との生活、1年目の9月10日。







「グラハム」

「は・・・はぃ」







大変、マズイ状況に陥っている。

それは9日の終わりを告げる0時の鐘が鳴り、10日と日付が変わり
今日は私の誕生日・・・本来なら、最愛の恋人
それを祝ってもらうつもりだった・・・つもりじゃない!


その予定だった・・・だが、今にもそれが・・・崩れそうな感じだ。









「何かな、それ?」

「と、言い・・・ますと?」











笑顔で、しかも玄関先で仁王立ちでいるが怖い。


瞳が・・・合わせられない・・・!!!!













貴方の後ろ、綺麗に
包装された大量の箱の数は
何かしらって私言ってるんだけど?




「ぃ・・・いや・・・あの、コレは・・・だな、つまり・・・」










そう、私の背後には・・・9日だと言うのに、明日が誕生日だと
何処からか嗅ぎつけられ・・・軍本部で女性達に迫られ
仕方なく貰ったプレゼントが・・・山済みになっていた。


やはり、コレは・・・研究室に置いてくるべきだったか・・・!!!と、後悔するも時既に遅し!!


目の前の恋人はかなりの笑顔でご立腹の様子だ。










「きょ、今日は・・・私の、誕生日だから・・・たくさん、貰ったんだ・・・ハハハハ」


「貰ってきたのは9日でしょ?」


「1日違いでも今日が私の誕生日なら、貰ってしまえば変わりないだろ」


「・・・あっ、そうですか・・・そうなのね」








地雷を思わず踏んでしまった。

自ら開き直ってしまい、慌てて自分の口を塞ぐも
目の前のはそれはもう酷く冷め切った目で私を見ていた。












・・・あの、これは・・・」


「じゃあ、別にグラハム私からのプレゼントいらないのね」


「え!?・・・それは欲しいに決まってるじゃないか!」


「別にいらないでしょ、それだけのプレゼント貰ってるんだから。どーせ、私のプレゼントよりも
軍の女の人たちから貰うプレゼントのほうがよっぽど高価なものでしょうね」

「なっ?!」







今の言葉でちょっと、カチンと来た。

不利な立場に立っているが、思わずその言葉でムカッとしてに反論する。






「高価なものよりも、私はから貰うものはどんな物よりもダイヤモンド以上の価値はある」


「別にそんな風に言わなくてもいいです」


「あのな・・・確かに高価なものが入ってるかもしれない。それよりも、私は君から貰うものが
一番の高価なものだと思う。そんな言い草はないだろ」


「はぁ?・・・じゃあ、何よそのプレゼントの数!包装からして高価なものばかりでしょ!入ってるかもじゃなくて
入っているが正確じゃない・・・どうせ、どうせ・・・私のなんかより、よっぽどマシなんでしょうね!」



!!」















--------パシンッ!













「ぁ」






頭にきて私は思わずの頬を引っ叩いてしまった。
叩いた後に、我に返り目の前・・・右頬を叩かれ押さえて顔を伏せているの様子を窺う。


私は焦った。

今まで、私は一度も・・・を叩いたことがないからだ。




酷いまでに愛してきた・・・だから、叩いたことがない。

いや、女性に手を上げるなんて言語道断な話・・・だが、今現在・・・そんな事をしてしまった私。

かなり内心どころじゃない・・・本気で焦っている。










・・・、ゴメン・・・その、叩くつもりじゃ・・・」

「・・・る」

「え?」






ボソッと呟いた瞬間、すごい勢いで顔が上がる。
その顔には涙が浮かび、唇を噛み締めて私を睨みつけていた。














実家に帰るって言ってるのよバカ!!












シンデレラの魔法は・・・1日と持たず、一瞬にして消え去った。

彼女と暮らし始めて1年目。
最高の誕生日を迎えるはずが、最悪の誕生日を迎えてしまったのだった。

















「何がいけなかったのだろうと、振り返るが」


「多分それは君がさんを引っ叩いた時点で終わったね」


「そうだな・・・ああ、全く正論だよ」




朝、カタギリから「誕生日おめでとう」と言葉を貰うも
私は0時過ぎに起きた事件の事を思い出してしまい、凹んだまま
カタギリに「ありがとう」と答えた。

そして、今現在、事件のあらましを話し、何がいけないと原因を探るも
やはり・・・彼女に、に手をあげてしまったことが一番の原因らしい。







「やっぱり置いて帰ったほうが良かったんじゃない?」


「私も後々後悔したよ。帰った瞬間、玄関でが仁王立ち・・・アレほど彼女が怖い瞬間はないな」


「君の話を聞く限り、普段温厚なさんみたいだし、怒ったらさぞ怖いだろうに」


「あー!!!最高の誕生日が、最悪のどん底まっしぐらじゃないか!
帰って、のあの可愛らしい笑顔で『
グラハム、誕生日おめでとう』って言ってもらうはずだったのにぃ!!」


