「はぁ〜・・・どうしたものか」
「どうしたの、グラハム?」
今日も、今日とて、カタギリがいる化学準備室に
私は篭っていた
盛大なため息をついた私にカタギリが尋ねてきた
「いや、彼女と、と付き合い始めて・・・もう数週間だ。それなのに、どうしてだろうか」
「何かあったのかい?」
「最近、キスだけじゃ満足できなくなってきた」
「ブッ!?」
すると、カタギリは口に含んでいたコーヒーを
思いっきり吹きこぼした。
「汚いぞ、カタギリ」
「そうさせたのは、君でしょ!!!何て事を言うんだい、此処は学校ていう神聖な場所だよ」
「分かっているが、本当の事だから仕方ないだろ」
「もう、君って人は・・・」
カタギリは口をハンカチで拭っていた。
「理由は?」
「何がだ?」
「その、キスだけじゃ満足できなくなった理由」
そうカタギリに問われ、私はため息をついて
「ようやく、あの子が手に入った時・・この世の終わりだと思うくらい幸せだった」
「君の次の日の浮かれようといったら・・・まぁ、そうだろうね」
「でも、いつかは・・・あの子はきっと私から離れていってしまう」
「で?」
「だから、離れないように・・・キスだけで繋ぎとめていた・・・でも、もうそれだけじゃ
ダメだと・・思い始めてきたんだ。私は、いっそのことあの子を、あの子の全てを自分だけのモノにしたい」
いつかは離れていってしまうと怯えている
キスだけの関係じゃ、収拾がつかなくなってきた
いっそのこと自分の、自分だけのモノにしてしまいと
「それ、実行に移せてる?」
「私には、出来ない・・・あの子を、を穢すことなんて」
「グラハム」
口では言ってみるものの
本当にそれを行っているのかと言われると
正直なところ出来てない
いや、出来ないんだ
「あの子が・・・綺麗過ぎるんだ。」
『先生!』
「あの子の存在全てが・・・私には眩しすぎて」
『エーカー先生・・・?』
「私には、あの子を穢すなんて出来ないんだよ」
『先生がスキです』
白く、何も知らない彼女を穢していく怖さに怯える
そうしたいと願っていても
実際のところ、それを実行できない自分が憎たらしくて
もどかしくて・・・
「情けないものだな」
「君でも悩む事あるんだ」
「失敬な。私だって悩み事の一つや二つあるさ」
「もういっそのこと言っちゃえば?私は君が欲しいって」
「カタギリ!」
「冗談だよ」
胸の奥に小さな針が刺さって
それを取り除けずにいる
もどかしくて、どうしようもない
「はぁ〜・・・」
を欲しいと思う気持ちと
を大切にしたいという気持ち
私は一体、どっちを選べばいいんだ?
もどかしい気持ち