アレはいつだったか?
もう随分前のことだ・・・まだ、僕が・・・日本に来たばかりで
黒曜中の生徒として生活していた・・・そんな日だった。
生徒会長の日辻真人から、学校内を案内されている時だった。
「こっちが・・・本校舎で・・・あそこが、部室棟・・・それで、あっちが・・・体育館」
「わざわざありがとうございます。」
「いいえ、生徒会長との務めだからね・・・イタリアからの帰国子女って聞くからどんな子かなぁと思ってたんだ」
「女生徒じゃなくて残念ですか?」
「別にそんな意味で言ったわけじゃないからね。」
他愛もない話しをしながら、彼は僕を案内していく。
後々この人を、生け贄として祭り上げて僕の人形として働いてもらおうと思っていた。
「そういえば、」
「ん?どうしたんだい、六道君」
「やたらと、他校の生徒が多いようですが・・・特に女子生徒が。」
バタバタ明るくと、走っていく・・・黒曜中とは違う・・・女子制服
しかも、体育館の方向に走って行っていた。
「あぁ、今日ね・・・うちの女子剣道部と此処からちょっと離れた
私立女子中の剣道部との壮行試合があってるんだ・・・あ、剣道って分かる?」
「えぇ、知識程度ですが。」
「よかった。・・・あ、それでうちの生徒じゃなくて、大体その女子中の生徒達が多いんだけどね。」
そう言いながら、日辻が喋っている間も
また、女子中学校の制服の生徒が通っていった。
女子同士の試合なのに、何故こんなにも人が集うんだ?
僕はそう思っていた。
「目的は?」
「ん?」
「彼女達の目的ですよ・・・男子がいるわけでもないのに、何故集まってるんですか?」
「あぁ。その女子中の・・・エースだよ・・・彼女達の目的は」
「エース・・・?」
すると、体育館から何やら黄色い声がこちらに向かってくる。
目の前に現れた・・・剣道着を来た女子生徒に、他の生徒が集団を作っていた。
そして、僕と日辻の存在に・・・剣道着を来た女子生徒は気付き、コチラにやってきた。
「日辻会長・・・壮行試合、お誘いくださってありがとうございます」
「いやぁ〜僕よりも剣道部の顧問の先生が、そちらのほうに頼んだみたいで。」
「ですが、さすが黒曜・・・腕の立つ女性ばかりで・・・私も、本気を出さなきゃ勝てないですよ」
「またまた・・・さんにはウチの体育部全部でも敵わないのに」
「ご冗談を。」
目の前の女子生徒は柔らかく笑みを零す
何故だろうか・・・さっきから、視線が外せない・・・のは。
「さん、ちょっといい?」
「はい。・・・すいません、呼ばれているので・・・失礼します」
「うん・・・午後も頑張ってね」
「はい、では」
そう言って、彼女は僕に気付いたのか日辻と僕に目を合わせ会釈をして
その場を去っていった。もちろん、取り巻きの・・・集団も行く。
『お姉様、やはりお強いです!』
『それほどじゃないって』
『だって、お兄様は一度たりとも勝ててないとお伺いしてるので』
『千夏ちゃん・・・アレと此処の生徒比べたらいけないよ、アレは別格だからね。』
『そうなのですか!?』
僕と日辻は集団が去るまで其処を動かずにいた。
そして、集団が去った後は、嵐の後の静けさのように静まり返っていた。
「いやぁ〜ホント、彼女には敵わないよ」
「誰なんですか?彼女?」
「 さんって言ってね・・・さっき話した女子中のエースだよ」
「彼女、が。」
まるで、蓮の花のように・・・清らかな心を持っていて
誰にも穢されず、屈服もしない・・・そんな態度。
僕には、彼女がそう見えていた。
「才色兼備ってまさに彼女のことだよ。体育系も勉学も、彼女は本当に秀でてる・・・しかも良い所の
お嬢様っていうウワサも耳にしたことあるし・・・」
「そう、なんですね。」
「あ、でもね・・・あんまり彼女に近づかないほうがいいよ」
「え?」
日辻の言葉に、僕は驚いた。
「彼女に近づいた人、全部・・・始末されるからさ・・・特に男には容赦ない」
「それは、彼女自身がでしょうか?」
「違う違う・・・彼女の背後にいる人・・・隣町の並盛史上最強と呼ばれる男の・・・幼馴染なんださん。」
「最強・・・ですか」
まさか、それは僕の探しているボンゴレ10代目・・・か?