「プレゼントを持って買える時点で、君も几帳面だと思うけど・・・あの量はないと思うよ」


「今朝も、これ以上プレゼントを増やしてはならんと思いコソコソしながら出勤してきたが
女性と言うものは怖い生き物だな。何処から嗅ぎつけるのやら、見つかってプレゼント攻めだ」








今現在、カタギリの研究室で仕事兼避難中。
そして、隣の部屋にはダンボールの箱が幾つあっても足りないくらいのプレゼントの山が隠れていた。






「でも、隣の部屋のアレ・・・どうやって持って帰るの?」


「持って帰れないだろ・・・があんな状態じゃ。また彼女の怒りに触れるだけだ」


「じゃあ、どうするの?」


「処分する」


「勿体無い・・・プレゼントくれた女の子達が可哀想でしょうが」


「私のプレゼントはから貰うだけで充分だ」


「おやおや。そういえば、貰ったの・・・さんからプレゼント」







カタギリの言葉に、私は肩をがっくりと落とした。







「あ・・・ごめん、ケンカしてるんだっけ」


「そーだよ、そーですよ・・・どーせ、私は最愛のからはプレゼント貰ってませんよ」


「・・・今、思ったんだけど・・・何かおかしくない?」


「え?」






すると、カタギリが疑問の声をあげる。

私は顔を上げて、彼の顔を見る。







さんだよ。君が女性にモテることくらい百も承知でしょ?」


「モテるかどうかは私自身、分からん」


「僕からしたら君はモテるの。
そんな君の事だし、プレゼントを大量に貰ってくることくらい、彼女は分かってるはずだよ。でも、何で?」























彼女、そんなに怒る理由があるのかな?























カタギリの疑問を胸に、私は街をふらついていた。

もちろんこれ以上にプレゼント攻撃を避けるため・・・手早く退勤をして
軍施設から姿をくらますように、スーツ姿で街をふらつく。







「(確かに、言われてみればは・・・分かっていたのかもしれない。
じゃあどうしてあんなに怒る必要があったんだ?)」







女性達からのアプローチが酷いことくらい
は分かっていた・・・それも以前から。

分かっていたからこそ、怒るのか・・・?いや、違うだろう。

じゃあ、理由はなんだ・・・そこまでして、怒る理由は?







「分からんな・・・乙女心というものが」

「アレ、エーカーさんじゃないですか」

「え?・・・あぁ、アンナさん」







不意に声をかけられ、振り返ると
其処にはの養家の実娘アンナさんが居た。

彼女はニコニコしながら私に近づく。









「どうしたんですか?何か悩みでも?」







もしかしたら、この人なら・・・何か知ってるのかもしれない。





「アンナさん」


「はい?」


「折り入って・・・相談事なんですが」


のことですか?」


「まぁ、はい」


「仲睦まじくやってるかと思えば、ケンカもやっぱりつき物みたいですね。まぁそれがより良い関係を育むもの」


「そのより良い関係が・・・崩れそうな勢いかと」


「え?」








私は頭を掻きながら、彼女に話すのだった。














「とりあえず、”お誕生日おめでとうございます“ですね」



「はぁ・・・ありがとうございます」







歩きながら一部始終を話すと、アンナさんは
まず誕生日おめでとうの言葉をかけた後・・・クスクスと笑い始めた。






「あの・・・何か?」


「いや、あの子がね・・・怒る理由、もしかしたら・・・エーカーさんが貰ったプレゼントにあるんじゃないんですか?」


「え?」





彼女の言葉で更に疑問が増えた。

頭に?のマークが大量に飛び交う。







「一応、あの子・・・エーカーさんのプレゼント用意してますよ」


「何で、それを」


「知ってるかって?・・・・だって一緒に買いに行きましたから」


「え?!」








アンナさんの言葉に、私は驚きを隠せなかった。

だって、昨晩・・・もとい0時過ぎの事件が起こった頃・・・そんなもの一切見えなかった。






「あの子、多分自分が貯金してたお金全額で貴方に贈り物したかったみたいですよ」


が・・・私に」


「選んでるとき、すっごい嬉しそうな顔して」











、プレゼントそれでいいの?』


『コレでも高いけど・・・グラハムが喜んでくれるなら』


『もっと別のにすればいいのに』


『うぅん、コレがいいの。・・・これじゃないと、意味がないから』


『意味ねぇ。どんな意味があるんですかちゃん?』


『それはね』









「どんな意味が?」


「さぁ、それは・・・ご自分でに謝って、ご自分で受け取ってください」










アンナさんは、が何を買って
そしてどんな意味があるのかは教えてくれなかった。






ただ、は自分の中ではそれが最高の私に対するプレゼントだと思っていた。

それだというのに、私はバカ正直に貰ったプレゼントを持って帰ってしまい
彼女の気持ちを・・・粉々に砕いてしまった。








高価なプレゼントと比べてしまう自分のプレゼント。


世界に違いに愕然として、ショックだったに違いない。







なのに、私ときたら・・・開き直り、挙句の果て・・・の頬を引っ叩いてしまった。









が泣いて怒るのも分かる気がします」


「まぁ・・・引っ叩くのはどうかと思いますけど?」


「反省してます。ホント、何してるんだか・・・なら、急いで帰らなきゃ」


「誕生日は待ってくれませんからね。早く行かなきゃ、エーカーさんの誕生日終わっちゃいますから」


「すいません、アンナさん・・・ありがとうございました」


によろしくと伝えてください」


「えぇ」












私はアンナさんに別れを告げ
彼女が待っている私の家へと急いで帰るのだった。






















-----------ガチャッ!







