心が痛い
毎日、毎日、頭の中は彼女のことばかりで
でも、フラッグとして逢えばきっと彼女はまた
悲しんでしまう。
「グラハム、もういいんじゃない?」
「何がだ?」
私はいつもどおり、怪盗の準備をしていた。
サポート役のカタギリがマントを羽織っている私に問いかけてきた
「もう、忘れたら?」
「え?」
「彼女のことだよ。これ以上、君いくら失態を続けるつもりだい?」
「・・・・・・」
私は着衣をする手を止めた。
ここ数日、怪盗劇を繰り返しているが
どうも調子が乗らず、失敗ばかりを繰り返している
おかげで少しずつ警察の威信は取り戻され
私のプライドはズタズタにされている
「公爵も、君が失敗続きなのを心配はしてるけど・・・一方では良いとは思ってないから」
「分かっている。」
「分かってないから僕は言ってるんだよ。これ以上君の失敗するところは見たくはないし
君のプライドだって傷ついてる・・・君が調子に乗らない原因くらい僕だって分かってる」
カタギリはそう言うと、私は押し黙った。
「彼女が原因で、調子が乗らないなんて・・・公爵には言ってないけど。
そんなこと知られたら前代未聞だよ?・・・公爵は僕らを信頼してこの仕事を依頼してきてる。
その信頼を君は今、自分の事だけで裏切ろうとしてるんだよ。」
「カタギリ」
私が調子が乗らない原因は
最近逢っていない、彼女が原因だった
酷い別れ方を選択した自分の決断
でも、今でもそれが引きずって今現在の私に至る
「いい加減、自分のするべき事と彼女への想い、どちらかを選んだほうが良い。僕はそう思ってる。」
「覚悟を決めろって事か」
「そうだね、いつまでもこの状態を続けてしまえばいつか君は」
「 墜 落 し て し ま う よ 」
カタギリは苦笑を浮かべながら私を見ていた。
そう、彼は彼なりに私を心配しているんだ
「分かった、私もけじめを着けてこよう」
「うん。すまないね、こんなこと仕事前に言って」
「いや、いいんだ。いつまでもこの状態を続けるわけにはいかないからな、メンツの問題もある」
私はマントを翻し、シルクハットを被り、左目にレンズをつけた。
もう、こんなところで足止めをしていてはいけない
先に進まなければ・・・そして・・・
自分の気持ちをはっきりさせなければ
その日、どうにかカタギリのサポートあって
仕事をこなす事が出来た。
私は依頼物を元の持ち主に返し、ある場所へと向かった。
「(起きているだろうか)」
そう、彼女のいる部屋。
いつもなら開いている窓が、今日は閉じていた。
私は部屋の目の前の屋根の上から、じっと場所を見つめていた。
もし、あの日のように罵られたらどうしよう
あの日のように、蔑まれたらどうしよう
あの日のように・・・
悲しい涙を流されてしまったら、もう私は・・・
「彼女を愛することから手を引く・・・そう、決めた。」
悔いは無い、でも、わだかまりが残る。
でも忘れて・・・世のため、人のために、怪盗を続けよう
そう心に決め
私は彼女の窓をノックした
----コンコン!
窓を叩くと、彼女は驚いた表情で窓を開けた。
「・・・こんばんわ・・・」
「!?・・・・・・フ・・・フラッグ・・・!!」
彼女は、目を見開かせ私を見ていた。
数週間振りと会う、君の顔
逢いたくて、逢いたくて・・・。
想いが募ってしまっていた
「フッ・・・フラッグ・・・ど、して・・・」
「どうしても、貴女に・・・逢いたくて・・・どんなに罵られても、それでもいいと・・・」
罵声を浴びろうが、蔑まれようが、構わない
君に伝えたいことがたくさんありすぎて
だから・・・お願いだ
「少しだけ、話を・・・させてください」
伝えたいことがある
どうしても、君に言わなきゃいけないこと
何を言われたっても構わない
だから、お願い
どうか、私の声を聞いて
(募る想いを今、君に伝えよう)