「姫・・・私からの文です」
「あ、ありがとうございます。明日にでも返事書きます」
「慌てなくていいのですよ。では私はこれで」
Mr.ブシドー・・・いや、彼・・・グラハムと仲良くなり
私と彼は文を交換するようになった
彼の前になると、私はどうしても上手く喋ることが出来ない。
男性とは思えない美しい顔立ちに、顔の半分隠された仮面
始めは恐ろしい男だと思っていたが、父上の信頼する者と聞いて
安心したと同時に、心が酷く動いた。
今までこんな気持ちになったことがなくて
どうすれば、その気持ちが彼に伝わるだろうと思って考えるけれど
何も思いつかず・・・すると、彼がこんな提案をしてくれた
『姫、私と文の交換をしましょう』
文だったら顔を見ずとも、自分の思ったことが書ける。
それだったら私にも出来る事・・・彼の顔を見るたびに何を話せばいいのか分からなくなるから。
私は早速彼から貰った文を開く
『朝も、昼も、毎日姫様の心配ばかりをしております。
四六時中貴女様のことばかりを考えてしまい、御館様からこの前叱責されてしまいました』
「フフフ・・・おかしな人」
『それでも、私の頭の中は姫様の事で埋め尽くされております。姫様と御話をするだけで
私はとても幸せで御座います。何時も貴女のお側に居るだけで、私は至福です。』
「グラハム」
毎回、彼の送ってくる文は、まるで付け文のよう。
私を想うとか、私のことばかり考えるとか、私の側に居るだけで幸せとか
送られる文は、愛の言葉に似たものばかりを囁く
その一文、一文見るだけで嬉しくて・・・照れてしまう。
そして、何時も最後には。
『いつまでも私は貴女様のお側に』
優しい文章を残して終わる。
国で一番強いとされる武将
そんな彼が、私にこんなにも愛溢れるような・・・文をくれる。
だから、何とか私も拙い言葉で・・・貴方に一生懸命伝わるような文を
私の気持ちを・・・届くように綴ります。
「・・・フフ」
「ん?どうしたの、グラハム?」
「いや、何でも」
「また、艶書でも貰ったの?」
「さぁな。」
私はそっと、姫から貰った文を胸に締まった。
『拙い言葉ではありますが・・・私もいつも貴方の事ばかり考えてしまいます。
まるで・・・物思いに耽るように。この気持ちがなんなのかよく分かりません。だからお願いです
今度、教えてください・・・文ではなくて・・・貴方の声と、言葉で。』
付け文に託す恋の唄
(届け、アナタの心にこの気持ちが伝わるまで)