赤眼の神は、己の眼を呪った
あまりにも毒々しいまでの、赤色
不吉を呼ぶとされ、人を愛したいのに
愛することができなかった
「栄養失調?」
「そうなんです。・・・ここ数日何も食べないで、それで」
ラルフの困った声で、私は思わず頭を抱え込んだ
最近、見る見るうちにが痩せていくのが目に見えるように分かってきた
もしかしたらと自分の中で言うと、案の定このような状態を招いた
「リーダー」
「グラハム・・・このままじゃ、あの子死んじゃうよ」
「なら、私にどうしろと言うんだ!!」
私は思わず大声を上げてしまった。
確かに此処まで追い詰めたのは私自身かもしれない
だけど、彼女には・・・には優しくしてはいけないと言い聞かせるしかない
この眼を知ってしまったら・・・
「・・・皆、私から離れていくじゃないか・・・」
「グラハム」
「リーダー」
幼い頃、この眼でどんな惨めな想いをしてきたか
友達は出来ずに、周囲からは後ろ指さされ、あまつさえ両親にも恐ろしい子と言われた事だってあった
赤い眼は人を不幸にすると同時に、こんなにも人を一気に変えることだって出来る
私が、を愛してしまえば・・・不幸にする、また、彼女はいっそう私を怖がってしまう
「あのね、それじゃあ僕たちはどうなるの?」
「え?」
すると、カタギリが笑った顔で私を見ていた。
「僕たちは、君の右眼の事知ってるけど・・・誰一人として賊を抜けた人居ないだろ」
「あっ・・・。」
「そうですよ、リーダー。僕たちは貴方を信頼してるからこそ付いて来てるんです」
「カタギリ、ラルフ」
「君が怖がってるから、あの子も怖がってるんだよ・・・いい加減」
素 直 に な っ た ら ?
夜、私はの居るテントに足を運び
眠っている彼女の隣に腰を下ろした
手を握ると、痩せていることが一発で分かる
「こんなにまでして・・・ゴメンよ、」
私は握った手に優しくキスを落とし
眠っている彼女の唇と、自らの唇を重ねた
数秒足らずで離した軽いキス
少しでもいい、元気になって欲しい
明るい、君の笑顔が見たいんだ
「・・・・・・ゴメン、素直になれない私を許しておくれ」
そう言って、頬に触れて
私は外へと出た。
「・・・・・・あの人」
私は目をゆっくり開け、気だるい体を起こした
そして、指で自分の唇を触れる
「・・・私に、キス・・・した・・・」
とても、優しいキス。
いつものグラハムさんからは決して見れない
愛しいまでの温かいキス
今でもまだ、触れた唇の感触の熱が残って
体中を熱くさせていた
どうして、私にキスを?
だって、私を拘束して、自由を奪った人なのに
どうして、あんな・・・優しいキスをするの?
それに、「ゴメン」って「素直になれない」って
つまり、今の貴方は何かを隠しているの?・・・想いを押し殺して私に接しているの?
それじゃあ、今のあの人は・・・本当にグラハムさんじゃない?
とても、辛そうな声で、私に投げかけた言葉
私だけが辛いんじゃないんだ・・・グラハムさんも、辛いんだ・・・
その気持ちに気づいたとき、胸の奥で温かいものが芽生えた
花は自らの過ちを悔いる
(どうして、もっと早く気づいてあげれなかったんだろう)