連れてこられたのは公園の奥。

街の景色が見えて、とても綺麗な場所。
そして、其処にはたくさんの墓標が並んでいた。






「墓参りか。しかし、一体誰の?」


「此処です。どうぞ」


「私、お水汲んできますね。グラハム、此処に居てね」


「ああ、分かった」





ドリュー氏に言って、はカイルを連れて水を汲みに行った。

私は彼女の背中を見送った後、連れてこられた墓石を見る。






<Maria・Angela> 2268-2306






墓石に彫られた名前を眺めていると――――。









「マリアは、私の妻です」






すると、ドリュー氏が私に話しかけてきた。








「奥様でしたか」


「えぇ、元々病弱だったもので、去年先立たれてしまいました」


「そうですか」


「妻は、とてもを可愛がっていました。あの子が花屋で働いてる時から
私たちはあの店に訪れたものです。あの子の明るく優しい笑顔を見るだけで妻も私も、とても幸せでした」


「成る程」






彼は笑って言った。


私も、の優しい笑顔で、どれほど深く突き落とされたところから
這い上がってこれたことだろうか。

彼女が居なければ今の私はきっとないだろう。


いや、既にこの世に存在しないのと同じようなものだった。







が15歳のとき、その時でしょうか・・・あの子がカイルを拾ってきたのは。
そして2年間花屋で育てられ、そのあとは引き取ったと・・・此処まではお話しましたよね?」


「えぇ」


「ですが、カイルを引き取って程なく1年くらいでしょうか・・・あの子が貴方に引き取られ、そして、妻も倒れました」




単純計算をしたら、が18歳の時。

丁度私が彼女を引き取ったときに、彼の妻は病床に着いたことになる。







「妻のことを知らせたくて店に訪れても、あの子は居なかった。
ご夫妻に居所を尋ねても、答えてくれませんでした」


「すいません。私がなるべく居所を話さないで欲しい、と花屋のご夫妻に頼んでいたんです」


「いえ、いいんです。が最近になってようやく話してくれましたから」






そう言われると、自分に罪悪感が生まれた。

もし、居所を話していればきっとは毎日のように
アンジェラ夫妻の元に通っていたのだろう。







「妻はを本当の子供のように可愛がっていました。子供のいない私たちでしたので
あの子が我が子のようで。花屋に居た時は配達終わりにいつも家に訪ねては妻の心配ばかりしていました」


