「話って・・・なんですか?」
蔑んだ目で、追い返すのかと思った
だけど違った。
彼女は、とても優しい目で、語りかけるように
私に話しかけてきた。
「本当の、気持ちを・・・君に伝えに来た」
「本当の・・・き、もち?」
「あぁ。」
私はゆっくりと、重い口を開いた。
「この前の・・・言葉は、私の本心じゃない。あれは・・・これ以上、君を傷つけないためにとった行動なんだ」
「私を、傷つけない・・・ために?」
「私は、君を愛してる。愛してるからこそ、君を傷つけたくなかった。
でも・・・君は・・・私が彼を、傷つけたことによって・・・深い悲しみを味合わせてしまった」
何よりも怖かった
人を傷つけることがどれほど恐ろしいものか
だけどあの時は・・・自分を身を守るので精一杯だった
半分は自分の邪心という、よこしまな心が入ってるのだが
「この手で、人を傷つけてしまった。だから、もう私には後戻りが許されなくなった。
いつ、この手が血に染まるか分からない・・・そんな汚れきった手で、君を・・・」
抱きしめたりは出来ない。
愛したりは出来ない。
そうする資格が無い。
怪盗という悪に手を染めてしまった、私が・・・君を愛することなんて出来ないのだと
それを知ってしまったとき・・・どれほど、絶望の淵に叩き落されたことか。
「だから、あの時・・・あえて、私は君を遠ざけた。酷い言葉を君に言ったものだな・・・最低な男だよ」
「ち、・・・違う・・・っ・・・フラッグは・・・」
「いいんだよ。君を傷つけてしまったのは事実だ・・・でも、君を遠ざけてしまったのに・・・こんなにも」
「君が恋しいなんて、想った気持ちは無い」
「・・・フラッグ・・・」
離れようと何度自分の中で言い聞かせてきたことか。
それでも、頭の中は君でいっぱいで
本当の私の姿で、君に逢いに行けば、想いは募るばかりで
ジョシュアよりも独占したいという醜い気持ちが強まって
「狂っていくんだよ・・・君が、私の全てになったあの瞬間から・・・君が何よりも恋しいと、愛しいと」
「フラッグ」
「今は、すまないとだけしか言えない。全てを話すことは出来ない・・・でも、コレだけは覚えておいてほしい」
「 私 は 君 を 愛 し て る 」
ジョシュアよりも、この気持ちだけは絶対に負けない
君を想う気持ちは誰よりも強いと思ってる
本当の私じゃ、きっとこの言葉は言えないかもしれない
けど、今の・・・フラッグとしての私なら・・・全ての気持ちを伝えることが出来る
「それだけが、伝えたかっただけなんだ。夜分にすまない・・・」
「ま、まっ・・・」
「そろそろ、帰るよ・・・これ以上、君に迷惑はかけれないからな」
私は窓に手をかけ、飛び出ようとした瞬間
「!!」
「待って・・・私の、話も・・・聞いて」
彼女が私の腰に腕を回し、後ろから抱き付いてきた
あまりに突然のことで、驚いている。
まさか・・・彼女が・・・私を止めるなんて、思ってもいなかったからだ
「一方的に、喋っていかないでよ・・・私、何も言ってない・・・貴方に、謝ってもいないのに・・・勝手に行かないで」
謝る・・・どうして・・・?
私は振り返り、彼女を見た
「君が謝る必要が何処にあるんだい?あれは、私が悪いと」
「私だって悪いって思ってるの。貴方に・・・大嫌いなんて・・・言って・・・」
「ぁ」
そうだ、君は私にそう言って
私を蔑んだね。
「貴方が人を傷つけるなんて、思ってなかったの。でも、あんな言葉・・・言うつもり無かったの・・・でも、あの時の貴方が怖かったから」
「・・・ごめん、ごめんよ」
彼女は泣きそうな声で私に言ってきた
私は思わず彼女を抱きしめた。
「信じたくなかった・・・貴方から裏切られたようで、怖かった」
「ごめん。・・・私もあんな酷いこと、君にしてしまった。いくら謝っても足りないくらい」
「私のほうよ、それは。貴方を信じてあげれなくて、貴方を蔑んだ私を許して」
許すも何も、君は始めから何も悪くないのに
泣かないで、泣かないで、君に泣かれるのが、一番辛いのに
「もう、泣かないで・・・側に居るから」
「・・・フラッグ」
「もう、離さないから・・・頼む」
「涙を流さないでおくれ」
愛しい君だからこそ、大切にしたい気持ちが溢れる
愛しい君の涙は、私を弱くする。
「笑顔でいて・・・ずっと、ずっと・・・笑っていておくれ」
「ぅん・・・貴方も、私の側に居て・・・」
「側に居る、約束する。君をもう、二度と傷つけたりしない」
「うん。」
そう言うと、彼女はとても穏やかな顔で微笑んだ
あぁ、そうだ・・・この笑顔を大切にしたいから
守りたいから・・・
「好きだよ・・・愛してる」
「私も、愛してるわ。」
そう言って、私と彼女は唇を重ねた。
そういえばこんな日だった・・・君と私が出会ったのは
月の輝く、晩・・・突然の訪問者を迎え入れた君
そして優しくしてくれた君
君の全てが、私の全てだ。
今は怪盗フラッグとしてしか、君には逢えない
でも、全てが終わったら
必ず話すから・・・・・待ってて欲しい
その時は、怪盗フラッグとしてではなく
一人の男、グラハム・エーカーとして・・・私を愛して欲しい
いつか話せるその時まで
(全てを話せたとき、きっと驚くと思うけど、変わらず私を愛してください)