「すいません。来て次の日、出かけたりなんかして」
「本当なら、私奥様のお手伝いをしようと思ってたんですが」


「いえ、いいんですよ。ビリーのワガママで付いてきて下ったのですから、ゆっくりしていってください」






次の日。

私とは、玄関先で
カタギリ司令の奥方と話していた。





「夕食までには戻ってきます」
「いいんですよ、さん。お外でご飯食べてきても」
「で、ですけど・・・っ」
「お言葉に甘えようじゃないか、
「グラハム」






私はの肩を抱いて、彼女に言う。






「日本料理を味わってみるのもいい勉強になるぞ」
「・・・・・そ、それじゃあ。本当にいいんですか、奥様」
「えぇ、ビリーも居ますし大丈夫ですよ。さぁ、行ってらっしゃい」


『行ってきます』




そう決まると
奥方は笑顔で私たちを見送ってくれた。

















「あれ?グラハムとさんは?」
「遅いわよビリー。お2人ならお出かけしに行ったわ」
「ふぅーん。じゃあ夕食までには帰ってくるんだろ」
「いいえ。お外でご飯を済ませてくるそうよ」
「は?・・・って、事は」
「今日は、家族で
色々話しましょうね・・・ビリー」
「(あぁ、やっぱり帰ってくるんじゃなかった)」





























「ねぇ、本当にいいの?ご飯食べて帰って」




カタギリ司令の家を出て
しばらく歩きながら、は私の腕を掴んで
見上げるように話しかけてきた。

まだどうやら気にしているらしい。

私は一つため息を零し・・・・・―――。




「司令の奥方がそう言ってくださったんだ。好意に甘えよう」
「そ、そうだよね。・・・エヘヘヘ」





私の答えを聞くと
は嬉しそうに、私の腕に擦り寄ってきた。





「何だ?随分楽しそうだな」
「だって、何かデートっぽいことするなぁ〜って思ったら嬉しくて」





そうか、久々の休みだ。
一緒に暮らし始めて、あまりデートをした記憶がない。

にとって、私と一緒に居る時間が何よりも嬉しい事なんだろう。







「デートっぽい事じゃなくて、デートだよ
「あ、そっか。それから、昨日の約束忘れてないよね?」
「何でも買ってあげる・・・でしたね、お嬢様」
「うん!何でも買ってね!」
「仰せのままに」







そう言って、私と
2人っきりで恋人らしいデートをするべく
町へと繰り出したのだった。

























「ありがとう、グラハム」
「どういたしまして」




町を色々とウロウロしている最中
が小物店のショーウィンドウに飾ってある手鏡から目を離さないから
「欲しいのか?」と聞いたら「かも」と彼女が答えたので
私は笑みを浮かべ、店に彼女と入り
ショーウィンドウに飾ってあった手鏡を買ってあげたのだった。






「よかったな」
「うん!日本っていいね。アメリカにはない綺麗な柄がたくさんあるから」
「それは、日本が独自に編み出してきた文化のようなものだからな。アメリカ人は決して真似できない」
「だよね。イケバナとかサドウとか・・・キモノとか」
「あ、キモノで思い出した。・・・少し寄りたいところがあるんだが」
「え?」







ふと、の最後の”キモノ“という言葉に
私はあることを思い出し、近くのお店に入り、手土産程度のものを買う。







「何処に寄るの?ま、まさか・・・前の彼女が日本人で、今は1児の母で久々に逢うから」
「何でそうなるんだ。違う・・・姉さんの旦那さんに会いに行くんだ」
「メアリィさんの旦那さん?あ、そういえばメアリィさんの旦那さん・・・日本人」







私は土産袋を片手に、と腕を組んで歩きながら
話を進める。










「姉さんの旦那さん、私には義理の兄にあたるヒロトさんは有名な和服デザイナーでな」

「スゴい。夫婦揃ってデザイナーとか」

「彼のご実家が、確か呉服(ごふく)店という和服の専門店でな、凄い歴史の長いお店らしい」

「ふぇ〜そうなんだぁ」

「ヒロトさんも呉服店の何世代目かの店主で。デザイナーをしながら呉服店を切り盛りしてるんだ」

「じゃあそのお土産は?」

「姉さんが世話になってるからな、手ぶらじゃカッコ付かないだろ?
それにあの人の事だ、迷惑ばっかりかけてるんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてる」

