嵐と砂漠の神・セト
エジプトの最初の王様・オリシスの弟でありながら
兄である彼を殺した。
そして、彼の一番の特徴であるのは・・・赤い髪と赤い眼だった
赤い眼は不吉を呼ぶと言われ、未だにそれは人々から恐れられていた。
私は、子供たちの命と引き換えに男たちに
夜の砂漠地帯に連れてこられた
「ほらよ!」
「きゃあっ!?」
馬に乗せられていた体を、ムリヤリ砂の上に下ろされた
砂の上に、私は寝転がるような体勢になり男たちを睨みつけた
男たちはニヤニヤしながら、馬の上から砂地に降りる
「お〜怖いねぇ〜・・・砂漠の花でもそんな顔するんだな」
「怒った顔も可愛いねぇ〜・・・ソソられるぜ」
男たちはじわじわと私に近づいてくる。
自分から進んで、人質になる・・・そうすれば、皆の命が助かる
だから、自分の体が・・・今後一切踊れなくてもいいと思った
それで、誰かが笑って幸せなのであれば
「案外、処女だったりしてな」
「・・・っ、いやっ!」
足を触られた瞬間、気持ち悪くなり手を振り払ってしまった
それが男たちを煽るだけの要素だった
「おぉ、可愛いねぇ〜・・・処女だぜ」
「なら、一人でやっただけでぶっ壊れるかもな」
「壊れちゃ困るんだが・・・ま、いいか・・・とりあえず、押えようぜ」
2人の男が、私の手を押さえ込んで身動きが取れない
足をバタつかせても、力の差は歴然。
「少し、痺れておいて貰おうか?お嬢さん」
すると、男の一人が小瓶の液体を私の口に運びムリヤリ飲ませた
飲んだ瞬間、突然体中が痺れ、抵抗力が衰えていく
視界がどんどん霞んでいく
「大丈夫、す〜ぐ気持ち良くなるから・・・ヒヒヒ」
触られてる感覚がない
スカートの中に手が入っていく感触がある
あぁ、私此処で犯されちゃうんだ
でもいい・・・皆の、命が助かるなら・・・私の体一つなんて安いものよ
そう目を閉じた瞬間
ドカッ!!
「ぐはあっ!?」
すると、突然鈍い音と共に男たちが苦しい声をあげていく
私の体が徐々に軽くなっていく
「何だてめぇっ・・・!」
「取締役、ってやつかな?」
手を押えていた男に、別の男は優しい声で鞘に収めたサーベルで殴り飛ばしていく
「な、何なんだよ・・・っ、お・・・お前はっ・・・!!」
すると、私に馬乗りになっていた男がある一人の人物を見た瞬間
顔面蒼白になっていく。
「一人の女性を3人で寄って集って、性的暴行を加えるとは・・・許しがたいぞ」
「うるせぇ!!正義面しやがって!!お前らだって俺たちと同じ盗賊だろ!!」
「お前らと一緒にされちゃ困るな・・・ですよねリーダー」
「あぁ」
黒い布を体中に纏ったリーダーと呼ばれた人は、ただ男を見据えていた
そして、口元を隠していた布を取る
「彼女を離せ」
「へっ!・・・この女は俺が手に入れたんだ、易々と」
「離せと言ってるのが分からないのか?・・・お前に不幸を呼ぶぞ」
「何?・・・!!!」
すると、顔の布を取り払うと男は震えだした。
何を見て、この人は震えているの?
私の位置からではその正体が良く分からない
「さぁ、彼女を離してもらおうか?」
「ひっ・・・ひぃいいい!!!悪魔だ、悪魔!!・・・これ以上関わるのはゴメンだ!!」
馬乗りになっていた男は、私の上からようやく退き
男たちは自分たちの馬に乗り、慌ててその場から逃げ出した。
私は痺れて、動けない
徐々に視界が霞んでいく・・・眼がどんどん閉じていく
「・・・だ、れ?」
そう呟くと、助けてくれた人は私のほうに振り返り見た。
薄れゆく視界の中で、私の目に映ったのは
蒼白く輝く月
そんな月に映えるように輝く金色の髪
左眼は、緑色よりも深い碧眼
右眼は・・・・・・
そこから、私の記憶は曖昧で・・・気を失った
ただ、覚えているのは
『 も う 大 丈 夫 だ か ら な 』
私を抱き上げてくれたときの優しい声と手の感触、そして温もりだった
忘れもしない、あの日の出逢い
(蒼白く輝く月が、私とあの人の出逢いを導いた)