「姫・・・今日もいい天気ですね」
「ぁ・・・・はぃ」
私が仕えているのは、この国の姫様。
7つと歳が離れているが、少女のあどけなさを残し
全ての人に平等に接する、とても心の清らかな方。
いつも、私に逢うたびに彼女は顔を真っ赤にして
言葉も、切羽詰ったような喋り方をし
本当に可愛らしい姫様。
「本日も、姫は美しいですね」
「じょ、冗談はやめてください。・・・煽てても、何も出したりしません」
「冗談・・・ですか」
「Mr.ブシドー?」
彼女は私の言う言葉全てを”冗談“だと思っている。
何故?私はこんなにも貴女を愛してやまないのに
貴女だけに仕える喜びを、知っていますか?
これ程、誰かを心の奥底から愛したいと願った・・・望んだ人は貴女以外誰も居ないのに。
「ぁの・・・えっと、ごめんなさい・・・っ」
「え?」
すると、突然姫様が私に謝ってきた。
あまりに突然の事で、私は目を見開かせ、驚いた。
「別に、そんなつもりで・・・その・・・貴方が、嫌いとか・・・そういうわけで言ったつもりは・・・ないと言うか・・・」
「姫」
何気ない仕草や、感覚、空気で感じ取ったのか
彼女は私に謝罪をしてきた。
私は、ため息を小さく零し、彼女の目の前で跪いた。
「姫に、ご心配をさせてしまい真に申し訳ございません。不安にさせるつもりで私も言うべきではなかったので
気を悪くしたわけではございません、どうぞ御安心ください」
「それなら、よかったです」
ふと、彼女の顔を見上げると
まるで、蒲公英(たんぽぽ)の綿のように優しく、ふんわりと微笑んだ。
あぁ、私は貴女がそうやって絶えず、笑顔を見せてくれてさえすれば幸せです
貴女にだけ仕える喜び・・・ただ・・・・・・
時々、憎くてたまらない。
それは、寝床での事だ
貴女の姿が、すぐ側にあるというのに・・・
「お休み、なさい」
「姫・・・良き夢を」
ゆっくりと閉められた障子、今まで仄かに灯されていた部屋の明かりが消え
夜の静寂が、闇が、其処ら中包まれる。
貴女はすぐ其処に居る。
だけど、この障子一枚が憎くてならない。
本当は、もっと近くで、もっとお側で、貴女を見ていたい、守りたい。
なのに、それは叶わない夢のまた夢。
貴女に、もっと、もっと・・・近づくことが出来るのなら
近づく事を許されるのなら
この一枚を蹴り破って、貴女を奪い、愛したいと望んで、求めてしまうだろう。
障子一枚の隔たり
(それは許されない身分の差の恋)