そう思っていた・・・が。
「雲雀恭弥っていう・・・並盛を誰よりも愛し、並盛の風紀を正す・・・最強の風紀委員長。
彼が気に入らなかったものは全員咬み殺される・・・つまり制裁を加えられるんだよ。」
「これは、また・・・並盛には物騒な方がいるんですね。」
「まぁ、彼のお陰で並盛は治安が良いんだ。・・・でも、どうして彼女が女子中にいるのか分からないけど
とりあえず、雲雀恭弥とはさん幼馴染で、さんに近づく男全て・・・雲雀恭弥が
制裁を加えてるって言う、ウワサがあるんだ」
「怖いですね・・・僕も目を付けられないようにしますよ」
「あの男、敵に回したら怖いからね。でも、雲雀恭弥は妹みたいに思っての行動か・・・それとも」
さん
好 き な の か な 彼 女 の こ と ?
だから、興味が湧いた。
日辻の話を聞いて、僕はあのとか言う女の子を捜しに
並盛の・・・さらに隣・・・彼女の通う私立女子中にやってきた。
見つからないように、近隣の屋根の上から・・・彼女が校門から出てくるのを待っていた。
『お姉様!』
『あぁ、千夏ちゃん』
『今からお帰りに?』
『まぁね・・・今日は父さんと母さんが帰ってくるから早く帰ってあげなくちゃ』
『まぁ!そうなのですね!!だからお姉様そんなに嬉しそうなんですね。』
『うん!』
嬉しく微笑む笑顔が、愛しかった
と、同時に・・・ちょっとした遊び心が湧いた。
だが、まだ手を出す段階じゃないと思っていた。・・・だから、敢えて手を出さず
見守るだけを貫いた。
だけど、その雲雀恭弥という男が少し恨めしく思った。
幼馴染にあり、何より彼女のあぁいった顔を独り占めできるのだから
どんな男か、逢ってみたいものだ・・・そう思っていた。
それから、僕はボンゴレ10代目をあぶりだすために
並盛の強い男達を徹底的に潰し始めた。
そして、いち早く僕の元にやってきたのは・・・
雲雀恭弥・・・彼だった。
彼女の全てを知る男が・・・僕のところにやってきた。
恨めしくて、憎たらしくて、ムカついた。
だから、ボンゴレの事を聞きだすことを表に出し・・・顔の裏では
どうして、君みたいな男が・・・という醜い想いから・・・彼を痛めつけた。
何度も、何度も・・・傷つけた。
それから、しばらく時が経った
彼女はどうしてるだろう・・・と思って、彼女の中学に行く途中だった
並盛の校門近く・・・人影が二つ・・・
一つは、あの雲雀恭弥・・・そして、もう一つの影を見て僕は足を止めた。
彼女だった。
『きょ・・・恭弥!ダメだって!!いくらお前の回復力が人並み外れてるからって』
『・・・それ貶してるの?・・・僕の学校だよ、いいでしょ僕の好きにしたって』
『だからって、そんな体で動くバカが何処にいるのよ!』
『此処にいるじゃない』
『揚げ足を取るな!!!』
どうやら、まだ完治していない体で
彼はどうやら学校に来たらしい、だが、それを心配して彼女は並盛までわざわざ足を運んだ・・・そう見えた。
『ダメって・・・言ったでしょ・・・何で、なん、で・・・っ』
『仕方ないでしょ?僕の学校の生徒が立て続けに襲われて、風紀委員長として黙って見過ごすわけ』
『だからってそんなにまでなってする必要ないって・・・私は、言ってるの!!』
『・・・』
遠くではあったが、さんが涙を流しているように見えた。
よっぽど心配なのか、・・・それは幼馴染だから?
それとも・・・・・・・?