「フフフ・・・グラハムってお姉さん思いだね」







にそう笑われてしまった。
だが、嫌な気分じゃなかった・・・むしろ、心地よかった。

そうだ、あんな乱暴な姉でも・・・たとえ血が繋がっていなくても
あの人は私を弟として迎えてくれてた。



”お姉さん思いだね“



にそう言われて、私は改めて
「そうかもしれないな」と心の中で呟いたのだった。


















「すいません」
「いらっしゃ・・・あぁ、グラハムくん久しぶりだね」
「ご無沙汰してます、お義兄さん」





リニアモノレールをしばらく乗り継いで
日本文化漂う場所へと着いた。

その場所でも一番の店舗の大きさをしている
姉さんの旦那さん、ヒロトさんのお店へとやってきた。


門前で声をあげると
奥の方から、和服に身を包んだ日本人の男性・・・ヒロトさんが現れ
すぐにその場に膝を付いて、目線を落とした。




「コレ、来る途中だったので・・・こんなものしか」
「あぁもういいのに、こんな気を遣わなくて」





私は持ってきた土産を渡すと
ヒロトさんはニコニコしながらそれを申し訳なさそうに受け取った。






「そういえば、会っていつ以来かな?」
「2人の結婚式以来かと」
「あぁ、もうそんなに長くなるの?いや〜道理で僕も年取ったわけだね」
「いいえ、以前とお変わりなく。元気で何よりです」
「うん、僕もみんな元気だよ・・・おや?そちらのお嬢さんは?」




ヒロトさんと会話をしていると
彼が私の隣に居るの存在に気づく。





「彼女は、私の恋人です」
「は、初めまして。です」
「おや、アメリカ人?黒瞳で茶髪だからてっきり日本人かと思っちゃった」
「よく、間違えられるんですが・・・父も母も、純粋なアメリカ人なんですけど・・・母方の曾祖母が日本人で」
「なるほどね。日本は初めて?」
「えぇ。彼にふっ付いて」
「そっか。ところで、グラハムくん。またどうして日本に?今回も調査?」





に質問を終えると
彼はまた再び私のほうにと質問を放ってきた。

姉さんと同じ、この人もお喋り好きだ。








「いえ。旧友に付いてきて欲しいと言われて」

「じゃあ、明日にでも向こうに戻るの?」

「明後日まで滞在するつもりです。それで今日、彼女と出かけてこちらに寄らせてもらったんです。
突然押し掛けてしまってすいません」

「いいよ。あ、お茶でも出そうか」

「お義兄さん。いいですよ、そんな」





ヒロトさんはお土産を持ち、立ち上がり
そそくさと奥の部屋に向かおうとする。






















「あ、グラハムオジちゃんだ!!」








すると、突然奥の部屋から
威勢のいい声と共に、5歳くらいの男の子が現れた。

ていうか、待て・・・既に私はオジちゃん呼ばわりか?!
隣でがクスクスと笑っている。






「コラ。・・・すいません、息子のヒメトです」
「こんにちわ!ヒメト・スドウです!」

「こんにちわ」
「こんにちわ、ヒメトくん」




飛び出してきたのは、どうやら姉さんとヒロトさんの息子だった。
私が彼を見たのは、まだ赤ん坊のときで
大きく成長したものだ。

外見日本人なのだが、中身姉さんの性格が見事に遺伝されている。
将来が心配だ。









「お姉ちゃん、日本人?」
「え?」
「コラ、ヒメト!」






すると、突然ヒメトくんがの手を握り
目をキラキラと輝かせながら彼女を見ていた。

その行動に、ヒロトさんが声をあげる。









「ゴメンね。お姉ちゃん、日本人じゃないの」
「そっか。ねぇ、あっちにお父さんが作ったお着物あるんだ、来て」
「えっ?あっ・・・グ、グラハム」
「いいよ。行っておいで」






私の声を聞くと、は「じゃあ行こうか」
と言って、ヒメトくんに手を引かれながら奥の部屋へと向かった。





「ゴメンね、グラハムくん」
「いいんですよ。ですが、さすがにこの歳でオジちゃん呼びは」
「だよね。教え込んだのメアリィなんだよ・・・僕はやめろって言ったのに。あ、ちょっと待ってね
お茶すぐに持ってくるから」






