「ほぉ・・・アレが・・・ ・・・ですか」

「はい。だけど、骸様・・・あんな女どうするんですか?」

「クフフフ・・・それは、秘密です。ありがとう、千種」

「いえ。」










さぁ、楽しい時間が始まりますよ





ねぇ・・・ サン




































「さようなら、お姉様」
「さようなら・・・また明日。」




いつもの下校。
後輩や、同級生との挨拶を交わしながら校門を抜ける。

すると、何やらギャラリーが出来ていた。
私は気にすることなく、その前を通る。







「お待ちなさい」

「え?」







すると、ギャラリーの方から声が私を止めた。

私は、足を止め振り返ると・・・女子達の間を抜けて、私の目の前に現れる


パイナップルみたいな頭に・・・目にはサングラス。
でも、そんな感じに似合わず、服は・・・深緑色の学ラン制服
学校が分かるんだが、名前が中々出てこない。








・・・、さんですか?」

「そう、ですけど。貴方は?」

「そうですね・・・貴方の幼なじみさんと知り合いとでも言っておきましょうか。」

「それで、何か用ですか?」








何だ、恭弥の知り合いか。

私はため息を零し、目の前の相手を見た。
アイツ・・・また何やらかしたんだろうか。

喋り口調はゆっくりで敬語なんだが・・・其処が怖い。
こういった人ほど、温厚な性格とは限らないからだ



私の幼なじみ、雲雀恭弥は此処一帯を牛耳っている
暴走族の元締め、そしてなぜかその肩書きで此処から少し離れた
並盛中学校の風紀委員長とか・・・本気で似合わないことをしてる。









「別に用はありません」
「は?」






相手の答えに、私はあっけらかんな声を出した。


有名私立女子中学校の前でわざわざ
多くの女子生徒の足を止めて、ギャラリーを作っておきながら
別に用はないとか・・・今すぐに隠し持ってるトンファで目の前の男のサングラスくらい
カチ割ってやろうと思い、手を微妙にずらす。

恭弥ほど普段好戦的ではないのだが
此処まで言われると・・・温厚な私でも、癪に障る。








「隠し持ってるトンファで僕に襲い掛かろうなんてしないほうがいいですよ」
「っ?!」
「おや、当たってましたか?・・・クフフフ」








目の前の男の発言に、私はトンファを出す手を止めた。

何故、何故コイツ・・・私が隠し持ってること知ってるの?

そんなはずはない・・・だって、学校の生徒や職員の間でも
私がトンファを隠し持ってるのを知ってるのはごく僅か。



それを、他校の生徒が知ってるはずないのに・・・何故コイツ・・・


私は思わず冷や汗が出る。
近づくなという警戒のオーラを出して、とにかく威嚇をする。










「警戒、してますか?」
「そりゃね・・・。ごく僅か知らない情報を、どうして貴方が知ってるの?」
「さぁ、どうしてでしょう?」
「・・・・・・貴方、何者?」






暴走族の総長ってワケじゃない
この人・・・本気でやばいような気がする。









「僕ですか?・・・さっきも言いましたよ、貴方の幼なじみの知り合い・・・と」
「あのバカ恭弥とどんな関係なのかしらね?人とつるむ様な奴じゃないって私が一番知ってる」
「おやおや・・・初対面から僕は貴女から嫌われたのですか?」
「さぁ、どうかしら?・・・でも、嫌いの1歩前って感じかしらね。・・・嫌いというよりも、貴方、危ない感じがする」
「ほぉ。・・・じゃあ、充分に気をつけることですね、さん」








そう言って、彼は踵を返し・・・何処かへと歩き去っていった。



最初はその後頭部を殴ってやろうかと思ったが
あの男は・・・確実に止めそうな感じだ。

これ以上の深追い・・・自分が危ない。








「(一体・・・何者よ、あの男。)」







私は男の後姿を見ながら、そう心の中で呟いた

ストーカーってワケじゃないし・・・多分あの男も私の顔をようやく調べて
たどり着いたような感じだ・・・確実に此処数日前まであんな男は
此処では見てない。









「(とにかく・・・帰って、恭弥に電話して呼び出して・・・シメてやる・・・)」






そう言って、私も自分の家へと続く道を歩くのだった。





























「骸様、何処に?」
「ん?ちょっと・・・・クフフフ・・・人と逢ってたんです」
「あの、とか言う女ですか?」
「えぇ。」
「骸様・・・本気で何をするつもりですか?」
「そうですねぇ・・・しぃて言えば」
「言えば?」
「遊び、ですよ・・・千種」
「はぁ。」



