「いくよ、クローム!」
「うん、いいよ」
に幻術を教えて、数日と経った。
その数日のうち、ほとんどが僕のアナグラムであるクローム髑髏との
練習に当てていた。だが、クロームとの練習が終わった後
はこっそりと一人で練習をしていたりもしている。
まだそんなに日数が経っていないのだが、ボックスとの融合幻術を
は自分なりにレベルを上げて行っている。
「・・・クローム動きが遅いよ!!」
「は、はい!」
大抵、幻術に入る前はがクローム相手に軽いスパーリングを行う
トンファと三叉槍の鉄製の部分が掛け合う音が練習場の全体に響き渡る。
あまり戦闘経験が薄いクロームにとって、はいい相手だし
そして戦闘能力が高く幻術を覚えたばかりのには、クロームは丁度良い相手
それに、僕がいきなりの相手をしたらそれこそ、すぐさまの幻術を破ってしまい
彼女のそのあとの怒りを買うことは目に見えている。
「脇腹に力入れて、防御ばっかりじゃやられるわよ、クローム」
「で、でもっ・・・が・・・」
「バカね。本物の戦闘になったら敵味方も関係ないわよ・・・いいのよ本気で来て」
「クローム・・・手加減をしていると、幻術を使う前にやられてしまいますよ。」
「骸様・・・はいっ!」
僕の言葉を聞き入れると、今度はクロームが攻撃を仕掛けていく
はそれを・・・まるで、舞を舞うかのようにかわしたり、受け止めたりとしていく。
「そろそろ、幻術と行きますかね・・・」
そう言うとはクロームの攻撃を跳ね返し、距離を開ける
すると、彼女の指に嵌っていたリングが白炎の死ぬ気の炎を帯び
その炎がトンファへと流れ込んでいく。
---------ガシャン!!
銃弾を込める音がした。
だが、実際放たれる砲撃には銃弾は出てこない。
属性次第で銃弾は精製されていく、だが霧や雲属性の銃弾は実際出てこない
放出されて始めてそれは威力を成すからだ
『霧砲撃(ミスト・ショット)』
トンファの銃口から、霧状のものが大量に放出され、辺りは一気に
白い煙に包まれた。
だが、まだ広範囲というわけではない・・・も手加減をして、広い範囲に
霧を撒き散らしていない。
霧の球状のドームが完成され、僕はそれを外でじっと見据えていた。
もちろん、中で何が行われているのか分からない。
『骸様』
「クロームどうしました?」
すると、中のクロームから僕に意思の信号がやってきた
今まで練習中、こういった信号はなかったのだが
今日が初めてで僕は少し驚いた。
『様子が・・・今までと違います』
「ほぉ。・・・つまりがまたレベルを上げたということですかね」
僕は今まで傍観の立場で2人を見ていたのだが
今までと確かに、なんだか違うことに僕はようやく、という腰をあげて
霧のドームの中、クロームの意思を頼りに入っていく。
「クローム」
「骸様」
「変わりましょう・・・さぁ、三叉槍を。」
クロームを見つけて、僕は彼女から三叉槍を受け取った。
『あっ、せこ!!!』
「、ゴメンなさい」
「いいじゃないですか、愛しの僕が相手で嬉しいでしょう」
『うざっ。できることならクロームのほうがよかったんだけど・・・まぁいいや、骸でも』
「言い方が酷いですよ。」
『ちょっとばっかしクロームにはコレはキツイかもね・・・なら骸のほうでもいいや』
の口調からして、どうやらクローム相手だと力が思うように出せないのだろう
なら、僕が相手にしたほうが良い。
「しかし、よく此処までの霧のドームを完成させましたね・・・コレがの作る幻術ですか?」
『まぁそんなとこ。・・・アンタや、クロームの地獄道みたいに所構わず出来るヤツってワケじゃないからね』
「クフフフ・・・確かにそうですよね。じゃあ、貴女の力見せていただきましょうか」
『教え子の力・・・とくと御覧あれ!』
瞬間、目の前に数人とが現れた。
本物か、それとも・・・
「幻か」
「どっちだと思う?」
「両方というのもありですね」
「試してみたら?」
「そのつもりですよ」
そう言って、僕は数人のに襲い掛かった
三叉槍を振りかざし、攻撃を仕掛けたが
「コレは幻覚か」
「ホーラ、ホラ・・・骸こっちコッチ」
「骸様っ!!」
「おやおや。がたくさん出てきて困りましたね」
振りかざし、目の前の幻覚が消えて
振り返ると、またしても、幻覚のが現れた
本物がどれか見分けが付かない。
だが、此処で僕が地獄道を使ってしまえば確実に彼女の幻術の世界を
僕の幻術の世界で飲み込んで支配してしまう。
初心者であり、大切な人であるを傷つけるわけにはいかない
「お手上げ?」
「皆同じように見えますよ・・・どれが僕の大好きなか分かりません」
「そりゃね、あんたの知らない所で私も色々考えたから」
「この際ですし・・・全部吟味をするというのもいいかもしれませんね、クフフフフ」
「骸様、下品です」
「とりあえず、そのパイナップル頭ふっ飛ばしていいか?」
「冗談ですよ・・・とにかく、1対1対相手にするのは面倒なので、蹴散らさせていただきますよ」
僕は三叉層を振り回し
六道の目を四の道・・・格闘スキルの修羅道に変換させ
数人と現れているを蹴散らしていく。
確実に一人は僕のこの修羅道を受け止められる本物のがいるからだ。
--------ガキンッ!!!