そう言ってヒロトさんはお土産と共に奥の部屋へと向かい、
お茶を持ってくるといった。


やはり、オジちゃん呼びを教え込んだのはあのクソ姉か。
こんな呼び方ヒロトさんが教えるはずないからな。

私はため息を零し、段差に座る。








「はいどうぞ」
「すいません。いただきます」





数分して、ヒロトさんが戻ってきた。
透明の小さなグラスに入ったお茶が運ばれ、私はそれを受け取り口へ運ぶ。









「ヒメト、相当さんが気に入ったみたいだけど・・・・・・いつから彼女と付き合ってるの?」

「2年前からです。今は一緒に暮らしてます」

「え!?同棲してるの?!・・・すごいなぁ、グラハムくん」

「凄くないですよ。私は彼女を、を離したくないだけなんです・・・姉さんからは
溺愛しすぎって言われてるんですけど・・・それでもあの子だけは、どうしても手離せなくて」

「男って皆そうだよ。好きになった人を手離したくないと思うのは当たり前なんだから」

「お義兄さん」






ヒロトさんはニコニコしながら私に言うのだった。







「僕だって、初めてメアリィと逢った時はそりゃあ意見食い違いすぎて最悪だったけど
だんだん彼女と話したり、ケンカしたり・・・近づくたびに惹かれていったんだ。
惹かれるってつまり、好きって言う気持ちの前兆でね・・・自覚するのは早いもんだよ」

「確かに」




彼の言葉に、私は賛同した。

に惹かれ、好きになったのは本当に早かった。
まるで、50mを全力疾走するように。







「好きになったのなら、手離したくないし・・・嫉妬しちゃうのも当たり前。
好きな人ほど愛してあげたい、大切にしたいと思う事は良い事だと僕は思うんだ」

「そう、ですね」






やはり年長者の話は聞くものだ。
この人の言葉、一つ一つ賛同してしまう。

それは、人を愛し、手離したくないという気持ちが同じだから。







「結婚は考えてないの?」

「今のところ。といっても、彼女のほうがまだ早いと」

さんおいくつなの?2年も付き合ってるんだし」

は・・・・・20歳です」

へ!?






やはり、こういう反応が来るのは予測済みだった。
何せ、私とは7つも歳が離れているのだから。







「じゃあ、まだ早いね」

「そうですか。私としては、早く結婚をしたいのですが・・・如何せん、があの歳ですし
本人がまだという以上・・・YESの答えが来るまで待たないといけないんです・・・けど」

「グラハムくん的には結婚したいと」

「はい」

「まぁ、待つのも男の役目だよ。結婚は女性にとって一生モノだからね」






そう言ってヒロトさんはお茶をすすり飲んだ。
やはり、待つのもそれは男の役目なのだな・・・と耳に聞き入れた。







「あ、そうだ。昨日ね、凄く良い物が入ったんだ・・・って言っても此処じゃ珍しい物じゃないんだけど」

「何ですか?」







すると、ヒロトさんはひらめいたように
両手を叩いて、何かを思い出したようだった。

そして、立ち上がり
奥の部屋へと引っ込むも、数秒ほどして戻ってきた。
その手には、紫色の布に包まれた片手に収まるほどの箱だった。

彼は布を丁寧に開くと、現れたのは木箱。





「珍しい物じゃないんだけど、グラハムくんやさんには珍しいものだと思ってね。
よかったら、グラハムくん・・・さんに差し上げて」

「え?」





そう言って、ヒロトさんは木箱の蓋を開ける。
其処には・・・・・・。






「あの、コレは?」
「うん。コレね・・・・・・―――」



































「おいしー!日本料理ってこんな美味しいものなんだね」
「ヒロトさん行きつけのお店らしいからな、味は確かだよ」
「うん!」



夜。
私とはヒロトさんの行きつけの日本料亭へとやってきていた。

夕食がまだ決まっていないと告げると・・・―――。



『じゃあ僕の行きつけの日本料亭に予約入れておいてあげる。
凄く美味しい懐石料理・・・あぁ、ディナーコースみたいなものなんだよ。
個室もあるし、夜景の良い場所を取ってもらうよう手配しておくね』



