「 貴 方 な ん か 大 嫌 い よ 」
そう言われ、私は彼女に逢うのを止めた
いや、逢う資格が無いんだ
あの子の最愛の・・・ジョシュアを傷つけられ
私はあの子自身をも傷つけてしまった
「グラハム」
「ぁ、カタギリ・・・来てたのか」
「落ち込んでるね、相変わらず」
すると、カタギリが私に声をかけた。
今日来るとは聞いていたが、私はどうやら
彼がきたことにも気づかないくらい落ち込んでいるらしい
「まだ、根に持ってるの?」
「邪念を捨てなければ仕事も手に付かないとよく言うが、まったくそのとおりだ」
「残りすぎなんだよ君は」
「そうだな。」
私は深くソファーに凭れかかり目を閉じた。
今でも、思い出す
あの子の、あの軽蔑の眼差し
泣いて私を軽蔑する眼差し
互いに好きだと認め合い、信じていた仲なのに
きっと歯車はどこかで狂うように
仕組まれているのだなと
私はそう思ってしまった。
「いつまでもウジウジしてると、次の仕事手に付かないよ?」
「分かっている・・・分かっているさ」
自分の中でそう言い聞かせているものの
いつまでも煮えきれない気持ちが、残っていた。
「旦那様、馬車のお支度が」
「あぁ、すぐ行く」
「どっか出掛けるの?」
「どこか名前の知らない貴婦人に呼ばれてな・・・逢いに行くだけだ」
「じゃあ僕も付いていく」
「面白ことは何もないぞ」
「それでも行く、君に声をかけて貴婦人の顔を見たいからね」
「まったく」
私は呆れながら、カタギリとともに
執事が用意した馬車へと乗り込み、出掛けるのだった。
「何か喋ったら?」
「あ?」
馬車に乗り込むと、私は無言の状態で窓の外を見ていた
カタギリに声をかけられ彼の顔を見る
「人の話し聞いてた?」
「・・・すまない」
「物思いに耽るのもいいけど、人の話は聞くべきだよ」
「・・・はい」
どうやら、私の心の中で根深く残っているようだ
「私は最低な男だよ、カタギリ」
「グラハム?」
私は苦笑しながら、口を開く
「一人の女性ですら、愛せない・・・最低な男さ」
「あれは仕方の無いことだよ・・・本当の君を知らない、だから君は彼女を遠ざけた」
「もう少し・・・いい方法があったのに・・・私と来たら」
最低な男を演じるしかなかった
「でも、あぁでもしなければきっと彼女は・・・」
「悲しむだけだもんね」
一途に幸せを願いたい
側で見守れないけれど、どうか幸せであって欲しい
私自身の手で愛せないけれど
「止めてくれ」
「グラハム?」
私は運転手に馬車を止めるよう促し、馬車から降りた。
私が降りた場所は・・・
「エーカー侯爵様・・・いらっしゃいませ」
「あぁ。」
彼女の花屋だった
フラッグとして逢えない分
本当の私として、君に逢うのは許されることだろうか?
赦されない罰を背負い
(それでも君に逢いたいと望んだ自分が居る)