「・・・体が・・・痛い・・・。」






結局、朝から恭弥の否応ナシな攻め立てに勝てるわけもなく
私は2時間目登校になってしまった。



近道の話も実は嘘だという



全部私をおびき寄せる為の恭弥自身の作り話




思い出しただけで腹が立ってきた。










「さて、家に帰ったらあのアホ・・・どう捌(さば)いてやろうか、2枚・・・いや3枚に卸してやる」








私はフラフラしながら、裏門のほうから出て行く。





実際、千夏ちゃんも共犯である。



あの後、千夏ちゃんに近道の話は嘘だということを伝えに行くと









『千夏ちゃん、実は近道の話・・・』
『あぁ、お兄様の作り話ですよねあれ。』
『ふぇ!?な、何で知って』
『大体、お姉様絡みのお兄様の態度は重々承知してます。私を突き放すということは
つまり、お姉様のことで何かやるんじゃないかと思って。』
『・・・知ってたの?!』
『知ってたというよりも、アレだけの会話で理解しただけです。』








千夏ちゃんはやんわりと、そしてにこやかに答えた。

共犯・・・というよりも、この子はたったアレだけの会話で恭弥のほとんどを見抜いている





恐るべし、雲雀家・・・の遠縁だ。









「知ってたなら、教えてくれたって良いじゃない・・・」






そう呟いて、私は校門の外に出た。


学校を2時間目登校という重役出勤をしてしまったせいで
聖からかなり電話元で怒られた。

学校から来てないとの電話がかかってきて、聖は大慌てしたらしい。
また多分帰ったら聖に今度こそ、説教されるんだろうなぁ。










「あー・・・だるい、帰るのが・・・面倒だ。」






朝の恭弥との情事に、体力を根こそぎ奪われ
授業そっちのけで私は眠っていた。

だが、やはり机の上・・・寝るには居心地が悪すぎる。
腰が痛いうえ、座るのですらもう耐え切れない。

ましてや・・・体育の時間は着替えるにも着替えれないときたもんだ。




恭弥に、体中・・・本当に噛み跡やキスマークを残された。

噛み跡は、首筋と、腕、脇腹、・・・そして、キスマークを・・・大事な部分の横と言う

また何とも、ヘンなところに残しやがった。



下手して着替えて肌をさらしてしまえば、それこそ・・・学校からの叱責が絶えないからだ





恭弥の奴は 「別に良いでしょ?見せつければ」 と平然と零したが
お前と私を一緒にするなと、私はアイツをかなり叱り付けた。








「あぁ、もう絶対恭弥の口車には乗らないぞ・・・うん。」




そう言って、私は気合を入れ家へと続く道を歩く。




すると、目の前に・・・






「(?!・・・こ、黒曜生!?)」






深緑色の学ラン・・・ようやくそれが黒曜第一中学の制服だと思い出した

そう、私は・・・骸にメチャクチャに犯されて以来、深緑色の学ラン・・・つまり黒曜生の男子制服に
過敏に反応していた。・・・だって、あの骸も黒曜生の制服を着ていたからだ。






「(で、でも・・・骸と違うし・・・)」




目の前をコチラに歩いてくる黒曜生は
白いニット帽を被って、メガネをかけた・・・いかにもオタクっぽい男の子。


あの、骸は・・・パイナップルみたいな頭に、オッドアイを隠すようにサングラスをかけていた。
それに、今こちらに向かっている人は、背筋をまげて・・・まるで猫背の体制で
歩いてきている。・・・骸はいかにも自信満々に道の真ん中を歩く・・・そんな感じの人物だ。






つまり目の前の男子生徒は、彼とは全く異なった分類となる。






「(ま、そう思ったら危険じゃないし・・・いいや。)」






そう自分の中で危険信号を赤から、青へと切り替え
悠々と歩みを進める。

あぁ、やっぱりあれ一度きりなんだ・・・骸の奴・・・散々弄んどいて・・・今度会ったら絶対ぶっ殺してやる


そう心の中で骸への罵声を浴びせつつ、ホッとしながら
家路に急ぐ。





そして、黒曜生とすれ違った瞬間・・・



































「面倒事は厄介だから・・・手荒だけど来てももらうよ」

「え?」












---------ドスッ!!









「っ・・・ぁ・・・」




急にお腹に激痛が走る。

すると、黒曜生の手が・・・私のお腹に・・・


だ、ダメだ・・・この前の骸からの痛みがまだ・・・

徐々に視界が霞んでいく。


抵抗するにも、今日の体力の消耗が激しかったのが祟り、抵抗できない








「・・・ちょっと、来てもらうよ・・・」

「き、み・・・一体・・・何、も」





そう言って、私はそのまま黒曜生の腕に倒れこんだ。

倒れる寸前、脳裏を過ぎったのは・・・











恭弥の顔だった。


































「・・・ん・・・、こ・・・此処は・・・」


ようやく、目が覚めた
薄く開いた目を徐々に開ける



見覚えのある・・・部屋



汚れ、ボロボロになった大理石式の床


そして、壊れた3人用腰掛のソファー



それを見た途端、一気に覚醒し、脳が反応した。



見覚えがあるも、此処は・・・っ









「起きましたか?」

「・・・っ、貴方・・・」







目の前で木の椅子に腰掛け、足を組んでコチラを見ている、・・・六道骸





そう、此処はこいつ等のアジトでもある・・・廃墟と化した巨大娯楽施設、黒曜ヘルシーランド









「2日ぶりでしょうか?・・・
「気安く、名前呼ぶんじゃ」







------ジャラッ!!