「見つけましたよ、」
「結構早かったわね骸」
そして、ようやく僕の三叉槍を受け止めた本物のを見つけた。
「それはもちろん、愛の力があれば簡単にが見つけられますからね」
「とりあえず、お前一回死んで来い」
すると、三叉槍を受け止めた間に、僕の顔面を向いている
のガンズ・トンファの銃口・・・銃弾を込める音がした。
「顔はやめてくださいね」
「知るか」
「誰もが羨む顔をしてるんですから・・・傷なんか付いたら、僕のファンの方々がガッカリしてしまいます」
「よーし、歯を食いしばれー容赦なくその綺麗なお顔に傷をつけて差し上げましょう!!」
銃口から閃光のような光が出ようとしていた
コレの銃弾は・・・・・・
『雷砲撃(ボルト・ショット)』
「骸様っ!!!危ない!!!」
----------ドォォン!!
「・・・っ」
「チッ、掠ったかわね」
「間一髪ではありますが」
そう言って雷の砲弾が僕の顔をめがけ放たれたが
何とか顔を掠めた・・・頬には僅かな傷が付いたが・・・・・そんなに痛みがない
むしろかすり傷というものではない
痛みがない、いやそれよりもコレは本物以上の力ではない
まさか、此処まで力をあげていたとは・・・
「クフフフ・・・これも、幻覚ですね・・・」
「なっ!?」
「えっ、幻覚・・・でも、骸様・・・骸様の修羅道をは受け止めました」
「幻覚の中に隠れた有幻覚・・・貴女は僕の言葉を上手く利用したんですね・・・」
つまり、この目の前のもニセモノ
僕の最初の説明で、は見事にドーム内にニセモノの中に本物を見せた偽者を作り出した
だが、それは最初の説明の注意でも言ったいった様に
”本物以上の力は持ち備えていない“ということ
「つまり、これも幻覚の一部でしかないということですね!!!」
「チッ!・・・気付くの早いってーの」
そう言って僕は目の前の幻覚もすぐさま蹴散らし、振り返る
だが、其処には・・・の幻覚が、しかも増えていた。
「地獄道を使って主権を握ってもいいですか、?」
「やったらお前ぶっ殺す」
「クハハハ・・・この幻術の中では貴女は僕には勝てませんよ。教えたとおり、有幻覚は
本物の力以上のものは持ち備えてません・・・此処にいるのは僕の知ってるじゃないということ。
つまり、ある意味の・・・カスと同じです」
「ひっでぇの。・・・せっかく人様が寝ながら考えたものをこうも簡単に見抜かれるとは。」
「寝ずに考えるのが普通ですよ・・・まぁ寝ながら考え付くとはらしい発想ですね。・・・・・・ですが」
僕は三叉槍を再び振り回し、修羅道での幻術を振り払いながら
ドームの外へと向かう・・・すると、何やら人影を見つけた
其処から光り輝くのは・・・白炎の・・・・・・
「本物が外というのは、驚きですがね」
「っ?!・・・骸」
そう言って三叉槍の先をに向ける
は尻餅をつき、リングの炎が弱まり、霧のドームも幻覚も消えていく。
「チェックメイトですよ・・・・・・」
「お前、最悪・・・すぐ見抜くんだもん。クロームも卑怯だよ〜」
「ごめんなさい、。でも、あのまま戦ってたら・・・私、絶対地獄道使っちゃうし」
「ま、いいか。・・・っ、や・・・やばっ・・・」
「?」
すると、突然が体をフラフラと揺らし始めた。
「力・・・使いすぎた・・・かも・・・」
「!!」
「、しっかりして!!」
そう言って僕の胸に寄りかかり、彼女はそのまま気を失ったのだった。
「・・・・・・っ、う・・・」
「!!・・・骸様、が目を覚ましました」
「、大丈夫ですか?」
「クローム・・・骸・・・あれ、此処・・・医務、室?」
あの後、を僕は抱きかかえ医務室へと連れて行った
医師に見てもらったところ、ただの過労ということだった。
「そうですよ、いきなり倒れるから驚きました」
「骸様がすぐに医務室に運んでくださったから。・・・よかったぁ、が無事で」
