花は水を与えられ

見る見るうちに元に戻ってきた

そろそろ、舞いを踊りたくなってきた












-----ゴソゴソ-----






「・・・・んっ・・・う〜・・・う、」



ダメだ、眠れない

アレから、毎日のようにグラハムさんが私のテントにやって来て
添い寝をしてくれるようになって、眠れるようになった

だけど、また眠れない日々が続こうとしていた


原因は・・・





「(体が・・・鈍ってるかも・・・)」





このセトホルス、グラハムさんに拘束されて以来
そういえば踊っていないなということに気づいた。

ようやく最近、ラルフさんからも「元気になりましたね」と
喜ばれて凄い嬉しかった。

グラハムさんも、とても穏やかな表情で
視線も、以前とは違う・・・突き刺すような視線じゃない
とても優しい、柔らかい視線に変わって心地よかった


私は体を起こして、隣で眠っているグラハムさんを見る



「(アレ?眼帯外してる)」



すると、右眼にいつも付けている眼帯が外れていることに気づいた
まぁ寝てるときは目閉じてるし・・・傷があるとかそんなのじゃないよね?

眼帯をしているから、てっきり大きな傷でもあるのかと思ったが
別にそんなもの何処にも見当たらない、じゃあ一体どうして・・・?
眼が見えないってワケでも・・・それとも、・・・



見られたらマズイとか?



「(どうしてなのかな?)」


あまり深く考えないようにした。
いつか、聞いてみよう・・・そう心に誓い、私はグラハムさんに気づかれないように
テントの外へと出た。




外に出ると、大きな青白い月が顔を出していた。
私は空に浮かぶ月と、星を見ながら、オアシスに向かう

そうだ、これからこっそり抜け出して踊ろう。
5分くらい抜け出してもきっとバレないだろうな・・・そうでもしなきゃ、きっと体が鈍っちゃう
そう思い、私はその日オアシスで10分ほど忘れていた体の動きを
思い出すように踊り続けた。



















--数日後--







「・・・アレ?グラハム起きてたの?」
「あぁ、カタギリか」


ある日の夜、私は眠っていた体を起こし
右眼に眼帯を付け
脱ぎ去っていた外套を衣服の上から羽織り
腰周りに、サーベルを据えた


さんは?」
「分からない・・・此処のところ、毎日夜中になるとこっそり出て行っては数分すると帰ってくるんだ」
「あぁ、とりあえず戻っては来るんだね」


ここ数日のの不審な行動に
私は心配で、何をしてるのか分からず
今日と言う今日は、自分の目で確かめるためが出て行くのを待った


「で、彼女の様子を見に行くんだ」
「当たり前だろ!・・・他の男に会ってるなら私だって許さない」
「(また突っ走り始めたぞ)・・・とにかく、彼女が男に会ってるかどうか知らないけど行くんだろ?」
「もちろんだ。・・・なんだ、付いてくるのか?」
「だって、君が暴走したら止まらない性格だって僕だけだよ知ってるの・・・当然行く」
「・・・頼む、私一人じゃ何を仕出かすか分からん」
「じゃあ、行きますか。」
「あぁ」



そう言って、の後を追うように私とカタギリはテントから出た









しばらくアジト周辺、を探し回っていると





「グラハム、あそこ・・・」
「何だ、オアシス?」



すると、カタギリがオアシスに指を差す
其処には一つの人影が、左右に不規則に動いていた

私とカタギリは気づかれないように、オアシスに近づくと




「おや、コレは・・・」
「・・・美しい」



が楽しそうに、舞を舞っていた

そうだ、は旅芸者で人々の乾いた心に潤いと癒しを与えている

付いた名前は<砂漠の花>

華麗に咲き誇る、決して枯れることのないたくましい花


一つ一つの動作に、思わず目が奪われる

優しい微笑みを浮かべながら、不規則な動きを見せる

不規則ながらも、それはまるで一つの物語を演じているかのように

誰もがそれを癒しと呼ぶわけだ





「綺麗だね・・・もしかして、彼女踊るために毎晩テントを抜け出してたんじゃない?」

「え?」

「体が鈍ってた・・・この理由のほうが正しいかも。」




拘束をしていた分、彼女は踊ることを止めた

花が枯れそうになっていたけど・・・今、それを思い出すかのように

は踊っている。・・・以前の自分を思い出すように





「そう、かもしれないな」
「だね。・・・安心した?」
「あぁ・・・テントに戻ろう、そろそろが引き上げてくる頃だ」
「分かった。」





踵を返して、テントに戻ろうとした




カコン!



すると、何か蹴ったような音がした
砂漠地帯だ、石一つないはず・・・音だってするはずない
私は下を見た。

其処に落ちていたのは、赤褐色した・・・石

私はそれを拾い上げた


「何だ、コレは?」
「珍しいね・・・薔薇の形してる・・・鉱物かな?」
「・・・デザートローズ」
「え?」
「デザートローズだよ、カタギリ・・・砂漠の薔薇だ」
「あぁ、アレね」



砂漠に咲く薔薇という意味を持つデザートローズ
名前で聞いたことは何度かあるものの、実際のものを見たことはなかった



「でも、何でコレが此処に?」
「分からん・・・とりあえず、持っておくか」


そう言って、私は腰に下げていた小さな袋にデザートローズを入れた。




「何の因果だろうな?」
「何が?」
「砂漠の花に、デザートローズ・・・私の手には、2本の花が咲いてるよ」
「クスクス・・・そうだね、双方枯らさない様に努力するんだよ」
「言われずとも、そうするつもりだ」





ようやく、手に入れた本当の温もり

優しさ、愛しさ、幸せ

今この気持ちを手放してなるものか




神は花に愛しさと恋を覚えた
(砂漠に咲く花は赤眼の神に恋する喜びを教えた)




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