「お願い・・・ッ私を、攫って・・・ねぇ、グラハム」
「姫、しかし・・・っ」
【姫としてではなく、一人の女性として】
彼女は私にそう言ってきた
あぁ、何と言う事だろうか
武将としてでなく、姫としてでなく・・・私達は出逢っていれば
こんな苦しい思いも、切ない思いもしなくて済むのに
「もう、イヤ・・・何処かに行くくらいなら・・・貴方と共に・・・この世から消えたい」
「姫」
「初めて・・・私は、初めて・・・貴方に出逢って、色んな事を知りました。楽しい事も、嬉しい事も・・・・・・そして・・・・・」
「 貴 方 を 好 き だ と い う 気 持 ち も 」
「・・・姫っ」
初めて、彼女の口からその言葉を聞いた。
好き?貴女が・・・私を?
「姫・・・今、何と?」
「貴方に逢うたびに、貴方と文を交わすたびに、いつもいつも貴方の事で頭がいっぱいになって
何を考えるにも貴方だけを考えて・・・でも、縁談の話が持ち上がった瞬間・・・貴方から離れてしまうと思ったら
怖くなって・・・離れたくない・・・グラハム・・・私は貴方から離れたくありませんっ」
「・・・姫・・・姫様っ!」
「グラハムッ!」
そう言って泣き崩れる姫を私は抱きしめた。
あぁ、私も遂に許される事が出来ないところに足を踏み入れてしまった。
この方を抱きしめてしまった以上・・・私はもう後戻りすら出来ない。
「分かりました」
「グラハム?」
私はそう言って、姫の手を握り・・・目を閉じ・・・
「その命令・・・この私にお任せください。何処までも・・・たとえ地獄の果てであろうと、貴女様を連れ攫って差し上げます。」
目を閉じて あとは従うだけ
(貴女の為なら例え、罪を作ろうが従い続けます。それが貴女の命令でなく願いなら)