と、言われて
そのあと店への行き道が私の携帯に送られ
それを頼りにやって来た。


そして通された場所は
もちろん個室で、部屋についている障子を開ければ
静かな趣の風景が広がった庭が一望できる場所だった。






「よかったな」
「うん!あ、コレお塩で味付けてるのかなぁ?・・・あとで作り方聞いてもいいよね?」
「いいと思うぞ。教えてもらったらウチで作ってくれるのか?」
「当たり前じゃない。グラハムこれ好きそうだし」




私の好みがすぐに分かったのか
は食べている料理のレシピをどうやらあとで聞くつもりらしい。

2年間、一緒に住んでいたらやはりそう言うものも分かっていくものなんだな。









「そうだ。にプレゼント」
「え?いいよ。今日たくさん買ってもらったんだし」
「それとコレは別。コレは特別だから受け取ってほしい」
「う、うん」








私は箸を置いて、ヒロトさんから貰ったものを出した。

そして、布を丁寧に広げ木箱を出して・・・・・―――。








「はい」
「え?木箱?」
「直接開けてごらん」





は恐る恐る箱を受け取り
自分の元へと持ってきた。

そして、蓋に手を掛けゆっくりと開ける。








「・・・・・うわぁ、可愛い貝殻。アレ?でも・・・下に、何か赤い・・・何、コレ?」

「昔の女性の口紅。約700年前の女性が口紅を引くときに使われたものなんだ」








ヒロトさんに貰ったのは、昔の女性が使っていた口紅。
クラム(ハマグリ)の両面に、口紅の液が塗りこまれており
外には金色で塗装され、さらにその上にサクラの柄が描きこまれいた。









「へぇ。・・・綺麗だね」

「あぁ。特に今回のは上質なものらしい・・・にプレゼント」

「え?で、でも・・・こんな高いものっ」

「いいから、受け取ってくれ。それに上質な口紅はね昔、金と同じ価値を持っていたから
男が意中の人の好意を得る決定打で、贈り物として重宝されていたらしい」

「そ、そうなんだぁ」

「私の場合、意中の人はもちろんだ」

「っ!!」









そう言うと、は顔を真っ赤にして
クラムに入った口紅を見る。







「ホントに、貰っていいの?」

「あぁ」

「大切にするね。・・・ありがとう、グラハム」

「うん」






は本当に嬉しそうにそれを持って
私の微笑んだ。

きっと、姉さんもこんな微笑を浮かべたんだろうな。と
コレを貰うとき、ヒロトさんと姉さんの話を聞いた。

























「僕もね、メアリィ口説くときコレ用意したんだよ」

「本当ですか?」

「うん。だって本当に高いんだよ、コレ。メアリィと出会った頃僕、まだ駆け出しだったし
向こうは向こうでもう第一線で活躍してたしからね。給料の差なんて大きいわけさ」

「確かに」

「んで、僕一生懸命仕事して貯金して、メアリィにコレとは外の柄が違うのを買ってあげたんだ」

「そしたら、姉さんは何と?」

「本当に嬉しそうに”ありがとう“って言ってくれた。そのとき確信したんだ。
あぁ、僕はやっぱりこの人のことが大好きなんだなぁ〜って。今でもメアリィ、コレ大切に持ってるんだ。
長持ちするからね・・・使い終わっても小物入れとしても全然使えるんだよ」

















―きっと、さん喜んでくれるよ―













あの人の言葉どおり、は本当に嬉しそうな顔で喜んでくれた。


私も彼と同じで、その笑顔を見た瞬間
「やっぱり私は彼女の事が好きだ」という気持ちになった。









「ねぇ、やっぱり私何かお礼したほうがいい?」
「ん?」
「だって、今日グラハムにいっぱい買ってもらったし・・・それにこんな高そうなものまで貰っちゃったし」
「そうだなぁ」
「何でも言って」












何でも?

本当に、何でもいいんだな。









「じゃあ」

「うん」

「今日も一つの布団で
たっぷり愛の営みをしようか」

「ふぇ!?え!?そ、それは」

「何でもいいんだろ?嘘はいけないぞ」

「で、でもっ」

「帰ってから楽しみだな、。あぁ、今日も布団一組で愛し合うのか・・・私は幸せ者だな」

「も〜〜グラハムのエッチ!」











君に捧げる愛の艶紅〜滞在2日目〜
(その唇に誘惑の紅色を引いて、私を捕まえて・・・離サナイデ)


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