砂漠の花は人々の乾いた心に
癒しの水を注ぎ、幸せをもたらしたと言われている
彼女の舞いは、まさに枯れた大地に咲く一輪の花の如し
誰もが慕い、敬愛している
「あー！姉ちゃんだ！！」
「ホントだ！！お姉ちゃんだ！！」
「皆、元気にしてた？」
は夜前、夕方近くには次の町に着いていた
町に着くなり、彼女の姿を見た子供たちははしゃぎながら
に近づいていく。
「今日は早かったね！」
「うん、早く皆に会いたかったから」
「ホント〜！･･･ねぇ、お姉ちゃん、早く踊り教えて！」
「あぁ、分かったから腕引っ張らなくていいよ。」
子供たちは、の腕を引っ張りながら町の中へと連れて行く
はそんな子供たちの笑顔を見るだけで、とても幸せだった。
「長旅お疲れ様」
「あ、園長先生･･･お久しぶりです」
すると、に一人の年老いた女性が声をかけた
園長先生と呼ばれた人はに微笑みかけていた。
「皆、貴女が来るのを待っていたんですよ」
「でしょうね。」
「先生〜お姉ちゃんから踊り教えてもらいたい〜」
「僕も〜」
「私も〜」
「皆、先生お姉ちゃんとお話したいから」
「先生、先にこの子達と遊びます･･･お話はそれからでいいですか？」
園長には微笑みながらそう言った
彼女の言葉に、園長はため息をついて、微笑を浮かべた。
それは、「いいですよ」という表情では会釈をして
子供たちに引っ張られながら何処かに行くのだった
--夜--
「お疲れ様」
「あ、すいません･･･ありがとうございます」
夜、子供たちが寝静まった後園長室には居た。
彼女は椅子に腰掛け、園長は彼女にお茶を振舞った
「どうですか？旅のほうは」
「何にも縛れることなく、気軽で楽です。何よりも皆の優しい顔を見れるのが幸せです」
「そうですか。貴女がそう言って人々と接するのはいいことです。」
「ありがとうございます。」
「貴女の名前を町中の人から聞くたびに、私も貴女を誇らしく思います」
「園長先生･･･」
幼い頃、はこの園に居た。
両親がすぐさま他界し、彼女はこの園にやってきた
成長し、得意の踊りで人々を少しでも幸せに出来たらいいと思い
園を出て各地を転々と渡り歩いていた。
「いつしか貴方は皆の癒しで＜砂漠の花＞とまで呼ばれるようになりましたね」
「えぇ。･･･私にはもったいない言葉です」
「謙遜しなくてもいいんですよ･･･貴女はそれほど人々から慕われているのですから」
「･･･はい」
園長の言葉に照れながらも、は優しい微笑みを浮かべた。
----ガシャーン！！！
『きゃぁあ！！！』
すると、突然ガラスの割れる音と共に
子供たちの悲鳴が聞こえてきた。
「？！･･･子供たちの声だわ」
「どうしたのかしら？」
と、園長は話を中断して悲鳴の元へと向かった
「皆ッ！！」
「姉ちゃん･･･怖いよぉ〜」
と、園長が向かうと其処には子供たちが壁に追いやられていた。
そんな子供たちの前に･･･
「ほぉ、コレは珍しい人が居たもんだな」
「あぁ、砂漠の花じゃねぇか」
2〜3人ほどの男がサーベルを構え、子供たちに向けていた
見るからに盗賊風な男たちが其処に居た。
「どうか、お願いです･･･子供たちだけはっ」
「人っ子一人死んでも構わねぇだろ･･･金目の物を寄越しな」
「出さなきゃ、一人ずつ切り刻んでやるよ」
男たちは、子供たちにサーベルの刃先を徐々に近づける
子供たちは怯え、目を閉じる者もいれば泣いている者も居た
「待って！」
すると、その空気を打ち破るようにが声をあげる
彼女はまっすぐな瞳で、男たちを見ていた。
「私が･･･人質になります･･･お願いです、子供たちを返してください」
「さん･･･」
「お姉ちゃん･･･」
「ほぉ、砂漠の花が人質になるとなれば話はつくな。･･･いいだろ、来い」
「その前に子供たちを返してください」
の説得に、男たちは子供たちを解放した。
壁側から解放された子供たちはすぐさま園長の元に駆け寄るが
子供たちをすり抜けていくようには男たちのところに行く
「姉ちゃん！！」
すると、一人の男の子が声をあげる。
はその声を聞くなり、振り返り笑顔を見せた
「大丈夫だよ･･･皆が幸せなら、私それでいいから」
「さん」
「園長先生、後よろしくお願いしますね」
そう言って、闇夜の中には男たちに連れて行かれるのだった
花よ枯れないで。と誰もが心で願った
（花は一人で、幸せを守ろうとした）