すべてを話して、それで道が見出せたら。
一緒に・・・。
「大丈夫か?」
「うん、もう平気」
がソファーに腰掛けて、私はそんな彼女の
隣にすぐさま腰掛けた。
数分前、のお腹の中に新しい生命が宿っていると知らされ
このままでは、お腹の子供諸共彼女を失ってしまう。
仮面を外し、今素顔のままで全てを語る時が来た。
「今から話すことは全部真実だ。嘘偽りは一つもない」
「うん。」
「この話を聞いて、私に失望したのであれば出て行って、養家に戻っても構わない。
私の顔を見たくないのであれば、そのまま縁を切ってくれてもいい」
「グラハム」
その覚悟だった。
これ以上、君を不安にさせるくらいなら、いっそのこと
私から離れて暮らしたほうが幸せだ。
お腹の子供にも、自身にも。
「それで、いいか?」
「分かった。でも、もし」
「ん?」
「もしその話を聞いて、私が貴方から離れたくないって言ったら・・・どうする?」
はまっすぐな瞳で、私を見つめていた。
私はそっと彼女の手に自分の手を重ね――――。
「君の判断に従うさ。離れたくないのであれば、ずっと此処に居ていい」
「分かったわ」
私の答えを聞いたのか、は安心したように返事を返してくれた。
私はそっと瞳を閉じた。
全てを話せば、きっと、彼女は悲しんでしまう。
でも、それよりも、大事なものは・・・・・・彼女の命と、産まれてくる子供の命。
たとえ、離れて、暮らすことになったとしても私は、私の道を行きながら
や、子供が幸せで暮らしていける世界を守るだけだ。
「話そう、真実を」
そう言って、私は瞳を開けて
目の前に居る最愛の彼女と、新しく生まれ来る子供に向けて語り始めるのだった。
「私は、今連合正規軍とはまったく違う部隊に所属している」
「部隊?」
「名をアロウズと言って・・・国家の統合、人類の意思統一を目指して作られた治安維持部隊だ」
「とても、良い事じゃない」
「表向きはな」
「え?」
話の奥深くに掘り下げて、彼女を闇の深い部分へと連れて行く。
でも決して暗闇で迷わないように
私はの手を掴んで離さなかった。
「表向きは確かに、国家統合、人類意思統一だが・・・・そんなのただの部隊維持のお飾りにしか過ぎない」
「じゃあ、本当の目的は?」
「反政府勢力や主義、思想等への非人道的な弾圧・・・これが、アロウズの本当の仕事だ」
「そんな・・・・・・っ」
統一という名を借り、非人道的弾圧を繰り返している。
ようするに、無差別な人殺しと一緒だ。
「君が、私から血の匂いがすると聞いた瞬間・・・多分君には分かっていたんだろうな」
「グラハム」
「私が赦されない行為を繰り返していることを・・・・・・どこかで、君に教えていたんだ」
「何でそんな、アロウズに」
は、今まで私が連邦正規軍に所属しているとばかり思っていただろう。
だが、蓋を開けてみれば、私はその正規軍に隠れて
表向き立派な事をしていると思われて、実はその裏
非人道的な人殺しを繰り返している所に籍をおいている。
「どうして・・・どうしてなのグラハム」
「君自身、私がこんなのをしている事なんて望んでいない事は分かっている。でも、何処に真実があるんだ?」
「真、実?」
「そうだ。人は結局反発しあいながら、争い続けながら生きている。何故一つになれない?何故分かり合えない?
ただの思想や政治の違いで・・・人は争う・・・なら、いっそのことそんなもの全部壊してしまえばいい」
宗教や、思想、政治の違いで人々が争い
未だに一つになれない・・・それは3年前の国同士の争いと同じ。
その争いをどこかで壊さなければいけない。
3年前の戦争で、死んでいった戦友たちの、魂を無駄にしてはいけない。
今度こそ、世界は一つにならなければならない。
「だから、私はあえて・・・アロウズに入隊した」
「話し合いじゃ・・・解決できないの?」
「話し合いも、結局は先延ばし先延ばしにされて
何も解決しない。政治とは、そんなものだ」
「グラハム」
「ゴメンよ、・・・君は、争いで大切な人を失いたくないと
望んでいるのに、君にまたツライ思いをさせて」
「で、でもっ・・・」
「失望しただろ?こんな私に。いいんだよ、それで。
私は君や、子供が幸せに暮らしていける世界だけを創るから」
「グラ・・・ハム」
「話は終わりだ。荷物をまとめるといい。これ以上、君にツライ思いをさせ続けながら私は生きていけない」
私は、掴んでいたの手を離し、隣から立ち上がり
その場を去ろうとする。
これで、いいんだ・・・君も、子供の命も、それで・・・君達2人が幸せになれるのであれば。
この血まみれになった手では、もうも、子供も抱きしめることは出来ない。
「一方的に決めつけて何言ってんのよ、バカハム!!」
「・・・ッ?!」
すると、突然が大声を出して私を静止させた。
あまりに大きな声に驚き、私は振り返り彼女を見ると・・・――――。
「私、何も答え出してないのに・・・何も言ってないのに・・・一方的に追い出そうとしないで」
瞳にたくさんの涙を溜めて、微かに頬を伝い流れていた。
そして表情は少し悲しげであった。
「失望しただろ。私はこんな最低で、人間とは思えないことをしているんだぞ?」
「分かってるよ。でもだからって、私の答えも聞かずに追い出そうとするなんて・・・貴方らしくないじゃない」
「」
「私の答えを聞かないまま、勝手に追い出そうとしないで」
「・・・分かった、聞こうじゃないか・・・君の答えを」
覚悟は出来た。
君が離れていくことも、私には分かる。
だから、どうか・・・違った形で・・・幸せになってくれ。
「私は貴方の側に居るわ」
「 え ? 」
返ってきた答えに、私は驚きを隠せなかった。
どうして?・・・どうして・・・?
