渇きを潤す、人々の源であった砂漠の花
その花が今・・・己の心の殻に閉じこもり
自らを枯らそうとしていた
・・・神の束縛によって・・・
『一つだけ、お願いがあります』
を拘束して、数日
私は彼女の願いというものを聞き入れ
彼女と共に馬に乗りある場所へ向かっていた。
「・・・此処です」
「・・・孤児院、か?」
「はい。」
を馬から下ろした
彼女は馬を下りるなり、門をくぐり中へと入っていく
「あ!!姉ちゃん!!!」
「お姉ちゃん!!!」
「皆・・・よかった、無事で。」
すると、外に出ていた子供たちがの姿を見るなり
大きな声をあげて、に近寄っていった。
は腕いっぱい両手を広げ、子供たちを包み込んだ
「姉ちゃん、ねぇちゃん!!」
「もぅ〜心配したんだよ!!帰ってこないから〜」
「うんうん、ゴメンね。大丈夫だよ、お姉ちゃん大丈夫だから」
は優しい表情を浮かべ、子供たちの頭を優しく撫でていた
「姉ちゃん、どうしたの?元気ない」
「え?・・・そんなことないよ。」
「嘘よ!だってお姉ちゃん此処に居るときキラキラしてて、とっても輝いてたのに」
は子供たちの言葉を聞くと、思わず私のほうに少し振り返る。
だが、顔色一つ変えないように私は彼女を見つめていた
私の顔色に気づいたのかは子供たちに無理して笑って見せた
子供の言葉に、私は酷く傷ついた
彼女の輝きを止めてしまったのは、私に責任があるのだから
ただ、側に置きたいという・・・醜い束縛が・・・彼女から光を奪った
「皆さん、さぁお昼の時間ですよ・・・手を洗ってお昼を食べましょう」
「はーい!ねぇ、姉ちゃんも一緒に食べよう!」
「わ、私食欲がないからいいよ・・・ありがとう。」
子供たちはそう言って建物の奥へと走っていった
その場には、私と・・・そして、年老いた女性が居た。
「さん」
「園長先生・・・ごめんなさい」
「どうして謝るの・・・貴女は悪くないんですよ、子供たちを庇って貴女は自分の命を懸けたのですから」
「でもっ・・・でもっ・・・」
すると、は園長と呼ばれた女性の前で涙を流した
心が苦しかった
自分のわがままで、彼女を縛り付けて、こんな風な涙を流させて
自分でも情けなくて・・・でも、こんな方法じゃなきゃ、私は愛せない
「あの人は・・・?」
「あ、あの人は・・・っ」
すると、園長は私の存在に気づいたのか目線を向けてきた。
私はすぐさま2人に近づく
「彼女を・・・さん助けた者です。」
「そうですか。本当にありがとうございます・・・この子を園まで連れてきてくださって」
「いいえ・・・お返ししたいのですが、私は彼女に代価を払ってもらっているんです」
「っ・・・グラハム、さっ・・・やめ、て」
「どういうことですか?」
「ご存知でしょう・・・『セトホルス』という盗賊集団を」
「・・・!!・・・まさか、さん・・・・」
「・・・・・・・・・」
「だから、彼女に助けてあげた代価を払ってもらってるんです。私に拘束されるという代価を」
「やめて!!」
は私の胸を強く叩いた
だが、私はそんな彼女の体を片腕で抱きしめ胸に押し付けた
「ですので、しばらくこの子を自由にすることは出来ません・・・もちろん踊りも踊れらせません」
「そ、んな・・・っ」
「子供たちにもお伝えください・・・彼女はしばらく此処には現れないと。・・・帰るぞ、」
私は泣くを馬に乗せ、孤児院を後にし集団のアジトへと戻った
アジトに着き、馬からを下ろした
下りても、は一言も喋らない
「どうした?」
「・・ど・・・して」
「何がだ?」
パァン!!
すると、その場に響き渡るように酷い音がした
その場に居た全員が驚いた表情になる。
私は左頬を平手打ちされたのだ
すぐさま顔をの目の前に戻すと、彼女は目に涙をたくさんためていた
私は左頬を拭うような仕草をする
「何か、言いたそうな顔だな」
「どうして、先生の前であんな事言ったのよ!」
「事情は話すべきだろ」
「だからって、もう少し何か良い言い方があったでしょう?どうしてそんなことも出来ないのよ!!」
「じゃあ、どう説明してやればいいというんだ?それとも、私のモノになったとでも言ったほうが良かったか?」
「っ!!・・・・最低!!」
パシンッ!!
2度目の平手打ちが来る前に私はすぐさま受け止めた
受け止められたのか、は打つのを止めてテントに戻っていく
「派手にやられたね」
「・・・うるさい」
カタギリは苦笑しながら私に近寄ってきた。
「リーダー大丈夫ですか?・・・お嬢さん相当怒ってましたけど」
「仕方あるまい、私の発言も悪いのだから」
すると、部下のジャックが私に話しかける
「悪いと思ってるんだったら、発言考えたら?」
「無理だ・・・もう、最悪な印象を植え付けてきたのだから。」
「穏やかじゃないね・・・君も。」
「まぁな・・・の輝きを奪ったのはこの私だ・・・あの子が怒って当然さ」
の全てを束縛し始めたのはこの私
自分の想いを胸の内に閉じ込めて
今はこんなことしか・・・できなくて・・・愛せない自分が憎くて
「カタギリ・・・痛いな・・・」
「頬が?」
「・・・そう、だな・・・心も、痛い」
痛くて、痛くて、君を上手く愛せない自分が
憎くて、こんな眼さえなければ・・・こんな想いもしなくていいのに
君を不幸にだけはしたくないんだ
「私は、が好きなのに・・・どうして、どうして・・・」
神は無常にも、私に酷い運命を背負わせたのだろうか
君の心に触れたいのに、君は殻に閉じこもってしまった
もう、私に心を開いてくれないのか?
神は無常にも花を枯らしてしまった
(蕾になって、二度と開かなくなった)