「!?」



骸に襲い掛かろうとしたら、手から鎖のような音がした。


私はふと、自分の手を見ると・・・黒いベルトに、繋がった鎖・・・そして鎖の結合部分は壁。

つまり、よく死刑囚が拷問や、牢獄されているときに使われている

吊り下げ式の拘束道具で手の自由が奪われていた。





「クハハハ・・・すいません、ちょっと動かれては困るので。手のほうを拘束させていただきました。」
「相変わらず、趣味悪いのね、貴方・・・強姦といい、拘束といい。」
「強姦は心外です。・・・ただ、拘束は・・・今回に限らせてのことですが」
「何ですって?」





すると、骸は組んでいる足の上に肘を乗せ
手で頬杖を突いて、私を見た。

私を見る顔・・・それは、笑顔だが・・・目は笑っていない。








、僕は言ったはずですよ」

「何のこと?」

「雲雀クンと体を重ねようなんて・・・考えないほうがいい・・・と」

「してない。」

「おや?・・・・・・じゃあコレはなんですか?」









すると、骸はポケットから携帯を取り出し、開き
私の目の前に携帯の画面を見せた。










「!??!」

「何ですか、・・・コレは?」









携帯の画面に映っていたのは・・・







私と恭弥・・・しかも、朝の・・・あの路地裏での・・・情事中の・・・写真。








「なっ、何で?!」
「クフフフ・・・僕を甘く見ないでくださいね、色んな手段を使ったんですよ」
「やっぱり、貴方・・・最低ね」
「何とでも。」






そう言って、骸は携帯を閉じた。
あの写真・・・多分、コイツの部下が隠し撮りしたんだろうと思った

なら、一刻も早くあの写真を消させなきゃ






「消して!」
「どうしてですか?」
「いいから消しなさいよ、変態!!」
「おやおや。・・・消すも何も、・・・貴女は契約違反をしたんですよ」
「えっ?」





契約・・・違反って・・・


骸の言ってることが分からなかった
いつ、私とコイツが契約を結んだんだろうか?
そもそも、一体どんな契約を・・・・・・








「しかし・・・この写真、の学校側に公表すればどうなるでしょうね?」
「!?」






一瞬にして、私は血の気が引いた
私は手を拘束されているにも関わらず、叫ぶ





「やめて!そんなことしたら・・・っ!!」
「そんなことしたら・・・どうなるんですか?」
「・・・そ、それは・・・」







私はおろか、家の皆にも迷惑をかけてしまう

ましてや、恭弥にまで・・・。


私は最悪、学校を退学せざる得なくなるし・・・恭弥だって今まで築き上げてきたものが崩れていってしまう









「消して欲しいですか?」

「え」

「この画像・・・消して欲しいですかと、聞いてるんですよ。」









すると、骸が突然そんな事言ってきた。
もう藁にも縋る思い・・・私は言う。







「消して!お願い・・・消して・・・じゃなきゃ・・・」

「じゃなきゃ?」

「・・・恭弥が・・・」






私は顔を下に俯かせた。

私自身はどうなってもいい・・・ただ、恭弥だけは・・・恭弥だけは何としてでも守りたい。

あんなに慕ってくれる人たちがいる、友達もいる。











「お願い、だから!」
「黙りなさい、
「っ!!」





すると、いつの間にか骸が目の前に立っていた







「素直に消して欲しいといえば、そうするつもりでしたが・・・そうですか、理由は雲雀クンですか」

「ぇ」





一気にその場の空気が・・・冷たくなる。

骸は跪き、私の目線にあわせ、顎を掴んだ。







「貴女は契約違反をしたんですよ・・・分かってるんですか?」

「・・・な、何の契約を・・・っ」

「”僕しか欲しがらない体になってもらう“・・・そう言ったはずです」

「・・・なっ」

「いいでしょう・・・まずは契約違反をした貴女に罰を与えなくては」

「えっ?」









突然、骸の口端が・・・糸で吊られているかのように上がる



こ、怖い・・・っ



心臓が、すごいスピードで脈を打っている。



逃げて・・・逃げてと・・・赤信号を送っている


でも、あまりの恐怖と・・・手を拘束されて逃げられない。













「今日は本当に手加減無しですからね・・・僕を本気で怒らせたらどうなるか・・・思い知りなさい」











そして、また・・・悪夢の時間がやってきた。



あぁ、私はもう・・・彼から逃げることも、隠れることも・・・出来ない。








糸は絡みを増し、を縛り付ける
(契約を破った自分自身の皮肉さを怨みなさい。そして、二度と僕の前で彼の名前なんか呼ばせはしない)




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