「毎日?」


「えぇ、毎日です。貴方に引き取られる前まで、ずっと。妻が重い病気だと知らず」


「そうでしたか」


に、妻が死んだことを伝えた時は本当にショックだったと思います。
きっと中尉のご自宅で一人篭っていらしたのでは?」








そういえば、喧嘩して2日くらい経った日の事。
はずっと寝室に篭っていた。

まさか、そんなことがあったとは知らず
どうしてあの時、自分の過ちを謝罪し彼女の話を聞いてあげなかったのか。

本当に、悉く自分を責めたくなるものだ。







「それからでしょうか?頻繁に家に来るようになったのは。何やら、あの子が酷く怒っていましたが」


「ちょっと、彼女と些細な事で喧嘩になって」


「そうでしょう。顔も見たくないから、家で晩御飯を食べて行ってましたから」






道理で、家で食事をしないと思ったらそんな手段で私との会話を避けていた事を知る。



目の届かないところに行けば、何をしてるか分からない。


今度は彼女を怒らせないようにしよう、と自分の心の中で誓った。










「エーカー中尉」


「はい?」


を引き取ってくださってありがとうございます」







すると、ドリュー氏は突然私に頭を下げてきた。

あまりの事で私も少し困惑する。





「ぁ・・・あの、私は別に大したことは」


「いえ、大したことなんてものじゃない。家族の居ないあの子を見初めてくださって、本当に感謝しています」


「・・・・・・」


「親の居ない、あの子にとって貴方は唯一の家族であり、大切な人です。
ですから、私や妻は本当に安心してるんです。ようやくあの子にも大切な人が出来たことが」


「そうでしたか」


「血の繋がりのない私たちにはは本当の娘のようで。
これじゃ、親になったような気分ですが・・・これからもをよろしくお願いします」


「えぇ・・・分かりました」









私がそう答えると、ドリュー氏は頭を上げ優しい微笑を浮かべた。









「ワンワン!」


「カイル、引っ張らないで!ごめんなさい、久々で水場何処だったか忘れちゃって」






すると、がカイルに引っ張られながら戻ってきた。







「いいんだよ。さぁ、カイルおいで」






からリードを貰い、ドリュー氏はカイルを引く。

カイルは少し名残惜しいようにから離れていく。








、お墓参りは中尉さんと一緒にしなさい」


「え?で、でも・・・っ」


「私は仕上げなきゃいけない作品があるからね、先に失礼しますよ。では、エーカー中尉また」


「えぇ、また」


、いつでもおいで。私もカイルも待っているからね」


「はい。カイルまたね!」


「ワン!」








そう言って、ドリュー氏とカイルは家路へと向かうのだった。

その場に残されたのは私と
彼女は持っていた、花束を墓石の前に置いた。











「マリアさんごめんなさい、遅くなっちゃって。もう少し早くに気づいてあげればよかったのに」








は亡き人の墓石に語りかけていた。
その声は震えて、涙を堪えている。


すると、突然立ち上がり私の腕を掴んだ。








「この人!私を引き取ってくれたグラハム・エーカーって言うの。
あのアメリカ軍の軍人よ!でもね、とっても優しい人・・・優しくて、カッコイイの」





「だから、大丈夫だよ。私にもちゃんと大切な人が出来たの、もう心配しなくていいからね」











『親の居ない、あの子にとって貴方は唯一の家族であり、大切な人です』








すると、私はさっきのドリュー氏の言葉を思い出した。



そうだ。

この子には家族が居ない、私が唯一の家族で・・・大切な人なんだ。







「今日、彼が偶然来て驚いたけどマリアさんに報告するね。私は幸せだよ、とっても幸せ」


「なら、私も報告、いや・・・言わなければな」


「え?・・・一体、何を?」






私は彼女の手を握って、右手で敬礼する。










「MSWAD所属中尉私、グラハム・エーカーはを一生愛し続けることを誓います。
どんな時も、いかなる時も、私は彼女を愛し守り続けます」



「ちょっ、ちょっと・・・大袈裟よ。そんな風に言わなくても」


「私は至って真面目に言ってるのだか。君が私の元に来た以上
私は君を愛し守り続けることを心に決めていた。だから、もう・・・・・君を泣かせたりしない」


「グラハム」


「すまなかった。全部私が誤解してたんだ。本当にあの時は悪かった」






そして、私は自分の犯した過ちを悔い
に謝罪の言葉を投げた。


すると、その言葉を受け取った彼女は笑みを浮かべ首を横に振る。









「私の方こそ、ごめんなさい。あんな風に言うつもりなかったの。だから貴方だけが悪いわけじゃないから」











すると、何だか柔らかい風が吹いた。


まるで母のような温かなぬくもりに包まれているような。









「これでおあいこだな」


「そうね」


「でも、まぁ次に誓いを立てるなら、教会になるな」


「へ?」


「何を間抜けな声を出してるんだ、?決まってるだろ、次は結婚式だよ」


「は?!ちょっと、話が飛躍しすぎ!!け、結婚って・・・っ」


「飛躍なんてとんでもない。むしろ近々でも私は構わないぞ。
そうだ、今から式場でも決めに行くか?それともウェディングドレスを決めに行くか?
まぁ、は何を着ても似合うこと間違いなしだろうな」


「ちょっと、ヘンなこと言わないでよ!!」











もう泣いたりしないで。


私が君を一生を懸けて、愛し守り続けるから。


君が泣いた時はいつでも側に居てあげる。

君が悲しい時はいつでも側に居てあげる。


私は、君と全てを共有したいんだ。






だから、今・・・此処で誓います。






『君を死ぬまで、愛し続ける』と。







Oath いつも、いつまでも
(私は君の側に) inserted by FC2 system

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