「Mr.ブシドー、お客様です」
「後にしろ」
新しく着任してきた者の実技演習に私は指導している最中
部下が客人だと言って割入ってきた。
「ですが、早急に会いたいと」
「誰だ?」
「ビリー・・・とだけ言えば、分かると言われましたが」
「・・・・すぐに行く。私は客人に会ってくる」
「はい!」
私は踵を返し、部下が報告してきたとおりに
客人・・・カタギリの元に急いだ。
「やぁ」
「どうした、突然来るからビックリしたぞ」
部屋に待たせていたカタギリは笑顔で私を迎えた。
私はあきれ返り、苦笑を浮かべた。
「近くまで来たから」
「暇人だな君も」
「今は暇してるから。それよりも大変そうだね」
「まったく、変な職に付くものじゃないな。・・・緊急の指令が入れば、新人の演習どころじゃない」
「相変わらずそのおせっかいは昔と変わってないね・・・グラハム」
「やめてくれ・・・昔の名前だ。第一、その名前は捨てたし
君がMr.ブシドーなんて名前をくれたんだろ?」
「まぁそれは表向きとして。僕はこっちの方で呼ばせてくれない?
どうも”グラハム“って呼び続けてる年数が長かったからね」
「はぁ・・・好きにしろ」
私は椅子に腰掛けると、カタギリは客人用のソファーに腰掛けた。
「それで、何しに来たんだ?」
「君・・・さんに話してないの?」
「何のことだ?」
「アロウズに所属してることだよ」
カタギリの言葉で、すぐに空気が変わる。
更に私はため息を零した。
「か」
「おせっかいかなって思ったけど、彼女・・・君に違和感を抱いてるよ」
「まさか」
「気付いてないと思ってるでしょ?・・・さん、僕にこう言ったんだよ」
「君から血の匂いがするって」
「!?」
あまりの発言にそれは驚きが隠せなかった。
カタギリの冗談か?と思ったが、そんな冗談を言うためにこんなところまで来ない。
「・・・が・・・そう、言ったのか?」
「うん。最初はそんなになかったけど、最近強烈的に君から血の匂いがするって」
「・・・・・・」
「一般的にMSに乗っていたら、血を浴びることなんてまずないだろ。なのに君から血の匂いがするなんて
おかしいじゃないか。彼女の錯覚か何かと最初は思ったけど・・・そうとも思えなくてね」
「・・・・・・」
「アロウズは反政府勢力や、主義、思想に対しての、非人道的な弾圧を行う部隊・・・表向き良しとされてるけど
この独立治安部隊の正体はこれじゃないか」
「だから?」
「さんが君から血の匂いがするって言ったのは・・・」
「Mr.ブシドー・・・指令が入りました。すぐ来てください」
「・・・・・・・分かったすぐ行く」
すると、突然タイミングがいいように指令が回ってきた。
部下が部屋に入って、カタギリの言葉を遮った。
私は立ち上がり、出動の準備に移る。
「君は、それで正しいと思ってるの?」
「・・・・私は、守りたいから・・・此処にいる」
「だからって、どうして!」
「もう、世界を信用出来なくなったんだ!・・・・3年前のあの戦争で一体、何人の戦友が亡くなったというんだ。
死ななくてもいい命だったかもしれないじゃないか。そうだろ、カタギリ?」
「だけど・・・もし、彼女が聞いたら・・・」
「 き っ と 君 か ら 離 れ て い く よ 」
そのカタギリの声も掻き消すように
私は部屋を出て、出動するのだった。
コックピットのエンジンを入れる。
ふと、先ほどのカタギリの言葉を思い出す。
「離れていく・・・か」
何のために戦う?
己のため?、世界平和のため?
それとも―――――愛すべき、人のため?
未だ私には答えが見つからない。
「ゴメンよ・・・」
そっと、そう呟き
MSを発進させたのだった。
血塗られた仮面
(仮面の奥に潜んだ真実の思いとは?)