「あ〜もう、クロームすぐに泣く・・・ホラ泣かないの、私は大丈夫だから」
泣いているクロームをは優しく頬を撫でる
クロームはを姉のように慕っているからこそ、練習にも
彼女を傷つけまいという行いするのだ。
「医師は過労と言っていました。部下達の指導に、幻術の練習と立て続けにしたから
体に異常を来たしたんでしょう・・・無理はしないで下さい」
「悪いな、骸・・・でも、私のあの幻術悪くなかったでしょ?エヘヘヘヘ」
ベッドに転びながら、笑みを浮かべる。
僕は一つため息を零し
「・・・・・・クローム、ちょっと席を外してくれませんか?」
「え?・・・あ、はい」
クロームに席を外すよう促すと、すぐさまクロームはの側から立ち上がり
医務室から出て行った。
そして、その場には僕との2人が残った。
「」
「何?」
「あの幻術はあまり使わないで下さい・・・」
「・・・・・やっぱり、バレた?」
「僕を誰だと思ってるんですか?何十年と幻術士やってるんですから、それくらいの事わかります」
あの幻術とは、幻覚の中に強力な有幻覚を忍ばせ、自らは外で
意思のコントロールをしていたという。
今までは、確かにあの霧のドームを使って、クロームと中で幻術のやりあいを繰り返していたが
今回の戦法については、僕は異議を唱えた。
「体に相当な負担をかけてるみたいじゃないですか、あの術は」
「うん。まぁアレは実戦向きじゃないし・・・でも、部下達の練習としては使えるかなぁ〜って」
「実戦だろうが、練習だろうが僕は使用を反対します。貴女の体に負担がかかるようなそんな術は
僕はやめて欲しいんですよ。」
「分かってるけど、それじゃ幻術を教えてもらった意味ないよ」
そう言っては寝かせていた体を起こし、僕に反論をしてきた
僕はため息を零し、を見る。
「・・・僕の、霧の守護者の使命を知っていますか?」
「知ってるよ。”無いものを在るとし、在るものを無いとすることで
敵を惑わしファミリーの実体をつかませないまやかしの幻影“でしょ?」
「そうです。・・・幻術は相手を惑わすのが基本原則なんです・・・まぁ、僕やヴァリアーの幻術士は
それで戦闘をしているのですがね・・・でも基本は幻を見せるのが当たり前なことなんです」
「骸」
「貴女は術士ではないと以前も僕は言いました。お説教になるかもしれませんが・・・人の言うことは聞いておいて損はしないと思います」
「・・・・・・で、でもっ・・・ぁ」
「・・・よく、聞いてください」
僕はそっとの体を優しく抱きしめた。
「もう貴女には傷ついたり、苦しんだりしてほしくないんです。貴女が強いことは誰もが知っています・・・だけど
その代わり、それが原因で命を狙われる危険だって多いはず。幻術で相手を惑わして逃げるならまだしも
僕のように幻術を戦闘のように応用してはいけません。貴女は充分に強いんですから」
「骸・・・」
「もうあの術は使ってはいけませんからね。アレを使った後動けないとなると元も子もないですから」
「・・・だね。私も今日ので身にしみた・・・コイツは実戦向きじゃないね・・・封印するよ」
「そうしてください。何回も倒れられては僕の身が持ちませんから」
「あーあ、何で私はこうもお前に何回と心配されなきゃならんのかね。・・・子供じゃあるまいし」
「愛してますから、のこと・・・だから心配するんですよ。」
僕がサラッと言うと、は頬を赤く染めて顔を背けた
「お前さ・・・そういうのサラッと言うのやめたら。・・・殴る気失せる」
「いいじゃないですか、事実なんですから。」
「もういいや、疲れたし寝る」
「添い寝してあげましょうか?」
「ぶっ殺すぞ」
そう言っても、僕にとっては貴女は大切な人だから
お願いです、どうか・・・無理だけはしないで下さい。
L/e/s/s/o/nU〜幻術対決しまSHOW!〜
(その後、僕はやっぱり彼女に幻術を教えたことを後悔したのだった)