『お願い・・・病院戻って』
『やだ』
『恭弥・・・お願いだから・・・っ』
『・・・・・こんな時に泣かないでくれる・・・僕昔から言ってるだろ。に泣かれると、どうすればいいのか分からないって・・・。』
『ち、違っ・・・・・泣いて、泣いてない・・・っ』
『あー・・・もう・・・さ、それって計算?』
『は?』
『無自覚か・・・尚悪いよ。・・・泣かないで・・・僕は大丈夫だから』
そう言って、彼は痛みを堪えながら泣いている彼女を抱きしめた。
コレは、幼馴染以上・・・の関係だ。
2人は、愛し合ってる・・・そう、僕の瞳に映った
だけど、彼女の流す涙があれほど美しいなんて・・・思いもしなかった。
心配する姿や、初めて出逢った時のあの凛とした表情、そして・・・泣いてる顔ですら
それが、僕の初めての・・・を見たときの、記憶だった。
「・・・・・」
目を覚ましたら、暗い天井が瞳に映った。
ソファーベッドに預けていた体を僕は起こした。
「・・・?」
すると、人の気配・・・の気配がなくなっていた。
・・・逃げたか。
あの後、手枷を外し、何度も犯した。
そのたび、は僕の名前を呼び続けた・・・それだけで僕は理性が抑えきれず
何度も・・・何度も、狂ったように・・・彼女を犯し続けた。
「まぁ、いいでしょう。・・・クフフフ」
そう言って、僕はまた体を沈めた。
だって、貴女はもう二度と僕から逃げること出来ないのですから。
「骸様」
「千種、ですか?」
「はい」
すると、部屋に千種がやってきた。
僕は再び体を起こし、彼を見た。
「あの女は?」
「また、逃げられました」
「じゃあ、またあの写真で・・・」
「あぁ、写真なら消しても構いませんよ。」
「え?・・・で、ですが・・・っ」
携帯で映した、雲雀クンとの情事中の写真
できることなら今すぐに消して欲しい。
が雲雀クンの腕の中にいることすら、僕は許さないからだ
残っているだけで、腹立たしくてならない。
「クフフフ・・・心配無用です。まだ策はあるので」
「今度は何を?」
「秘密です・・・クフフフ」
逃がさない絶対に・・・僕の手で、穢して
君が僕色に染まるまで・・・僕は君を決して逃がさないから
「・・・ただいま・・・」
ようやく、帰り着いた。
もう、体が・・・思うように動いてくれない。
だけど、いつまでもあの場所には居たくなくて、骸の隣にも居たくなくて
私は・・・何とかけだるい体を精神力だけで引っ張り上げ、家まで帰りついた。
「あれ、お嬢様?・・・今日は帰れないんじゃ・・・」
「帰ってきた・・・あんまり、長居すると・・・迷惑、だし・・・」
「そうですか・・・どうなさったんです?なんだか元気ないようですが」
「うん・・・ちょっと、疲れてるだけかも・・・」
よかった、今日は恭弥の奴・・・来てないみたい。
私はそう思っただけで安心した。
「聖、おフロ沸いてる?」
「はい。丁度いい湯加減ですよ・・・お入りになりますか?」
「うん。・・・ご飯、その後で食べる。」
「では、お先にどうぞ。・・・夕食の準備もすぐにいたします」
そして、私は家に上がり
制服のまま、風呂場まで足をゆっくり進めて行く
脱衣所の扉を閉めて、誰も入ってこないようにする
私は制服のブレザーを脱ぎ・・・ふと、洗面所の鏡を見る
体の至る所に・・・赤い斑点・・・
コレは、恭弥のじゃない・・・骸が・・・付けた・・・キスマーク
そして、首筋に・・・くっきりと残る・・・噛み跡
『・・・・・・』
「い、ぃや・・・っ」
思わず先ほどの事を思い出して、それがおぞましくなり
私は首筋についた噛み跡を引っかいた・・・何度も、何度も・・・
消えて・・・消えて・・・と願いながら・・・
せっかく恭弥が付けてくれた・・・噛み跡・・・恭弥が自分のモノだけと
そう言って、付けてくれた・・・噛み跡・・・なのに・・・っ
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
瞳から涙が零れ、手には、爪には・・・赤い紅い血
首筋から、零れる朱色の線
「やだ・・・や、だっ・・・恭弥・・・きょ、や・・・っ」
そう言って、私は座り込んで泣いた。
せっかく愛しい人が付けてくれた跡の上
彼を憎む人物から上書きされるように、付けられた噛み跡。
消したくない証を・・・どうして、こんなにまでしなきゃいけないの
血塗れドール〜Lo ritorni〜
(返して・・・私の愛した人のつけた証を・・・返して、返して・・・)