予想していた言葉が私が思っていたこととは裏腹で驚いていた。
「何故だ、。私は人殺しだぞ?罪もない人を、殺しているんだぞ?」
「それでも、私は貴方の側に居る。前にも私に貴方は言ってくれたじゃない。
以前の自分と今の自分をひっくるめて愛してくれって・・・だから、私の中には昔の貴方と今の貴方が居るの」
「でも、私は君を悲しませることしか・・・っ」
「以前の貴方だって私を泣かせてばっかりだったじゃない。
八つ当たりしたり、フラッグで無理して動いて血を吐いて入院したり」
「・・・・・・・・・」
「宇宙に行って・・・瀕死状態で、戻ってきて顔には仮面を付けて・・・私を拒絶して。それでも」
「それでも、貴方はちゃんと私の所に帰ってきてくれた」
「」
彼女は優しい微笑みで、私に近づいて頬に触れた。
頬をに伝わる、の温かい手。
「だから、私は貴方の側に居る。貴方から、離れたりしないって・・・決めたから」
「・・・」
「それに、私が居ないと生活できるの?・・・私が居ないとき貴方の
異常行動はカタギリさんから教えてもらってるんだから」
「異常行動、か。まったくカタギリも君に至らない事を吹き込んだな」
「だから・・・ね。・・・この子だって父親の顔も知らないで生まれるなんて可哀想だわ」
そう言って、は私の手をそっと自分のお腹に添えた。
あぁ、感じるよ・・・君の中に宿った新しい命の息吹が。
「この子のパパは、貴方なのよグラハム」
「」
「辛いことも、悲しいことも、二人でずっと乗り越えていこう」
「あぁ」
そう言って、私はの頬に触れ
そのまま唇を重ねた。
「んっ・・・ぁ・・・は・・・」
すぐに私は唇を離し、おでこを付けた。
「なぁ、」
「ん?何」
「結婚・・・しよう」
「グラハム・・貴方」
私は、そう言いながら瞳を閉じて
に語りかける。
「君が離れていくなら、この話はナシにするつもりだった。だけど、此処に残ると、私の側に居てくれると
言ってくれたお陰で・・・この言葉を君に伝えたかったんだ」
「グラ、ハム・・・私・・・わた、し・・・」
瞳を開けて、を見ると
涙を零し私の名前を呼んでいた。
私はそっと彼女の頬を伝う涙を、キスで拭った。
「私をこんなに待たせた罪は重いぞ」
「なら、もっと早く・・・言ってよ」
「3年も前から言ってるじゃないか」
「だって、それは早すぎるのよ・・・バカァ」
「なら、いつ言えばよかったんだ?」
「去年とかでも・・・よかった、じゃない・・・ッ」
「そうだな、ゴメンよ」
そう言って、私はの体を抱きしめた。
「結婚・・・してくれるか、」
「・・・・・・はぃ」
赤い糸が決して切れないように、固く結んで。
「私、頑張ってグラハムのこと支えるから」
「頼みますよ、若奥様」
「だから、ちゃんと帰ってきてね」
「あぁ。・・・帰ってくるよ、君と・・・産まれてくる子供のために」
どんな困難も、2人でこれからも乗り越えていけるよう。
「」
「何、グラハム」
「 愛 し て る よ 」
「 私 も 愛 し て る わ 」
永久に、幸せで居ることを此処に誓います。
永久にともに〜Forever Lover〜
(赤い糸が切れないように、離ればなれにならないように・・・同じ道を歩んでいこう)