリ。僕は技術顧問をしてます」



「あぁ、軍の方でしたか。ということは」







すると男は私に目を移した。

その眼差しは優しい。








「貴方がグラハム・エーカー中尉ですね?」






男は、私の名前を呼んだ。

私は怯まず、まっすぐに男を見据えた。





「如何にも」


「そうですか、貴方が」







男は私の名前を聞くなりホッとした表情をした。


何故、この男が私のことを知っているのだ?
不思議な疑問に駆られ、私は言葉を零す事が出来なかった。





「申し遅れました。私は、ドリュー・アンジェラでございます。しがない画家で。
そして、こっちが我が家のカイルです」

「ワン!」








聞き間違えるはずない。
確かに、カイルとは犬の名前だった。と、言うことは私の勘違いか!?





「グラハム。君ってやっぱり暴走する癖があるようだね」

「とりあえず次回からは調べてから何事も動いてください中尉。じゃなきゃ他の部下に示しつきませんよ」


「すまない、2人とも」







若干、カタギリとジャックを巻き込んでしまい罪悪感に駆られた。

を横目で見たが、まだ目も合わせてくれない。









「カイルは、から貰った犬なんですよ」






すると、彼はカイルの頭を撫でながら言ってきた。






「私が、まだ養家に居るときに捨てられてたのを拾ったの。カイルが仔犬だったから」


「2年間は花屋の方で育てていたみたいで。その後は私の方で引き取ったんです」







今度はは優しい表情でカイルの頭を撫でていた。








「ドリューさんが引き取るって聞いた時は嬉しかったの。この子にも家族が出来るから、だから嬉しかった」











は幼い頃に両親を亡くして、あまり家族と言うものを知らない。

そんな境遇が自分に似ていると思い、情がカイルにあるのだろう。
きっとカイルもそれに気づいているに違いない。

だからには人一倍懐いていることが分かる。











「さて、も来たことだし・・・行こうか」









すると、ドリュー氏が何処かへ行こうと促してきた。






「はい。あ、お花持ちます」


「私も行こう」


「グラハム?!」





このまま、2人にさせてはいけないと私は付いていく事にした。






「おや、中尉もいらっしゃいますか?いいですよ、いらして下さい」


「ドリューさん、でも・・・っ」


「いいじゃないか、。カイルも好いてる事だし、それにアイツも喜ぶ」










喜ぶ・・・?





一体誰が喜ぶと言うのだ?




疑問に思ったけれど私は口から言葉を出すのをやめた。
あまり此処でアレやコレやと問いただしたら、今度こそに嫌われてしまいそうで怖い。









「そちらのお2人もいかがですか?」






すると、ドリュー氏はカタギリとジャックにも誘いの声をかける。





「あ、僕達は軍に戻ってやることがあるので。そうだろ、ジャック」

「へ?あ・・・あぁ、そうですね。中尉、先に戻っておきます」


「カタギリ、ジャック」



「じゃあまた後でね」

「失礼しました」




そう言って、2人は先に基地へと戻って行った。
そしてその場には私と、ドリュー氏とカイルが残った。

多分カタギリとジャックは気を遣って戻ったのだろう。









「じゃあ、行きましょうか。こちらです」







そして、ドリュー氏が私とを何処かへと案内する。
私とは彼の後ろを付いて歩く。










「どうして、付いて来るの?そんなに私の事信じられないの?」






すると、はようやく私に目を合わせてくれた。

少し警戒した目で私を見ている。
私は無言で彼女の手を握り、顔を見る。







「別に君を信じてないわけじゃない。ただ、今は・・・君の側に居たいんだ。
君は此処の所、私と会話もしてくれなかったし・・・目だって、合わせてくれなかっただろ?
自分の行いで君を怒らせてしまった事は謝る。謝ってまだ私を許せないというのなら、君の気が済むまで
私を拒絶してくれたって構わない。だけど・・・今は君の側に居たい」






そして、私はの肩に頭を置いた。








「ダメか?」


「・・・・・・うぅん」






そう言って、は私の頭を優しく撫でてくれた。










私は、結局カイルと同じなのだ。

ようやく会えた、愛する人に包まれる喜びを感じに。






柔らかい手の温もりに包まれて
(そして、私は安心するんだ)
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