「出たぞー、怪盗フラッグだ!!」
「あっちだ、追えー!!」
「逃がすな!!」
ある真夜中、私は相変わらず怪盗をしていた。
大体の依頼はレイフ・エイフマン公爵のが大半である。
元はあの方が私にこの仕事をしないかと持ちかけた人物だ。
初めてもう何年になるだろうか
今では世を騒がす怪盗までになってしまった
私は奪った宝石を、元の持ち主に返して
屋根の上を走っている最中だった。
「(もう、追ってこないな)」
大分、遠くまで逃げ切り誰も追ってこないことを確認する。
私はそれを確認し終えると、マントを翻し自宅とは逆方向に足を走らせた。
私が向かった先、それは・・・
トン!
「っ・・・誰?」
「こんばんわ・・・お嬢さん」
「怪盗さん」
愛しい彼女の元だった
窓がいつものように開いていたので
私は其処に降り立った。
突然の私の登場に、彼女は驚きを隠せなかった
「また、来ちゃいました」
「・・・ぁ、あの・・・お怪我のほうは・・・?」
「見てのとおり、もう全然平気です。心配してくださってありがとうございます」
私がにっこりと笑うと、彼女は安堵のため息をついた。
もしかして、窓を開けていたのは私が現れると
思って待っていたのか・・・?
「窓、・・・無用心ですよ、閉めたほうがいいです。」
自惚れないように、私は彼女に窓を開け続けることに
注意を促した。
すると、彼女は目を泳がせながら・・・
「ぁ、あの・・・だって、・・・また、貴方が・・・来ると、思って・・・」
「私の、ために・・・?」
「はぃ。・・・この前の、キスの意味・・・知りたくて・・・っ」
この前とは、彼女と初めて会った日のこと。
あの日、私は去り際に彼女にキスをした
「アレから、自分なりに考えたんですけど・・・どうしても、分からなくて・・・っ」
「分からなくて・・・私が現れるのを待って、窓を開けていたのかい?」
「はぃ」
「ずっと?」
「はぃ」
「こんな真夜中にずっと、君は私を待ち続けていたんだね」
私は、窓からベッドを通り越して彼女の目の前に降り立った。
近くで見る彼女の顔は赤く染まっていた。
この前のように私は彼女の顔を両手で包み込んだ。
「怪、盗さん」
「本当は、気づいてるんじゃないのかい?君自身、どう表現していいのか分からない気持ちに」
「私・・・わた、し・・・っ」
「ん?」
「貴方が・・・好き」
まっすぐな瞳で私を見つめている
胸の奥が熱い
「私も、君が好きだ」
いつの間にか自分だけが彼女に惹かれているとばかり
思っていたのに、彼女もまた私と同じだった
「怪盗、さん」
「フラッグと・・・呼んで」
君とは、本当の私とは逢えないけど
今、怪盗言う身分では君とは同じでありたい
「フラッグ・・・」
「もっと、私を呼んで」
狂おしいほど、君を好きな私を
『アレ?ドア開いてるな・・・2階か?』
「!?」
突然の訪問者で私と彼女は驚いた。
しかも、この声・・・ジョシュアか?!
「ぁ、・・・あ、・・・か・・・彼が・・・」
「どうやら、私は少し厄介な相手の彼女を好きになってしまったらしいな」
「え?・・・フラッグ?!」
そう言って、私は彼女から離れ窓に手をかける
「君の彼とは、少々因縁めいたものあってね・・・今夜は引くよ」
「また、逢える?」
すると、彼女は寂しそうな顔で私を見ていた
私はそんな彼女の顔を見て
「当たり前さ。毎晩、君に逢いに来るよ」
「ホント?」
「あぁ。愛しい君のためなら、何をしたって逢いに来る」
「うん」
「では、またな」
そして、私は窓から飛び降り駆けた。
「・・・フラッグ・・・」
「どうした?ドア、開けっ放しで」
すると、グラハムが去った直後、2階にジョシュアが現れた
「ジョシュアさん・・・うぅん、何でもないです」
「そうか。今日も冷え込む、窓も閉めて暖かくして寝るんだぞ」
「はい。」
そう言って、ジョシュアは彼女を抱きしめた。
彼女は、彼の腕の中で目を閉じ・・・
「(・・・フラッグ・・・)」
ただ、本当に愛しい者のことを考えていた。
そして、私たちは互いに惹かれ合った
(怪盗に恋に落ちた彼女、でも彼女を愛する男は別に居た)