!」




「・・・・・・」





帰って、リビングのドアを勢いよく開け彼女の名前を呼ぶ。


一方の彼女はソファーに座って私の顔を見るなり、無言のままそっぽを向いた。

私はすぐさまの側に近づく。








「その・・・あの・・・朝というか・・・何ていうか」


「別に気にしてないからいい。・・・もういいよ、別に」






私の目も見てくれない。

本当は、本当は・・・凄く・・・辛いはずなのに。






「ゴメンよ、


「今更謝らないでって言ってるでしょ。もういいって」


「ダメだ・・・ダメなんだ、ちゃんとしなきゃ。・・・じゃなきゃ、また・・・を悲しませてしまう」


「・・・・・・・」


「引っ叩いたことは謝る。開き直ったことも謝る。だから・・・頼む」















私に君のプレゼントを、貰う資格があるというのなら・・・―――――。














「君の最高の贈り物をくれないか?」






「・・・・・・・」








どんな気持ちで、私のためのプレゼントを選んでくれたのか。


どんな気持ちで、私が君からのプレゼントを受け取ってくれるのを想像したか。


きっと言葉にならないほど、君は私の喜んだ顔が見たかったはずなのに。



最高の誕生日を迎えさせてくれるはずだったのに
自分の身勝手な言葉や行いで、こんな風になるなんて。








「ゴメン・・・ゴメンよ、


「本当に、反省してる?」


「あぁ」


「痛かったんだよ、ホッペ」


「ゴメン」


「仕方ないな・・・許してあげる」










すると、彼女は優しい微笑みで私を見ていた。

ようやくいつもどおりのに戻った。


その表情を見ただけで私は安堵した。




「じゃあ、私から貴方に最高のプレゼントをあげちゃいます」


「あぁ」





そう言って、は立ち上がり私の目の前に
小さな細長い箱を出した。







・・・コレは?」


「開けてみて」






リボンを解き、箱を開けると其処にあったのは・・・―――。









「ネックレス・・・?」


「男の人にネックレスなんて、変わってるよってアンナに言われたんだけど。
あ、アンナにもねプレゼント買いに行くの付いてきてもらったの」







箱から、ネックレスを取り出すと・・・真ん中には・・・紅い宝石。


これって・・・まさか・・・?!







、コレ・・・ルビーじゃないか」


「よく分かったね。そうだよ、宝石ショップだと高いでしょ?だからストーンストアっていうお店があって
まあ、宝石ショップよりかは安いけど、手に入れてね・・・ネックレスにしてもらったの」


「こんな、高価なモノ・・・いいんだよ、別に」


「ダメ。じゃなきゃ・・・意味、ないもん」








そういえば、アンナさんが言っていた・・・「意味がない」という言葉。


どうして、このルビーでなければ意味がないのか
未だ私には意味が分からなかった。



その真意は、一体・・・?







「今年の私の誕生日にグラハム、ピアスが買ってくれたでしょ?」


「あぁ、サファイアのピアス。私の誕生石だからな、君が私のモノだって言う証と・・・し・・・・もしかして」








繋がる部分が見つかり、言葉を止めた。

するとがコクンと頷く。










「私の、誕生石・・・ルビーなの・・・だから・・・その、グラハムが、ね・・・私の、あのね・・・」









目の前に居るは顔を真っ赤にして
懸命に何かを伝えようとしていた。

その姿を見て、私は思わず微笑み、の頬に触れ顔を上げさせた。








「付けてくれるかな?」


「・・・ぅ、うん・・・」






そう言って、私は身長差を補うために、ソファーに座り
は目の前に立ち、顔をほのかに赤らめながら、そっと私にネックレスをかけてくれた。








優しく首に絡んでくる、腕。


目を閉じれば、緊張して聞こえる彼女の胸の鼓動。


数秒でそっと体が離れ、目の前には・・・愛しい君。


首に下がったネックレス・・・真ん中には、光り輝くルビーの宝石。






私はそっと、その宝石を触れるを見上げる。










「コレで、私は・・・のモノ・・・かな?」

「・・・ぅん・・・」






小さく答えた声と同時に、は私に抱き付いてきた。

そんな彼女を私は優しく抱き返した。











「グラハム」


「ん?」


「ごめんね」


「いいよ」


「それからね」


「何だ?」


「お誕生日、おめでとう」








高価なモノは何もいらない。

ただ、いるのは




君の言葉と。








「ありがとう」








君のモノという証である形をしたプレゼントだけ。






Love proof-熱情の証-
(愛の証を今この胸に、君からのシルシを今この心に) inserted by FC2 system

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