そう、コレは遊びですよ

遊びと同時に、あの、彼が・・・慈しんでいる彼女。
いかにこの僕を夢中にしてくれるか。



しかし、初対面から・・・すでに僕もダメになりそうな感じだ。





「僕の負け、かもしれませんね」
「ぇ?」
「独り言ですよ、クフフフ。」
「は、はぁ」

































「・・・ただいま」
「お嬢様ぁぁああ!!!!」
「っ!?な、何どうしたの聖(さとし)!?」



家に帰り着き、玄関のドアを横に滑らせた途端
若執事の金城聖が玄関まで泣きながらスゴイスピードでやって来た。




「な、何?!何かあったの!?」
「じ、実は・・・」





日本古来の和式住居な私の家
両親は海外の仕事が多いため、ほとんど家に居ることはない。
だから、家では執事の聖と私の2人しかいない。

聖の怯えよう・・・まさか、パパかママが帰ってきたのかな?

それか、聖が怯えるといったら・・・










「実は・・・その、」
「何?」
「遅いんだけど、」
ひぃいいぃいい!??!?!
「恭弥、やっぱりお前か。」








聖が怯えるとしたら、私の両親か・・・幼なじみの雲雀恭弥の2種類しかないのだが
一番怯える反応を見せるのは、何を隠そう恭弥しかない。
大人相手でも、毒舌など、恭弥は容赦しない。







「お前・・・聖に何した」
「別に、君が遅いから・・・八つ当たりしてた」
「人様の家の者に手を出すなって何度言ったら分かるんだボケ!!」





私は、隠し持っていたトンファで恭弥に襲い掛かったが
いとも簡単に恭弥は受け止めた・・・奴はニヤリと笑みを浮かべるも・・・









「バーカ」
「?!」









ガフッ?!











私は、トンファを出した利き手とは逆の手、つまりカバンを持った手
カバンを持ったまま、ソレを恭弥の腹に食らわせた。
あまりの痛さに恭弥はその場に蹲る。






「ったく・・・お前、これで何度注意すればいいんだ」
「・・・君、が・・・早く・・・帰って・・・こないのが、悪い」
「お前と違って私は規則正しく学校に通ってるんで!一緒にしないで」
「お嬢様、やはり私の味方はお嬢様だけです!!」
「うん、分かったから私を家に上がらせてくれない?玄関先でこんなことしたままじゃイヤなんで」
「あ、申し訳ございません!!さぁ、履物をどうぞ」






私が帰ってきたのがそんなに安心したのか
聖はスリッパをすぐさま出し、私はソレを履き家に上がる。

もちろん、玄関先では未だ恭弥があまりの痛さに蹲っている。
(何せ、カバンの中に辞書と教科書の重い組み合わせが入っていた。)









「で、何しに来たの?」
「君が・・・まだ、一人だって・・・君のご両親から電話があった」
「(また厄介な奴に電話したな、父母よ)・・・別にいつものことだから、ほら帰れ、お前が居ずとも聖がいる」
「そうですよ、恭弥様!私が此処にいる限り、お嬢様は」
「君、黙っててくれない・・・僕がと話してるの・・・
咬み殺すよ
・・・はぃ





頼りないぞ、聖・・・お前、恭弥よりも年上なのに。





父母が心配して電話をかけて、よく恭弥は家に来たりする。


心配してくれるのは大変ありがたいのだが・・・何故コイツしか居ないんだ!!と
心の中で叫んでみるも・・・無理な願いよね、他の奴に頼むって言うのが。









「分かった、分かったから・・・とにかく・・・恭弥アンタ泊まるのね」
「分かりきってること聞かないでくれる?咬み殺すよ」
「喰い潰すわよ、アホ恭弥・・・あったまきた・・・ちょっと稽古付き合いなさいよ、叩きのめしてやる」
「珍しい、。いいよ」







そう言って、私は家の中にズカズカと凄まじい足音を立てながら歩くのだった



もちろん、稽古中にあの変なパイナップル頭のサングラス男のことも
聞くつもりだった。



だけど、今・・・きっと私恭弥が側に居なかったら・・・




怖くて泣いてたのかもしれない。








「はぁ、ムカつく・・・やっぱ、シメよう」





そう呟いた自分が妙にくすぐったかったので、とにかく
恭弥をメタメタした後にでも、あのパイナップル頭星人の話をしようと思った












蓮の花蜘蛛遊戯の前戯れ
(可憐に浮かぶ蓮にゆっくりと近づく闇色の蜘蛛)


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