「出たぞ!怪盗フラッグだ!!」
「捕まえろ!!」






満月の昇る夜
人々はすでに寝静まっている中、警察がある人物を追って町中を駆け回っていた





一方、そんな警察を嘲笑う様に、一人の人物は屋根の上を颯爽と走っていた





「君たち、私を捕まえられるかな?」





夜の闇に溶け込むほどの漆黒のマントと、シルクハット
そして、スーツ・・・。
片目には、丸いレンズをしていた。





その風貌は、かの有名な怪盗アルセーヌ・ルパンを思わせる程








彼の名前は怪盗フラッグ

今、世を騒がしている怪盗だ。


金品・宝石を奪っては元の持ち主に返すという

優しい怪盗なのだが、結局は人様のものを盗んでいることに

変わらないため、警察は手を焼いている。

彼に対する意見は国民賛否両論であるため

どう対処していいのか分からないらしい。











「今宵も、私の勝ちだな・・・諸君。」







彼は、ニヤリと笑みを浮かべ屋根の上を走っていた。









「居たぞ!・・・逃がすか!!」



「!?」







すると、一人の金髪の男が現れ、銃口を彼に向け
引き金を引いた。














ドォン!!












「ッ!?」




「かすったか!」






銃弾は怪盗フラッグの左腕をかすめた。
彼はよろめきながら、それでも逃げる足を止めず何処かへと走る。






「伯爵、フラッグは?」
「逃がしたが・・・奴に怪我を負わせた。そう遠くへは行けまい周囲を探すんだ」
「はっ!」






金髪の男は、警察官にそう言って
拳銃を服の中にしまいこみ、フラッグを探しに行った











「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




フラッグは誰にも気づかれないように
細い路地裏に身を潜めていた。
左腕が痛いと思い、右手で押えて月明かりで見ると
純白の手袋が、朱色に染まっていた





ジー、ジー、ジー・・・




すると、彼の耳に突如として機械音が流れてきた
レンズに搭載されている通信機が彼の耳に入ってきたのだった





『・・・ハム・・・グラ、ハム・・・』
「はぁ・・・はぁ・・・カタギリか」
『どうしたの?社交界で有名な侯爵グラハム・エーカーさん』
「今は、怪盗フラッグだ・・・」






フラッグの本名、いや正体は
社交界屈指の若手侯爵グラハム・エーカーであった。
何故彼がこの怪盗業をしているのかは、謎である。

そして、通信機で話している男は
彼の旧友で同じく侯爵のビリー・カタギリである
グラハムを影でサポートしている。





『で、息が上がってる理由は?』
「ジョシュアに・・・やられた」



ジョシュアとは、先ほどの金髪の男である。







『と、言うと・・・まさか、撃たれたの?』
「利き腕をな。かすったんだが・・・どうも、痛みと出血がひどくてな・・・」
『動ける?』
「今、下手に動くと警察の連中やジョシュアに見つかる。路地裏に隠れてるが・・・時間の問題だ」
『そう。とりあえず・・・何処かに隠れて、奴らが引き上げるのを待つしかないね』
「そうだな・・・切るぞ・・・何だか連中が来そうだ」
『分かった。無事を祈るよ』
「あぁ」




そう言って、グラハムは通信を切った。
負傷した左腕に右手を沿え、出血を抑えて
路地裏を歩いていた。





「(何処か・・・隠れる場所を・・・)」





すると、路地裏にも関わらず扉が開きっぱなしな古びた木造の建物があった。
グラハムは「しめた!」と思い、その扉へと駆け、中へと入り閉めた。





「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




扉を閉めた、グラハムはその場に座り込んだ。
出血が多いせいか、手袋に染み込み自らの手にも血の
ぬるりとした感触が伝わってきていた。

出血のおかげで、視界が徐々にぶれ始めてきた
息もさっきにもまして上がる。





「(階段・・・・・・上があるのか?)」




すると、ぶれる視界の中でグラハムは階段を見つける。
ここに居たら見つかるも知れない、彼は危険回避のため精神力だけで立ち上がり
階段を上る。






「・・・窓、開いてる・・・誰か、居たのか?」



2階に上がると、窓が開いて月が燦然と輝いていた。
窓の近くには、白いシーツと毛布のベッド

グラハムは其処に着くなり、その場に座り込んだ・・・もう今は動く体力すらない





「(ジョシュアの奴・・・今度会ったら、どうしてやろうか)」





銃口を向け、銃弾を放ち自分に怪我を負わせたジョシュアに
グラハムは心の中で悪態をついていた

もしかしたら、自分はここで死ぬのか?

グラハムはそんなことも脳裏に浮かび上がってきていた。

まぁ役目を全うして死ねるなら本望だろう、そう彼は心の中で思っていた。






ギシッ





「誰?」





すると、背後から声がしてグラハムは振り返る

其処には、20前後の幼さがまだ残っている少女が居た。

少女は大きな瞳でグラハムを見ていた。


だが、グラハムはすでに逃げることもできず


出血の多さに、その場に気を失ってしまった。


胸に熱い想いが生まれながら









月夜の訪問者
(初めて、君を見た瞬間、心がひどく熱かった)




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