俺には、愛してやまない女が居る
「あ、ジョシュアさん」
「・・・元気か?」
「はい、今日もいい天気ですね」
「そうだな。」
花屋で働いている娘に俺は相当惚れこんでいる
一言で言えば俺の一目惚れだ
時々こうやって、店を訪れたり、また家に訪れたりとしている
彼女も俺に心を許しているのか、俺を優しく迎えてくれる。
「あら、伯爵いらっしゃいませ。」
「こんにちわ。」
「よかったわね〜、伯爵が来てくださって。最近、貴方をお見かけしないからこの子、元気なかったんですよ」
「ちょっ、ちょっと・・・そんなこと言わなくても・・・!!」
「そうなのか?」
店主が笑いながらそういうと、彼女は顔を赤らめながら俺を見る。
無意識な上目遣いがとても愛らしい。
「・・・あ、あのっ・・・その・・・お元気かと・・・思って・・・」
「それで?」
「最近お姿を見かけないから・・・どうなさったのかと、・・・・・・」
「心配してくれたのか?」
「・・・はぃ。」
「そうか、ありがとうな。」
そう言って、俺はの頭を優しく撫でた。
彼女は嬉しそうに私の顔を見て、笑った。
「あ、そうだ・・・ジョシュアさん、お花のブーケ作ったんです。
よかったらお部屋に飾ってください。奥にありますから取ってきますね!」
「あぁ。」
彼女は嬉しそうに、店の奥へと引っ込んだ。
俺はそんな彼女の後姿をずっと見つめていた
「最近、あの子・・・綺麗になったでしょ?」
「え?・・・えぇ、まぁ」
すると店主が、俺に話しかけてきた。
俺は浅い返事で返したが、最近確かにが綺麗になったことが
久々に逢ったのだが窺える
「やっぱり、伯爵のおかげですよ」
「ぉ、・・・私は、別に・・・あの子が笑うだけで幸せですから」
「そうですよね・・・あの子の笑顔が、貴方の元気の源のようですからね」
「・・・そうですね・・・」
生きている限り、俺は彼女に愛を注いでいくつもりだ
何があっても、俺は・・・
「はい、ジョシュアさん・・・これ、お部屋に・・・・・・ジョシュアさん?」
「・・・守るからな、必ず。」
「え?・・・・・・はい。」
この、温かい笑顔のため
何を擲ってでも、俺は守りたい・・・俺の誇りを懸けて、俺の全てを懸けて
「しかし、伯爵・・・コレは、いけませんね・・・」
「やはり肋骨がやられていたか」
の店を去った後、俺は医者を家に呼んだ。
腹部にひどい痛みを感じていた
もしかしたらと思ったが・・・案の定、肋骨が2本ほどやられていた
「いかがなされたのですか?激しい運動とか?」
「いや、この間・・・怪盗フラッグに、腹部を棒のようなモノで殴られ気絶させられた」
「多分それが原因でしょう・・・しばらくは安静が必要かと・・・」
「しかし、フラッグを野放しにすると・・・また、被害が・・・!イッテェ・・・」
「ホラホラ、ご無理をなさるから・・・」
肺に近い肋骨・・・下手して大声で叫ぶと、折れている肋骨に痛みが走る
「いいですか、しばらく安静です・・・フラッグを追いかけるのは怪我が完治してからです」
「しっ・・・しかしっ・・・!!」
「伯爵!・・・ドクターの言うとおりにしないと、今度は肋骨だけじゃ済まないかもしれないんですよ?」
「・・・・・・」
今、此処で俺が進んだ足を止めるわけにはいかないのに
でも、今以上に怪我が悪化してしまえば体すらも動かなくなる
「分かった・・・」
苦渋の決断だった
進んでいる足を止めるなんて、俺のプライドに反するからだ
でも体が思うように動かなくなってしまうのは、何よりもダメなこと
今、体を休めるしかなかった。
コンコン・・・!
「はい?・・・あ、ジョシュアさん」
「起きてたか」
「えぇ。もう、寝るところでしたけど・・・どうしたんですか?」
「ちょっと・・・な。」
「どうぞ・・・コーヒー淹れますね」
俺は、今日昼間逢ったのにも関わらず彼女の家を訪れた
それなのに、彼女は嫌な顔一つせず私を出迎え、中へと入れてくれた
「どうしたんですか?御付の人も連れないで・・・無用心ですよ」
「鍵を閉めないのが一番無用心だと思うがな」
「アハハ・・・すいません。」
俺は、が作ってくれたコーヒーを口に運ぼうとした途端・・・
「っ!?」
「ジョシュアさん!?」
ガシャン!!
肋骨の痛みが体中を駆け巡り
俺は持っていたコーヒーカップを、床に落とし中が零れ出た
突然のことで彼女も焦り、俺に駆け寄る。
「ジョシュアさん!・・・ジョシュアさん、大丈夫ですか?!」
「・・・だ、大丈夫だ・・・心配、するな・・・」
「そんな苦しそうな声で言われても心配するだけです!・・・どこか、痛むんですか?」
彼女は苦しい表情で俺を見つめている。
俺は痛みを堪えながら・・・彼女に言う。
「肋骨を、軽く2本ほど・・・折った」
「え?・・・大丈夫、なんですか?命には・・・」
「別状ないんだが・・・肺に近いところがどうも折れてるらしく」
「どうして・・・そんな・・・っ」
俺は、一旦目を閉じて・・・再び目を開き、彼女を見た。
「俺は、怪盗フラッグを追っている」
「え?・・・フラッグ、を」
突然の告白に、は目を大きく開いた。
今まで黙っていたことを俺は話し始める。
「俺は、どうしても・・・アイツを追わなきゃいけない理由があるんだ・・・」
「じゃあ、これは・・・」
「この前・・・アイツと接触した時・・・折られたんだよ・・・まさか、アイツが武器持ってるなんて思ってなかったけどな」
「そんな・・・っ」
すると、彼女は瞳にたくさんの涙を浮かべ、流した。
ごめん、ごめん・・・君を悲しませるつもりはなかったのに
「ごめん・・・」
俺は、痛みを堪えて泣いているを抱きしめた
でも、俺はこの時・・・彼女の涙の本当の理由を知らなかった。
涙は、知っている
(その優しい涙の奥に隠れた真実は)